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第1章 メイズ
旅立ち
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事件の終結から数日後。ヘイゼルは神殿の入り口に立っていた。
空は快晴。気温も程々で、旅立ちには相応しい。荷物をまとめた袋を背負い、ここにやってきたときと同じ正装――モルゲンロートの紋章が入ったマント、魔力増幅用の媒体である耳飾、召喚士を示す帽子、手袋、特殊な古代文字によって細かに刺繍された前掛けを身につけた姿で、出発の時を待っていた。懐は、投獄されていたことに対しての慰謝料が入っていて温かだ。当面の旅費にはなるだろう。
「行ってしまうのですね」
同じく、装飾の多い法衣に身を包んだシエルが、神殿の前に二人の警備兵を連れて立っている。
「寂しくなります」
僅かに悲しみを含んだ表情。涙が零れてもおかしくはない顔をしている。
「こちらこそ。様々なことに工面していただき、ありがとうございました。大変お世話になりました」
「あなた無しでは、乗り切ることのできない危機でした。こちらこそ、協力ありがとうございました」
(まぁ、どちらかというと強制的に巻き込まれたんだがな、こっちは)
そんなふうにヘイゼルは思ったが、この理不尽な思いを終ぞ彼女に伝えることはなかった。
「では、失礼します。これからが大変でしょうが、身体にはくれぐれもお気を付けください」
「はい。ヘイゼル様も、お気を付けて。これからの旅に幸多からんことを」
やんわりと笑んで、シエルは見送る。ヘイゼルも向きを変え、街へと延びる階段を下り始める。
決して振り向くまいと誓っていた。かつて少女がそうしたように。ただ前を、自分に与えられた道を見据えるように。迷いなく、真っ直ぐと。その先に何があろうとも。
空は快晴。気温も程々で、旅立ちには相応しい。荷物をまとめた袋を背負い、ここにやってきたときと同じ正装――モルゲンロートの紋章が入ったマント、魔力増幅用の媒体である耳飾、召喚士を示す帽子、手袋、特殊な古代文字によって細かに刺繍された前掛けを身につけた姿で、出発の時を待っていた。懐は、投獄されていたことに対しての慰謝料が入っていて温かだ。当面の旅費にはなるだろう。
「行ってしまうのですね」
同じく、装飾の多い法衣に身を包んだシエルが、神殿の前に二人の警備兵を連れて立っている。
「寂しくなります」
僅かに悲しみを含んだ表情。涙が零れてもおかしくはない顔をしている。
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(まぁ、どちらかというと強制的に巻き込まれたんだがな、こっちは)
そんなふうにヘイゼルは思ったが、この理不尽な思いを終ぞ彼女に伝えることはなかった。
「では、失礼します。これからが大変でしょうが、身体にはくれぐれもお気を付けください」
「はい。ヘイゼル様も、お気を付けて。これからの旅に幸多からんことを」
やんわりと笑んで、シエルは見送る。ヘイゼルも向きを変え、街へと延びる階段を下り始める。
決して振り向くまいと誓っていた。かつて少女がそうしたように。ただ前を、自分に与えられた道を見据えるように。迷いなく、真っ直ぐと。その先に何があろうとも。
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