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腹癒せにドラゴン退治に行ってきます!

伴侶になれとは? 1

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「えっと……王都に戻る気はまったくないけど、あなた、今、なんて?」

 私は無難な感じで聞き返すことにする。だって、求婚が聞き間違いだったら恥ずかしすぎるではないか。
 もしなにか別の単語の聞き間違いだったとしたら。
 私自身、そこまで王太子さまとの結婚に未練がないと思っていたが、それが思い込みだったと露呈することになってしまい兼ねないので、なおショックである。
 目を驚きでパチクリさせて、私はマッチョさんの顔をしっかりと見る。口元に視線を集中させ、聞き間違いではないことを読唇術でも明らかにするつもりだ。

 さあ、どう答える?

「貴女しかいないから伴侶になれ、と少々強気に言ってみた。王太子妃候補でありながらこんな場所で国からの脱出をはかろうなどと企てているのだから、まだ未婚なのだろう? それとも、意に沿わない結婚を認めたくなくて逃げているのか?」

 少々強気に言ってみた……と。正直ね。聞き間違いではないようだ。

 私は小さく咳払いをする。ついでにマッチョさんの手も払いたかったが、そこはうまくいかなかった。痛みはないものの、ガッチリホールドされている。力の加え方にコツでもあるのだろうか。

「あなた、質問が多い。――ただ、私が未婚であることは認めるわ。それに、意に沿わないのは結婚ではなくて処遇よ。でも、だからといって、出会ったばかりのあなたと結婚する気にはなれないわ」

 キッと睨みつけて私は言い切る。
 そりゃそうだろう。マッチョさんは命を助けてくれた恩人と言えなくはないが、結婚する理由にはならない。だいたい、助けてくれと求めたつもりもない。私をここに運んで治療したことは、お節介である。彼の自己満足に過ぎない。

 治療名目で身体も触られたし……

 昨夜のことを思い出し、私は身体をぶるっと震わせる。忘れよう。あれは事故。医療行為中の事故よ。

 まあ、魔力の相性については文句なしではあるけど。もうすごく馴染んじゃってるし。
 王都にいた時、ここまで心地よい魔力を持つ人間には合わなかった。手を握ることで簡易判定できるのだが、一番相性が良かったのだと思われる王太子さまよりもマッチョさんの方が触れていて気持ちがいい。マッチョさんの魔力がたくさん身体に入り込むと、そのせいで恍惚としてしまうのだけど。

「そうか。なら、強引に引き留める」
「やっ⁉︎」

 マッチョさんは私が仮の名前として選んだ程度にはマッチョである。
 引き留めると宣言するや否や、私はベッドに押し倒された。
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