【R18】飛んで火に入る夏のヒナ

一花カナウ

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飛んで火に入る夏のヒナ

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 第一部の出し物が全て終わって、第二部の立食パーティが始まった。第二部は私の担当ではないので、ゆっくり食事に専念できる。お酒も振る舞われて、私は付き合いで飲みながら会場を回る。
 カードキー、なかったのかな。
 第一部が終わったら届けてくれる話になっていたのに、渋谷は現れなかった。
 ま、品川さんと一緒だったし、会場を歩いていたら自由はないか。
 渋谷は見た目でやたらとモテるし、品川さんは仕事ができる男としてモテる。二人揃って上司ウケもいいから、第二部が始まったら好きなようには動けないだろう。接待したりされたりで忙しいはずだ。
 ま、それがわかっていたから第二部で渡すって言わなかったんだろうな。
 渋谷の判断は正しい。軟派な男だが、仕事はきっちりとしている。状況把握に長けていて、頭の回転がはやい。そういうところを尊敬していて好いていたわけだが、度重なる浮気が原因で別れることにした。本命は私だって言っていたけど、信用できなかったのだ。

「緋夏ぁ」

 人集りができていたあたりから同期の神田(かんだ)明希(あき)が声をかけてきた。
 明希は同期の中でも一番の仲良しであり、休日も一緒に出掛けるし、ライブの遠征に付き合ってくれたりと公私共に世話になっている友人だ。渋谷と別れたときに一緒に飲んでくれたこともあって、現在の私の事情をよく知っていると思う。今夜の宿泊で同室なのも彼女だ。

「明希、どうかした?」
「カードキー、預かってきたよ」

 そう言って、明希は自分のポシェットからカードキーを取り出した。

「落としちゃったんだって? 渋谷くんが、拾ったから緋夏に渡すようにって」
「ありがと」

 やっぱり直接渡しには来られなかったようだ。明希と私が仲良しなのは、同じく同期である渋谷も知っていたので託したのだろう。
 これで部屋に帰れるな。
 立食パーティは自由行動である。お偉いさん方のスピーチと乾杯が終われば業務時間外扱いなので、部屋に帰ってもいいことになっている。なにか問題が発生すれば実行委員である私が呼び出される可能性はあるとはいえ、最後まで付き合う必要はない。

「明希はどのくらい残る? 私、そろそろ下がろうかと思ってるけど」

 飲むのも食べるのも大好きな明希は、食事の提供場所をチラリと見やった。

「十分後にローストビーフが出てくるって話だから、それは食べたいんだよね」
「明希ってマグロ、好きだっけ?」
「うん。それが?」
「ローストビーフの後、マグロの解体ショーがあるよ」

 私が返すと、明希は目をキラキラさせた。
 実行委員なので、第二部のスケジュールも頭に入っている。特別なメニューが何回かに分けて提供されるので、お目当てがある人はなかなか部屋に戻れないのだ。

「じゃあ、満腹にならないようにしないと」
「食べる気でいるなら、戻るまで一時間はかかるだろうね」
「そうなるね。……一緒に戻らなくて大丈夫? 部屋の番号、覚えてる?」
「だいじょうぶ大丈夫。カードキーに書いてあるし」

 受け取ったカードキーを見せて、私はなくさないようにショルダーバッグにしまった。

「それはそうだね。書いてあれば、おっちょこちょいの緋夏でも問題ないね」
「カードキーを落としたのはおっちょこちょいだからじゃないし……」

 ぶつかったのは私が全面的に悪いが、カードキーを無くしたのは品川さんも同じであるはず。不満である。

「ま、私はゆっくりしていくから、先にシャワーして休んでいていいからね」
「了解。じゃ、私は下がるね」

 明希と別れて、私は会場を出る。腕時計をちらっと見やる。
 一時間以上は一人の時間が取れるな。
 私はウキウキしながら自分の部屋に向かうのだった。


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