〖完結〗俺が【聖女】でほんとうにいいのか? 人は助けるが毛も生やすぞ?

さるナース

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第034話、俺が聖女?

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 今日も朝から患者さんを治療しています、特別な病状の方はいないので普通の治療です、時々は毛を生やしたくてウズウズします、けれど普通の患者さんに毛を勝手に生やすと大事なので我慢します。

 リリーお嬢様の件から数日が経過した、あれ以来は特に変わったこともない、まぁ良いことなんだけど少し欲求不満だ、エステン師匠による強化訓練も一段落したから今は通常に戻った感じだし、また森に行って毛を生やしまくってみようかな。

 そんなことを考えているとイワ先輩が声をかけてきた、久しぶりの登場だが忘れていたわけではない。

「サルナス君、なにやったの?」

「?」

 いきなりなんのことだろう、その言い方は俺がいつもなにかをやらかしているように聞こえてしまう、心外だ。

「院長からの呼び出しです、それでなにやったの?」

「あ~ もしかして人助けをしたのでその件ではないでしょうか」

「人助け?」

「はい、領主様のお嬢様をお助けしました」

「はぁー? それってもしかして心臓?」

「あ、知ってるんですね」

「前に治癒師の上層部でウワサになってたの、難しい病気で治す方法が見つからないって、それを治したの?」

「はい、その、実はオリジナルの魔法を使えるようになりまして、それで治しました」

「オリジナル魔法? また凄いことをしたのね、私の頭では受け止められないわ、でも報告は欲しかったわね」

「すみません、個人的に受けた相談事だったもので」

「じゃあ、院長からの呼び出しはその件ね」

「たぶん…… 勝手にしたことで怒られますかね?」

「ん~ 人助けしたんだから大丈夫とは思うけど…… とにかく院長の部屋に一緒に行きましょうか」

「はい」



***


 院長の執務室に到着した、怒られるのかなと不安な気持ちと、意外と誉められるのかもという期待もある、ポジティブ大事、誉められるんだきっと。 そう思い込みながら俺はドアをノックした。

「サルナスです、失礼します」

 部屋に入ると院長の表情は穏やかだ、どうやら怒られることはなさそうな雰囲気だ。

「サルナス君、実は治癒師の協議会から君への指示書を預かっている、これだ」

 院長は封のされた手紙を俺に渡してきた、開封はされていないため中身は院長も知らない様子だ。

「個人宛に送られてきているため、私でも開封は許されていない、内容について話せることであれば聞かせて欲しいのだが」


 俺は封を開けて中の書類を読んでみる。

「あっ」

 手紙の内容は俺に『聖女』としての称号を与えるというものであった、あまり気は進まないがこれを断わってエステン師匠みたいに扱いが悪くなるのも嫌だしな、まぁエステン師匠の場合は違う理由もあるけど、それに俺は男だからたぶん別の名称にはなるんだろうな、どうしたものか。

 俺が黙っていると手紙の内容が気になるようで院長もイワ先輩もソワソワしている、いずれはわかるし内緒にする必要はないよな。

「『聖女』の称号を与えたいので治癒師の協議会まで来るようにと書いてあります」

 院長もイワ先輩も驚いている。

「なんと! 我が治癒院から聖女が誕生するとは!」

「まぁっ! 凄い!」

 二人とも驚きと喜びの表情だ、なんでもこの治癒院から聖女が誕生したことは無いそうだ、今までの聖女は別の治癒院から誕生している、それでも大昔の話だ。

「えと、日時は…… あ、明日? けっこういきなりですね」

「わかりました、明日は治癒院へは来ないで協議会へ直接行きなさい、地図を用意させよう」

 院長は部下に命じて協議会への地図を用意してくれた、なるほど街の中心部あたりにあるようだ、俺が所属する治癒院は街の南側に位置している、中心部はそんなには遠くないがあまり行ったことはない。

「ありがとうございます、明日行ってきます、服装とかはどうしたらいいですか?」

「おそらく向こうで着替えるように言われるだろう、神聖な儀式だから外部の人間は入れず数人の幹部のみが参加されるはずだ」

 俺は一通り説明を受けて仕事に戻ったが、明日のことが頭をめぐり仕事に集中できなかった。


***


 家に帰宅して服を選ぶ、向こうで着替えるそうだが少しはまともな服を着ていかないとまずいよな。 あ、前にネネタンから借りた服を洗濯してからまだ返してなかった、これを着ていこう。

 エステン師匠にも話しておきたいが、いきなり明日だからな、まぁ終わってからの報告でもいいか。

 俺は布団に入るが明日のことが気になりソワソワと寝返りを繰り返しながら、なかなか寝付けなかった、試しに羊を数えてみたがいまいち効果を感じられない、途中からネネタンが羊にまたがっていてエステン師匠が羊を追い回していた、そんな風景が浮かびながら眠りについた。

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