強運と幸運を持ったガチャ好きな召喚者は目標が無いので最強を目指してみた

中沢日秋

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第一章 奔走冒険者編

第二十四話 狂気 前編

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 あの豚貴族は口をパクパクさせながら俺を指差している。

 「フレスタ。もう戻っていいぞ」
 『はーい。分かったわ』

 フレスタさんは文句も言わずに俺の中に魔法陣を通してはいる。
 傍目から見れば戻って良いと言ったら地面に現れた魔法陣に飲み込まれたように見えただろうな。
 さて、予想通りなら俺等がいなくなったころに馬車に攻撃かなんか仕掛けて・・・
 ドゴォォォン!
 速いなおい。
 どうせ俺になんかいちゃもんつけるんだろーなー。まあ別にいいから無視するけど。
 まずギルドへ行ってランクを上げるか。二人ともCランクまでは上げてやりたいからな。
 あ、普通にあった。依頼の中には・・・・・・お、あったあった。ドラゴン二匹の討伐・捕獲・テイムか。これならちょうどいいな。ドランガルを呼び出して倒してもらって肉を食わせてやろうか。そうしよう。
 まさに一石二鳥。ふはは。

 「ふーん。ギルドマスターの契約精霊からの依頼かあ。しかも場所がここから一番近い『精霊水の聖泉』、か」

 蟲の人たちが言っていたのとかなりの関わりがあるなあ。
 まあいいか。

 「この依頼をパーティでお願いします」
 「分かりました。では・・・・・・」

 その後必要事項をやり終え、馬車へ乗って向かおうとしたのだが、
 バタァン!!
 ドアを思い切り音をたてて入ってきたのは、あの豚貴族だった。

 「居たなぁきさまぁ。今すぐひねり潰してくれるわぁ!」
 「すいません。ギルド職員の皆さん。今すぐ場所を変えますのでなにとぞお許しください。本当に申し訳ありません」
 「あ、いえいえ。あの感じだとまた・・逆にやられた感じですからねえ。今回はかなり憤怒しているようですが・・・・・・。お気遣いありがとうございます」
 「いえいえ、こちらこそ」

 ご近所付き合いのように言葉を交わす。聞いた限りではコイツ、常習犯みたいだし。

 「む、無視してるんじゃなあぁぁああい!き、貴様!お前をこの町に居られなくしてやるわ!」
 「おいおい。いくら逆切れでもやりすぎじゃあないか?流石がにそれはないだろ。人として」
 「な・・・・・・!な・・・・・・!な・・・・・・!」
 「それに、今から依頼なんだ。ここでやると他の冒険者の方々や職員の方にまで迷惑がかかるだろ?お前の頭は飾りじゃないだろうし、それくらいは分かるはずだよな?そうだよな?・・・・・・なんか心配になってきたぞ。お前の頭に」

 Tha☆スッキリ
 ヤッホー!内心飛び上がって喜んだ。この豚やろうの心を折れたことに。だって心の状態くらいならわかるし。ヤッホー!

 「じゃ、そゆことで」

 魔獣車を走らせる。『精霊水の聖泉』までフレスタさんの速さならすぐに着く。
 道はすぐに分かった。空気中に浮いている魔力に意思を込めて念じると妖精らしき者から薄い返事が返ってくる。
 フレスタさんマジで優秀だわ。感謝感激フレスタ様々だな。
 しばらくうたた寝していると起きたときには着いた。
 ただそこに居たのは魔力を集めて妖精に操らせているだけのハリボテだった。

 「とりあず叩き割るか」
 《待て》

 いきなり頭の中に声が響いた。聞き覚えのある声だった。

 「誰だ。俺達に何か用か」
 《お前だけに用は大有りだ》

 その後、一瞬にして俺は一人、静かな庭園のような場所に居た。

 「どう言うことだ?ここは一体・・・・・・」
 「よく来たな。私と契約を結ぶ者よ。下僕ゴミクズを通してやってみたが案外うまくいったな」

 あの頭の中に直接響いていた聞き覚えのある声が直に耳に届いて聞こえる。
 声がしたほうを見た時に目を見開いてしまった。なぜなら―――

 ―――死んだあいつの姿だったから。

 ―――もう一度見ることのない姿。

 ―――二人と居ない、心の内にしまっていたあの記憶・・・・が蘇る。

 「ど、どういう、ことだ・・・・・・?」
 「なに、簡単なこと。お前の心から読み取っただけだ。お前も、最も親しい姿の方が落ち着くだろう。そしてこの私は、精霊の支配者、精霊女帝だ!」

 その瞬間。俺は無心になった。無心になってしまった。だが、前とは・・・ちがう。今は望んで無心になった。
 心から読み取った?なにそれ。
 親しい姿?ナニソレ。
 精霊ノ支配者?ナニソレ。
 セイレイジョテイ?ナニソレ。
 フザケルナフザケルナフザケルナ。

 「黙レ」

 言葉もまともに回らない。
 ただただ、無心だった。
 何も感じなかった。
 何の感情も湧いてこなかった。
 どうしようもなく虚しくなった。

 「死ネ」

 刀をぬいて真っ二つに切ろうとしたが避けられた。
 だから魔力を纏わせた。
 今まで全力を出したことなんてほとんどなかった。
 だから今全力を出すことにした。

 目の前に、居る、あいつを、穢シタ、コイツヲ、葬ル為ダケニ。
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