~魔蟲の支配者&死神になった僕は使徒~

中沢日秋

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第一章 神の覇権争い

第七話

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 ああ。ついにこの日がやってきた。緊張と恐怖しか想像できない地獄の日が。ああ。最近は調子がよかったのでこの日のことを忘れてしまっていました。不覚です・・・・・・。

 最近、感情が高ぶると口調が昔のように荒っぽい喋り方に近づくんですよ。僕が今のような丁寧な口調になったのは高校2年生になってしばらくしてからなんですよ。その前はやばかったですねー。今の自分からは考えられないほど荒っぽかった。
 まあ、それから丁寧な口調になって、そのギャップがいいとかなんだかの評価を受けて彼女もできて、家族を殺されてしまって・・・独りぼっちになって・・・・・・。
 ・・・・・・ハァ。やめましょう。こんな重い話は入りません。不要です。

 「そろそろ着くぞ。シグレ殿」
 「国王様。一貴族の息子の自分に、『殿』とつけるのは不要だと思います。ですが、まあ、魔王とお話しする際には、僕は嫌でも砕けた口調になってしまうと思いますがね。魔王直々の指定ですから・・・・・・」
 「心中お察しする」

 豪華な馬車の中で、国王陛下とチョコチョコ話しをしながら半日。二人がもういやだと思い始めて数時間。魔族の暮らす国、その中心にある魔王の暮らす城についた。

 本人達の心境では『ついてしまった』といったほうが正しいのだろう。

 「始めまして。私はこの国で王として生きているセミルという。ああ、たしか人族は魔王とか呼んでいたな。まあいい。入れ。今日はちょっと難しい話もあるが、大丈夫だろう」
 「よろしくお願いいたします。セミル女王」
 「あ、今日はよろしくお願いします。セミル殿」

 自分で言っておきながら気付いた。やってしまっっったーーーーー!!!

 シグレに突き刺さる、殺意と嫉妬の目線。ただそれだけが痛かった。申し訳ない気持ちになるような視線だった。

 「ほう。お前たち、そう殺気立つな。私が直接指定したのだ。出来る限り砕けた話し方で構わないと」
 「ですが、こんな人族のガキに・・・・・・」
 「お前達の目は飾りか?」

 魔王セミルが放った一言で、その場の空気が、まるで世界中が凍ってしまったかのような冷たさにかわってしまった。

 「ふん。どうせなら、シグレ殿とお前らを交換してもらいたいぐらいだ」
 「いえ、自分にそれほどの力は・・・!!」

 自分の眼前に飛んできた数百を超えるであろう闇魔法の槍の大軍に、僕は思わずやってしまった。

 最近うまくいっていたこと。そのひとつが、魔法の術式の組み換えだ。
 敵の放った魔法、それを根元から反転させること。だが、膨大な集中力と技術が必要なのでそうやすやすとは出来なかった。でも、今は出来る。

 「『魔術反転』!」

 げ、まずい、最近魔法として認識されたから口にだしてしまった。
 と、とりあえず、この魔法を少しでもずらす。可能な限り全てを、斜めに・・・・・・!

 「ハァ・・・ハァ・・・ゼェ。挨拶にしては・・・ゼェ・・・強力すぎなのでは?」
 「ほう。アレを全て操るとは。いや、攻撃が当たらないよう最低限向きを変えただけか。ふむ。だが、体力は消耗しやすいようだが、成功すれば魔力の消費はないようだ。面白い。だが、まだまだ鍛えれば上にいけるだろう。それに、まだ力の片隅しか見せていないようだ。その気になれば、今のようなことをしなくても防げたであろう」

 おおう。バレてる。実際、魔蟲を五体ほど、この間新しく作り上げた防御特化の魔蟲を呼び出して防いでもらえば楽なんでしょうけど、今それをやるわけには行きません。バレルとまずい力だということは把握してますから。

 「ハァ・・・ハァ・・・ふぅ。やっと落ち着きました」
 「そうか。では、こい。興味が沸いた。ケイリン、準備をしろ。人族の国王よ、おそらく、お前たちで言う禁忌が見られるかも知れんが、シグレ殿の為にな」
 「わ、分かっちゃ。あ。」
 「ふ、面白い」

 セミルさーん。さっきの赤黒いさっきの魔法使い?になんていいましたか?まさかとは思いますけど、実戦なんてことには・・・・・・・・・・・・そうなんですね。実戦ですか。

 連れてこられた場所は、闘技場。すでに何万人もの魔族の観客が見てる。まさか、僕って見世物なんじゃあ。

 「シグレ殿。まず、今から魔獣3匹と戦ってもらう。どれも強さ、速さ、魔法にそれぞれ特化した魔獣だ。死なぬようにがんばってくれたまえ」
 「うえぇ・・・・・・?ほんとですか?」
 「ホント♪」

 お茶会と聞いてたのに闘技場で見世物にされる。・・・・・・死にたい。

 『えーと。では、使徒を倒した人族。シグレ君です。ふーん。どうやら禁忌の力を隠し持ってるようで、その上頭も切れる。年不相応な思考を持ち合わせているため、死んだ後は興味深い解剖劇になりそうです』
 「僕の死体で解剖劇って何!?」

 て、観客の皆さん大爆笑ですか。ひどいですね。まあ、がんばりましょう。

 『では、まず魔獣との対決です。3体の名前は、双頭犬のぽち君。弐尾猫のたまちゃん。多眼鳥のぴっぴちゃん。ご入場くださーい』
 グルルルルルル!!!
 フシャーーーー!!!
 ギエエエエエエ!!!
 「どこがぽち、たま、ぴっぴなんですか!!?」

 て、また笑ってるし!!セミル殿まで笑ってますし!!
 ケルベロスの下位相互と思われる二つの頭を持つどす黒いブルドックみたいなバケモン。
 二つの尾を持つしなやかな体を持つギラギラして充血した目を向けてくるどす黒いメスライオンみたいなバケモン。
 四つの鋭い目を持つ片方の翼だけでも4メートルあろうかというどす黒くて馬鹿でかい鷲みたいなバケモン。

 僕にこれをどうしろと?

 うわあ、超泣きたい気分です。

 「シグレ殿ー。それが終わったらお茶会だー。先にやっておくから後で来いよー。見てるからなー。ガンバレー」
 「何で棒読みなんですか!!もう!!」

 『はいはーい。でははじめます。すたーと』

 「う~。もういいや。ここで死ぬよりましでしょう。『爆ぜる蟲よ、敵を滅ぼす雨となれ』」

 最近うまくいっていたといいましたが、その中には魔蟲を効率的に動かす詠唱、それを使いその詠唱にあったように動かす。そんなことを生み出しました。

 空に闘技場を包み込むような巨大な魔法陣が浮かび上がり、そこから、いままで創り出しては溜め込んでいた『自爆軍勢』が雨のように降っていった。
 その雨は、対象を中心に降り続き、逃げ出そうとしてもそれに合わせて雨も動く。

 30秒も経たないうちに、3体の魔獣は倒れた。

 『おおー。まさかの瞬殺。圧倒的でしたねー。では、次の試合、というか最後の試合始めまーす。ケイリン様ご入ー場ー。はいすたーと』

 「ふむ。本気をだせばまだまだやれそうだな」
 「いや、本気出したらつかれちゃうのでお断りします」
 「ふふっ。そう言ってくれるな『闇槍之軍ダークジャベリン・アーミー』」

 うげっ!さっきのやつですか。でも今は、さっきと状況が違います。

 「『地の底から湧き上がる怨念を今此処に呼び出せ』」
 「ほう。独自の詠唱か。それに、禁忌の力をうまく使いこなしてるようだ」
 「『哀れな者に招かれざる者の蹂躙を』『根源と成り得る敵を薙ぎ払う力よ』」

 地の底から響く怨念の叫び声。軽い羽音をさせながら飛び交う細く早い不可視の何か。重苦しい音をさせながら現れる魔蟲。

 【剛魔蟲】アプノリティントピート・アースエンペラーズ
 状態異常の投与・中和・付与できる100m級のムカデ。
 あのムカデ君が進化し、生まれ変わった姿。優秀固体名『ノアン』。

 【快魔蟲】レイハストラゴライ・スカイエンペラーズ
 全長5m、最高秒速7、2kmの空間を操る高速飛行型トンボ。
 最初に作り出したトンボ君が進化した姿。優秀固体名『イスラ』。

 【鈍魔蟲】コネットドルアスタンヅ・メグレスエンペラーズ
 全長18m。密度1kg/cm。石・岩・金属を生み出せる事が可能になったヤシガニ。(体重測定不能)
 あのヤシガニの強い魔蟲が進化した姿。優秀固体名『アスル』。

 それぞれ1体ずつ。そして同じ蟲のベースのキングズ系が5体。さらにナイト系が10体。アーミー系が25体。
 計123体の魔蟲たちの軍隊たちの出来上がりだった。

 「ぬ、ぬお。こ、これはまた。その上、これほどの軍隊を作り上げたにもかかわらず魔力や体力の消費がない。流石に本気を出さねば死にそうだ」
 「殺す気でやらないと負けちゃってそのまま死ぬような気がします」
 「ふっ。その通りだぁ!!『獅子砕牙シシサイガ』!」

 その声と共に膨大な魔力が流れ出し、闘技場の地面となっている岩が変形しだした。そして、その岩は獅子の顔へと姿形を変え、その牙の岩が圧縮されていき鋼鉄のようになった。
 そしてその強靭な牙とな強力顎が『魔蟲軍団バグ・アーミー』を砕こうとした。

 が、『アスル』が率いるヤシガニベースの蟲達の幾重にも張り巡らされた防御魔法や防御結界により完全に攻撃を遮断してしまった。

 「イスラ、戦力を奪い集中力の分散。ノアン、可能なら奇襲、なるべくダメージは出さないように。全員、いざとなればあいつらと・・・・・危機交換をしてくれ」

 超強力な固体へと変わっていたあいつら。その上、そのリーダーとなる存在が現れた。これは全くの誤算だった。
 ・・・・・・また口調が荒くなってしまいました。こんなときにもこんなどーしよーもないことを考えているなんて、僕は馬鹿なんでしょうね、きっと。

 「ぐ、が、クソッ!『闇龍の加護防壁』!」

 ! アレはマズイ!!

 そう思った瞬間に、指示したとおりに、皆が危機交換した。そして危機交換をしたのは、自爆軍勢の上位相互だった。
 前より大きくなり、体は醜く、腐蝕と醜悪さに特化した蟲。そいつらは命をもたない。持たないはずだった。

 大きさは、太さ50cm、長さ2m。
 脳みそを繋ぎ合わせて作り上げた様な、蛇のような形状をしていた。
 眼球は大き過ぎてほとんどむき出しになり、二つの眼が全く別の方向を見ていた。
 足はヤスデか何かのようにたくさんあるが、全て、何かの動物の指のような外見だった。
 尾の先からは内臓がはみ出したような、細く不快なドロドロの液体に塗れたものが数本ついていて、先に小さな針がついていた。
 口は、穴の様に丸く、牙の代わりに帯状の物がついていた。
 背中からは人の腕・・・が4本生えていて、それぞれの腕からは尾の先に生えているものが何本もあった。

 まさに、醜悪を極めた魔蟲。
 この魔蟲たちは、ただただ、自らを含めた全ての腐敗を求めていた。

 こいつらの名前は、無い。
 攻撃手段は、突進のみ。
 特性は、触れた攻撃や防御を、自らの身体と共に崩し去ること。

 たった数秒で、ケイリンが放った魔法は消え去り、魔蟲も全て消滅した。

 「ふー。ありがとうございます。これで厄介なデメリットを打ち消すことが出来ました。しばらくは全力で戦えそうですね」

 腐醜魔蟲と名を付けた蟲は、本来生まれることはない。ただ、シグレが魔蟲創造を使い創り出したとき、そのデメリットに魂を削るのではなく、それを固めて、徐々に減らしていけばいいと考えた。
 が、それは固めた時に意思を持った魔蟲になってしまった。

 それは放っておけば内側から全てを腐らせてしまう。その前に呼び出し、そのうちに消し去らなければならなかった。
 ただ、罪悪感はあった。それが、自分に完全に敵対した時に消えただけだった。
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