【R-18】ザマァされた悪役令嬢ですが、腹癒せにドラゴン(ラスボス)退治に行ってきます!

一花カナウ

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腹癒せにドラゴン退治に行ってきます!

捨てる王太子あれば、拾うゴリマッチョあり……? 3

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 突如湧き上がった疑問と向き合っている間に、マッチョさんに尋ねられた。

「――王太子妃の候補に名が挙がるほどの女性が、なんでまた一人でこんな岩山に? 道に迷ってうっかりドラゴンに遭遇した……って感じじゃなかったが」
「それには色々と事情があるのよ」

 ここは適当に言葉を濁しておこう。命が助かってしまったことも含めて、ちょっと情けない話だからだ。最強の魔女としては、輝かしい伝説だけを残しておきたい――経歴を振り返るとかなり悪い魔導師のような気がするけど、ツッコミは厳禁だ。私さえよければ、その点はヨシとしよう。

「事情、ね。――てっきり、今時流行らない生贄を捧げにでも来たのかと思って顔を出したら、『あんたには恨みはないけど倒されてちょうだい!』とかいきなり宣言して、山ごと吹き飛ばし兼ねない火炎球をぶっ放してくるんだもんな。さすがに手加減はできなかったわ……」

 その光景が記憶から蘇ったのか、マッチョさんは頭を抱えた。

 あれ? その台詞。まさか……

「――って、あなた、最初から見てたの⁉︎」

 私が指摘すると、マッチョさんは私の顔を見て微苦笑を浮かべた。

「そりゃあ、まあ。すげーお転婆が来たもんだな、とは思ったなあ。で、とりあえず、先制攻撃は防いで、動きを封じようと慌てて氷柱ぶん投げたところまでは見ていたから――始めから終わりまでか?」
「忘れて。忘れよう。忘れましょう」

 状況によっては、この親切かつお節介なマッチョさんを倒さないといけないかもしれない。ここを出るときは綺麗に記憶を消していこうと、私は密かに心に誓う。

「――さてと。助けてくれてありがとう。もう私は動けるし、行くわね。申し訳ないけど、このシャツ貰っていくから。気が向いたら返すわ」

 死にぞこなったことについては色々と思うところはあるが、せっかく取り留めた命だ。このまま山を越えて隣国に転がり込み、魔導師としてか、せいぜい普通の町娘として堅実に生きていこうと思う。国に捨てられたのだから、出て行けばいいだけの話である。

 今の私には、腹癒せにドラゴン退治は無理だった、と。

 ああ、いい勉強になったと納得しつつ、ベッドをそろりとおりると、目の前にマッチョさんがやってきた。
 あの巨躯を俊敏に動かせるのは魔法なのだろうか。急に目の前に来るからビビったぞ。

「どこに行くつもりだ?」

 立って並ぶとやっぱりデカイ。頭のずっと上から声が降ってくるような感じだ。
 私は顔を上げる。

「どこにって、国を出るつもりだけど? この山は国境でもあるし、いい機会だもの」

 長いシャツを適当に捲ったり、縛ったりしながら答える。
 マッチョさんは私を心配しているような顔を作った。怖いと感じていた目つきが柔らかくなる。

「国を出てどうする?」
「誰かに恵んでもらって、再出発するわ。魔法と技術はあるから、どうにかなると思うけど」
「王都に戻る気がないなら、俺の伴侶にならないか? つーか、なれ。なってくれ。もう貴女しかいないんだ」

 私はマッチョさんに肩をガシッと掴まれる。デカくてゴツいその手で目いっぱい掴まれたら骨が砕けそうだ――と一瞬イメージしてしまい身構えたが、痛みはまったくなかった。

 待て。手の動きに集中しすぎてスルーしそうになったが、あれ、ひょっとして私、求婚されました?
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