君の名をよばせて

雨ましろ

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そんな

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寮に帰ってから、田丸と少し話をしてから部屋に戻った。
すると、ドアの前に真辺がいた。
「どうぞ」
部屋に招き入れた。

「すみません」
「いえ、こちらこそ」
「あの、先輩にお願いがあってきました」
「どうしました?」
「田丸さんのことです」
「はい」
やはり、田丸とのことがばれたようだ。

「田丸さんとはもう別れてください」
「えっ?」
「上司の娘さんのほうが田丸さんを幸せにしてあげられます」
真辺は田丸の婚約破棄を言っているのだと思う。
でも、元婚約者は母方の実家を継いでおかみでいるわけで。
田丸のことに未練がないから、僕たちに宿の部屋を用意してくれたのだと思っていた。
「それはどうかわかりません。田丸は僕を選んだのですから」
だいたい田丸と僕はしっかり契りをかわしているし。
本人同士は納得しているし。

「田丸さんは騙されているだけです」
「違います」
僕はきっぱり答えたけれど、自信がなかった。
「田丸さんを不幸にしたくありません」
そういうけれど、一応僕と田丸は恋人なんだけれどな。
「田丸の気持ちはどうなの?田丸の気持ちは聞かないの?」
真辺に質問してみたけれど。
「田丸さんはあなたのことが好きだと言ったとしても、私は信じません」
「どうして?」
「だって、田丸さんがあんなに大金を払って婚約を破棄したこと戸狩さんは知らないでしょうから」
「えっ?」
僕は知らなかった。僕は驚いた。
田丸が大金を払ったなんて。そんなこと一言も言ってなかった。

「私、知り合いから聞きました」
「そうなんだ」
「田丸さんはお金を払って婚約を破棄したことを後悔していました」
「そうか」
なんでもくわしくしっているんだ。田丸が後悔しているだなんて。
「田丸さんが可哀想で」
「だから、田丸と僕が別れたほうがいいと?」
「はい」
僕のこと恋人にしてくれた田丸が。
「田丸の気持ちを無視してまで、そうしろと?」
「田丸さんのためです」
「田丸がそう言っているの?」
「いいえ」
僕と田丸は今でも付き合っている。

「僕の意見ですけれど、婚約破棄を取り消してほしいです。それができないなら、田丸さんと別れるべきだ」
真辺は真面目にいっていた。
「じゃあちょっとまって、意味がわからない」
婚約破棄したのは田丸が僕をえらんでくれたからだし。
仕事を頑張らないと、って励んでいたのも誠実だった。
僕を選んでくれたことで婚約破棄で慰謝料が発生したんだろう。
僕が全然気づかないくらい、田丸はいつも通りだし。
出張先ではいつも通りで田丸は優しくて。
慰謝料払ったことかくして、僕をえらんでくれた田丸。

元婚約者と示談で宿の部屋を用意してくれて、僕には説明してなくて悪かった、といった田丸。
僕は守られていて、知らな過ぎて悲しい。全然気づかなったし。

「僕は田丸さんが苦しむ姿を見たくないのです」
真辺は言いたいこといっているけれど。
田丸を苦しませたくないのは僕だって同じだけれど。
「一体いくら支払ったの?」
慰謝料支払ったなんてきいてない。
「300万ってきいています」
「そう…」
こうなったら僕が貯金と足らない分は働いて慰謝料を返すほかない。
こんな大事なことしらなかったなんて。
田丸が慰謝料のこと秘密にしてたなら、僕だって返済秘密で進める。


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