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第027話、兄弟は仲良くしてね?
しおりを挟む「ノミーちゃん……」
ネネタンは目にも止まらぬ速さでノミー課長の懐に飛び込み、ノミー課長の腹に拳をめり込ませた。
「お・ねえ・ちゃん…… でしょ?」
「ゴフッ! ……ごめんよ、オネェちゃん」
ネネタンとノミー課長が兄弟? あんなに強いノミー課長に一発くらわせるとは、ノミー課長が青ざめている、ネネタンって何者なんだ?
「もうやーねー★ この子ったら、大袈裟なんだから★」
いや、ノミー課長の顔色を見ると先程の拳はかなり効いているな。
「その腕の毛はどうしたんだい? ……オネェちゃん」
「実は…… 彼氏ができたから報告しようと思って★ この腕も彼氏色に染められちゃって、彼の好みのなの★」
ネネタンは俺の方をチラッと見た、ノミー課長がショックを受けている。
「ま、まさかサルナス君…… そんな……」
「違います! 誤解を生むような発言は控えてくださいと言いましたよね! ……全身を毛むくじゃらにしてあげましょうか?」
俺は睨みをきかせて手の指をポキポキ鳴らしながらネネタンに向かって魔法の構えをとる。
「じょ、冗談よぉ、ちょっと可愛い弟に相談があってね★」
「ぼくに相談?」
「外ではなんだから★ 中に入れてもらってもいいかしら?」
「わかったよ、奥の会議室が空いてるからそこで話そうか、サルナス君すまなかったね、兄を… グフっ! …姉を送ってくれてありがとう」
またノミー課長のお腹にネネタンの拳が突き刺さる、そして二人で奥の会議室へ向かっていった。
「凄まじく濃い兄弟だな、あまり関わりたくない」
***
奥の会議室に向かってネネタンとノミー課長の兄弟が治癒院の廊下を並んで歩いている、背が高く体格の良い二人が並ぶと広い廊下も狭く見える。 時々すれ違う治癒師さん達はチラチラと興味津々で見つめている。
「いやー また強くなったんだね、さっきの拳は効いたよ」
ノミーがネネタンから殴られたお腹をさすりながら先程の拳について感心している。 ネネタンはそんなに強く殴ったわけではないのに顔を青くしていたノミーを思い出し、トレーニングをサボっていると感じていた。
「なに言ってるのそんなに強くは殴ってないわよ★ ノミーちゃんが弱くなったんじゃない? ちゃんとトレーニングしてるの?」
「いやいや、僕はちゃんとトレーニングしてるよ、あきらかにお兄… オネェちゃんのパワーが以前より上がってるんだよ」
「変ねぇ★ そんなに上がってるわけないのに★」
ネネタンは自分の手や腕を見ながら考えている、力の込め具合は軽めだったし、最近は美容をメインにしているので筋力トレーニングはあまりしていない、他にパワーが増すような心当たりといえば。
「まさか…… ねぇ★」
ふと思い当たることはあるが、今は答えが出ないので考えないことにした。 二人は会議室に到着し、ネネタンは相談を始めた。
***
ネネタンとノミー課長がそんな会話をしているとは知らず、朝から濃い空気を味わった俺は気を取り直していつも通り患者さんを治療している、最近は変な患者さんにもあたらず仕事は平和で順調だ。 いまはもう独り立ちしてイワ先輩のサポートなしで治療をしている、訪問治療の件もありむやみに魔法をかけるのではなく、患者さんの年齢や状態に合わせた個別性のある治療をするように心がけている。
前にあったクレーマーの高齢女性については無駄な会話は一切せず当たり障りのないように接することにした、時々クレームが来るようだが俺は気にしないようにしている、気にするだけ時間の無駄である、それよりは他の患者さんについて考えるほうが有意義だと思っている。
酔って暴れてた男についてはヨネーさんから聞いた話だが、ノミー課長の説教ですっかり大人しくなったそうだ、時々は怪我の治療で治癒院に来ているようだが俺は会っていない、お酒の匂いもしなくなり女性に対する甘えについてはほどほどにしているようだ、やはりノミー課長の説教は恐ろしいのだろう。
***
仕事を終えて家に帰宅し、布団に寝転がりながら俺は今までに魔法で生やした毛について改めて考えてみた。
(院長の頭に生やした毛はまだ残っている、抜けそうな様子もないし、枯れそうな様子もない、普通の毛として院長の頭に存在している…… ということはネネタンの腕毛も普通の毛としてネネタンの腕に残り続けるのか、偶然から生まれた魔法だから未だに能力がよくわからないな)
「まぁ、更なる検証は必要かな……」
俺は動物のモフモフした毛に包まれる夢を見ながら深い眠りに入る、ちなみにシラハの胸に生やした毛のことはすっかり忘れていた。
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