君の名をよばせて

雨ましろ

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予定

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出張から帰ってきて、無事僕たちは仲むつまじくなったはずなのだけれど。
時間がないというか、仕事で残業が続いていたから疲れていた。
そして来月から、あたらしい中途採用の人が会社の寮に入るそうだ。
来月って、あと2日で、僕らの生活が一変してしまうのだろうか。
文句は言えない。だってここは会社が寮として借りているマンションだから。
そうこうしているうちに、新しい人が入居してきた。

「おはようございます」
新しい入居者が挨拶してきた。
「はじめまして。よろしくお願いします」
「はい。よろしく」
「えっと、どちらに行けばよろしいですか?」
「ああ、まずは自分の部屋に荷物を置いてください」
「わかりました」
新しい入居者の名前は、真辺 学といった。
真面目そうな男性で、僕たちと同じ年齢だった。
僕たちがため口で話しているように数日で、真辺も自然と話せていた。
前の会社が倒産してしまったようで、苦労されたようだ。
ここは会社の寮があるから、マンションの部屋を借り上げてくれて
3LDKの1部屋ずつを貸してくれていたから、突然追い出されたりしない。
ベランダ側の和室2部屋が田丸と僕の部屋になっていた。
真辺は、玄関側の洋室を使うことになった。

会社に出勤すると、挨拶がありその後部署が決められた。
真辺は、僕たちと違う部署に配属された。
同じ部署の方が、いろいろ教えやすいのだが。
でも、彼なりに考えがあって配属されたのかもしれない。
田丸の部署にきたら田丸が指導することになった。
でも、僕も田丸も忙しすぎてなかなか教えることができなかった。
「あのさ、悪いんだけど、残りの仕事のこと頼めるかな?」
部長に頼まれた。
僕たちに仕事を任せて、部長はデートに行ってしまうようだ。
でも、断る理由もなかったから引き受けることにした。
「任せてください」
田丸は自信満々だった。
申し訳なさそうに部長は帰った。
でも、僕たちも余裕がなかったけど頑張るほか仕方ない。
「田丸、頑張ろうね」
「そうだな」
田丸の笑顔が眩しかった。
僕たちは、2人で協力しながら仕事をこなした。
時々、田丸の元婚約者の話が出てきた。その度に、心が痛んだ。
今は田丸のことしか考えられない。
こんなに人を好きになったのが初めてだったから。
田丸も同じ気持ちだったらいいなと思った。
元婚約者に田丸を取られていたらと思うと胸が苦しくなる。
田丸を独り占めしたい気持ちが強いと気づいた。

こんな気持ち初めてだった。
田丸が好きだ。
そう思った。
でも、田丸はどう思っているのだろう。
聞くのが怖かった。

仕事が忙しくて、つい寮に帰ってもいろいろ資料の支度していたから。
実は肉体関係ができていなかったんだ。あれ以来。
僕たちがエッチな関係を持ったのは前回の出張の先の宿でだけだった。
もしかして、あれから求めてこないってことはあんまり愛されていないのだろうか。

不安でいっぱいだった。
そんなことを考えながら過ごしていたある日のことだった。
「あーあ。つまんねぇ」
いつものように、田丸が愚痴をこぼしていた。
「そんなこと言わずに頑張って」
「わかっているよ。でも、毎日残業じゃあな」
確かに、残業続きじゃ疲れるし毎日ねむりに帰るだけの寮生活になっていたし。
真辺も会社のマンションに住むようになって、僕たちは真辺の前でいちゃつくわけにもいかないし。
好きだけれど、愛情表現ができないつらさはあった。
「明日休みだしどこか行こうか?」
「えっ?いいの?」
「うん」
「どこにする?」
「どこがいい?」
「うーん。水族館とか?」
「じゃあ、そうしよう」
「やったぁ」
田丸と出かけるのは久しぶりだった。仕事のことを忘れて田丸と楽しい時間が過ごせると思うと嬉しかった。

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