君の名をよばせて

雨ましろ

文字の大きさ
1 / 23

帰ってこない

しおりを挟む
一緒に手をつないで…というわけにはいかないけれど。
だって。まだ付き合っていなかったし。
一緒にくらしていたけれど、ただのルーシェア。
会社の寮みたいなところで。
僕、戸狩元希は、田丸義男と一緒に暮らしていた。
それで毎日、同じ部屋に帰ってきていた。
でも。あの日は、急に、田丸から連絡があって。
「帰れない」って。
言っていたけど。
本当は違う。
「ごめんな」とか、「本当に申し訳ないのだけど」なんて。
今思えば、嘘っぽい言い訳して。
そんな言葉いらなかった。
僕は、田丸と一緒に帰りたいだけだった。
田丸と一緒に部屋に帰りたかった。
ただそれだけだったのに……。
そして、僕は、ひとりぼっちになった。
僕を避けているのだと思った。
だから、いつもより早く帰ってみた。
「ただいま……」
返事はない。誰もいないみたいだ。
会社を早退してきたのだ、そして田丸に会えると思って。
田丸のことが気になって、理由を知りたかった。
帰れなくなるわけが気になった。
仕事を残業して帰ってこなかった。僕とすれ違う生活をはじめたわけ。
そう思った瞬間。
ガチャッ!玄関の鍵を開ける音がした。
「おかえり」僕が振り向いて言ったら。
田丸がいた。
あぁ、やっぱりそうだ。
僕のこと避けていた。
わざわざ。時間をずらして僕の帰宅していない時間にかえってきたのだね。
僕のいない隙に。
僕がいないときを狙って。
「え?何でいるんだよ?」
田丸の声は震えていた。
動揺しているようだ。
そりゃそうだよね。僕を避けていたのだから。
僕が帰っているはずがないと思っていたのだろう。
「…………」
何も答えられなかった。
聞きたい理由はきけなかった。田丸の動揺をみたら。
これ以上田丸を困らせたくなかった。
僕は居ても立っても居られないとき運よく会社を早退できた、なんて言えなかった。
田丸のライフスタイルを乱す気はないし。
理由を追求するほどの権利など僕にはなかった。
「今日も遅いのかと思っていたよ」
「うん。ちょっと用事があったから、早めに帰った」
「そっか」
ぎこちない会話が続いた。
それから、一週間ぐらいはこんな感じだったかな。
でも。だんだん慣れてきたようで、普通に接してくれるようになった。

まだ、僕は恋していなし別に好きな人がいた。
駅から歩いて20分の場所。
バスで帰れば5分だけれど、田丸と一緒に歩くのが日課。
田丸を始めてみたのはあの時。
11月に面接にいって帰り際、田丸はデスクで仕事していて。
「お疲れ様です。」挨拶をくれた。
声だけいけている髪の毛ぼさぼさの男性、真面目そうな印象だった。
僕は採用になって、田丸と同じ部署に配属された。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

物置部屋に追いやられた伯爵令嬢ですが、公爵様に見初められて人生逆転しました〜妹の引き立て役だったのに、今では社交界の花と呼ばれています〜

丸顔ちゃん。
恋愛
伯爵家の令嬢セレナは、実母の死後、継母と義妹に虐げられて育った。 与えられた部屋は使用人以下の物置、食事は残飯、服はボロ。 専属侍女も与えられず、家の運営や帳簿管理まで押し付けられ、 失敗すれば鞭打ち――それが彼女の日常だった。 そんなある日、世間体のためだけに同行させられた夜会で、 セレナは公爵家の跡取りレオンと出会う。 「あなたの瞳は、こんな場所に閉じ込めていいものではない」 彼はセレナの知性と静かな強さに一瞬で心を奪われ、 彼女の境遇を知ると激怒し、家族の前で堂々と求婚する。 嫁ぎ先の公爵家で、セレナは初めて“人として扱われ”、 広い部屋、美味しい食事、優しい侍女たちに囲まれ、 独学で身につけた知識を活かして家の運営でも大活躍。 栄養と愛情を取り戻したセレナは、 誰もが振り返るほどの美しさを開花させ、 社交界で注目される存在となる。 一方、セレナを失った伯爵家は、 彼女の能力なしでは立ち行かず、 ゆっくりと没落していくのだった――。 虐げられた令嬢が、公爵の愛と自分の才能で幸せを掴む逆転物語。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

処理中です...