蛇の魔物に転生した ~蛇なのに固有スキルでスキルが増えてく~

中沢日秋

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12.理解者殺し(終)

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 うーん。アイツとかこいつとかお前とか、そんな言い方をするのは嫌だな。
 単純にベルさんで良いや。

 ベルさん。俺の持つスキルについて教えてくれないか?まだよく分かっていないスキルの名前は・・・・・・

 『言わなくていい。お前の持つスキルは、たいした努力もせずに得たとでも思っているのだろう。だが、そのスキルは、お前の糧になった者達の生きてきた時間と魂が込められている。そのことを忘れなければ、十分理解できるだろう。』

 俺の言葉を遮って出て着たベルさんの言葉は、質問に対する答えではないように聞こえた。
 でも、よく考えてみると質問に対する答えでもあった。

 スキルは得た経験が形になった物だ。

 俺が倒した相手からスキルをランダムで2つ得られる。
 倒す、というより命を奪う、だな。

 つまり、経験から得たスキルにはその時間が込められていて、命を奪って手に入れるから魂が込められている?
 そういうことなのか?

 そのことを忘れなければいいのだというのなら、自分の欲で強くなってはいけないということか?

 強くなりたいという思いで命を奪いまくって強くなるのは禁止ということか。

 ・・・・・・そんなことするつもりは毛頭無いけれど。


 うー・・・ん。

 ベルさんを殺すには、罠が有効か?
 攻撃も防御も効かないのなら異常状態とかで・・・・・・あ、無理だ。

 ベルさん【異常状態無効】持ってたわー。

 罠くらいしか思いつかないんだけど。

 【攻撃無効】の攻略法。攻略法かあ。

 攻撃を無効化。攻撃は効かない。
 罠はおそらく効く。攻撃じゃないからだ。

 攻撃じゃないから効く?

 攻撃じゃなければ効くのか?
 例えば、落ちるギリギリの大岩を仕掛けて、何でもいいけど遠距離攻撃で衝撃を与えて落とす、みたいな。

 いや、攻撃で落としちゃダメだな。
 魔法を乱れ打ちして、外れたものが当たればいいか、程度の気持ちでしないと。

 多分【攻撃無効】の対象に入るかもしれない。

 【物理耐性】のレベルが最大だから殆ど効かないだろうけど、物理防御力が『ゼロ』だから、一応効くだろう。

 罠とかを仕掛けまくって、そのうち一つでも効けばいいのか。

 なら、早速仕掛けて、準備ができたらベルさんを呼ぼう。

 今は洞窟の奥で休んでるし。


 さて、罠はすべて仕掛け終えた。
 あとは、ベルさんと戦って、殺すだけだ。

 だけどなあ。

 やっと平和に話せる相手を見つけたのに、その見つけた相手を俺が殺すというのは。
 少し嫌だなあ。

 まあ、もう請け負って、【契約】【魔法契約】【悪魔契約】も済ましてる。
 もう逃げられないし、そもそも逃げる気なんて毛頭ない。

 洞窟の奥で待っているベルさんを呼んだ。

 ベルさん。準備終わったぞ。

 『そうか。今行く。』

 ベルさんがふわふわ浮きながら出てくる。

 始めるぞ。

 『ああ。』

 魔力を込めて、なるべく速く尾を振る。
 何本もの魔力の刃を乱れ打つ。

 ベルさんは避ける動作も無くこちらに向かって動く。

 もちろん魔力の刃スラッシュは当たるが、がちがちの魔法特化のベルさんには微塵も効かない。

 それは織り込み済みだ。
 狙いは乱れって当たらなかったものだが、これは完全に運任せ。

 そして、ベルさんの後ろにある岩壁にいくつも当たる。

 そのうち一つは、俺の仕掛けたものに当たったが、それを知る術は俺にはない。
 仕掛けに当たっても、その仕掛けがうまく当たるとは思えない。

 ベルさんと交わした契約は、『戦って負けたほうが死ぬ。勝ったほうは名前を得る。』

 という、いたってシンプルなものだ。
 ベルさんは既に名前を持っているからメリットは無い。
 だが、俺には名前が無いので俺にとってはメリットがある。

 そして、戦って・・・負けたほうは死ぬから、ベルさんにはメリットだ。
 俺には完全にデメリットだ。

 勝利の証は、相手のHPを半分以上削ること。

 だから、俺は必死にHPを削らなければならない。

 ベルさんが俺に向かって黒い球が飛んでくる。
 正直、当たったら死ぬ予感しかしない。

 魔攻力は魔法を使うことに対する数値。
 魔防力は魔法に対する耐性や防御反応の数値。
 物理に関しても同じだ。

 つまり、小石程度の大きさの魔法攻撃でも、魔攻力四桁オーバーのベルさんが使えば木々が吹っ飛ぶレベルになる。

 だから全力で避ける。

 ベルさんの周りを動きまわっていると、他の仕掛けも発動した。

 僅かな衝撃で、しなった木につけた石が飛んでいく、という単純な仕掛けだ。
 それが五つほど、発動した。

 ベルさんは、そのうち一つを避け、残りの三つは体の形を変えて避ける。
 残った一つの石は体の真ん中に当たった。

 それは、そこまで威力があるものではないが、物防力0で物理耐性マックスのベルさんにも多少は効いたみたいだ。

 『・・・・・・久々だ。私がダメージを受けるのは。なるほど。攻撃ではなく罠か。攻撃の意思が無いからダメージは通る、ということか。目を閉じて高速移動でもすれば自分で死ねたかもしれないな。』

 ・・・それは多分無理だ。
 まず、ベルさんは目を閉じることができないからだ。

 それと、死にたいからと言って簡単に死ねるものではない。

 あくまで、今の俺はそう考える。
 ベルさんは、もっと辛い思いをしている。
 だったら、自分が死ぬことに対して、俺以上に逃げようとすることは無いはずだ。

 一旦、ベルさんのステータスを確認する。

 あと2回か3回、石が直撃すればHPの半分を下回る。

 だが、石を当てる前に最初の仕掛けがうまく行きそうだ。

 崖に幾つもの亀裂が走る。

 崖に【穴掘り】のスキルを使って幾つも穴を空けていた。
 その上、崖に低威力のスラッシュを打ち込み、崖を崩れやすくしていた。

 この罠は、下手をすると俺自身が巻き込まれるから、攻撃の意思は殆ど消える。

 崖の一部が崩れてきた。

 今更になって崖が崩れたのは、崖の内部から亀裂が入っていたからか?
 正直、理由は分からない。

 ただ、今は全力で安全地帯に逃げる。


 お馴染みのスキルを使って逃げる。
 横目でベルさんを確認する。

 黒いもやの様な身体の二つの目がこちらを向いていた。

 『ありがとう・・・・・・。』

 念話で、言葉が送られてくる。

 その姿は、すぐ崩れた岩と土砂に埋もれて見えなくなった。

 そして、ベルさんから聞いた情報の通り、大量のスキルを、俺は得ることになった。

 俺が事前に聞いた情報はこうだ。

 『スキルのによる情報通知が時折曖昧な理由。』
 『スキル継承で、母親から大量のスキルが継承された理由。』

 この二つだ。

 答えも至って簡単だった。

 最初の質問の答えは、俺が肉体的に未熟だからだという。 
 二つ目の質問の答えは、俺が殺した相手の精神的なものが影響しているらしい。

 必死に戦って負ければスキルを二つ継承し。
 相手が俺のことを心から認めたうえで俺が殺せば、大量のスキルを得る。

 この違いらしい。

 俺は、これでよかったのか?

 せっかくできた、互いに話し合える相手を殺して。
 この世界で、最初で最期かもしれない理解者を殺して。

 俺は頭を振り、マイナス思考を追い払う。

 俺は俺だ。
 これからもなる様になるだろう。

 前世が人であることもあるからかな、人里に下りてみたい。
 嫌なスキルも手に入れてしまったし・・・・・・。

 それと、俺の名前。

 『ジード』

 ベルさんが人として生きてた場所の言葉で『蛇の王』を意味するそうだ。

 ベルさんが事前に決めていた名前だ。
 この名前に恥じないようにしたいと、俺は思った。






 そして、俺はもっと新しい世界へ踏み出した。



                       ―END―
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