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第1章
職場
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「……は?」
乾いた声が漏れる。
思わず独り言を呟いた俺を、
「なんだ、こいつ」
という顔で通り過ぎる通行人たち。
彼らはスーツにオフィスカジュアルを身にまとい、月曜日の憂鬱に苛まれながら道を歩いていた。
しかし、俺は彼らに頓着する暇などなかった。
ただ茫然と、本日出社するはずの会社を眺めている。
俺の仕事場は、小さなビルの中だ。
建築基準法をちゃんと守ってんのかよと疑いたくなるくらいのズタボロ加減で、変な臭いのする建物。
雨漏りゴキブリなんでもござれ。
満員御礼の小汚いコンクリートの箱。
我らのワンマン社長は、
「俺の父が自腹で建てた」
「ここは、ビル1棟丸々使えるくらいの大きい会社だ」
と、胸を張って自慢していたが。
どう考えても、大企業に憧れるブラック会社の戯言だった。
第一、会社の建物を自腹で建設するって、それ問題にならないのか?
ーーまあ、俺にとってはどうでも良いことだけれども。
話を戻して。
そのボロビルの自動ドアは締め切られ、どうやっても動かないのだ。
さっきから何度も押したり爪を突き立てて開けようとするが、まったくもって歯が立たない。
電気も消えているから、恐らく、いや確実に会社が空いていない。
うちの上司はクソで、
「就業前の1時間前に来るのが当たり前だろ」
なんて常日頃ほざいていやがる。
しかし時計を見ると、あと10分で始業時刻だ。
ヤバい。
一体どうして?
何があった?
この会社に。
……という茶番すら、起こす気力がなかった。
そう、今までの行動は全部無駄だったのだ。
というか、わかっていてわざわざ不毛なことをしていた。
何してんだろ、俺。
マジで。
疲れているせいか、信じたくないせいか。
小1時間、俺はずっとわけのわからない行為に勤しんでいた。
扉がもう二度と空くことがないのも、電気が消えている理由も。
俺は今日、この場で初めて知る。
そこだけ違和感のある真新しい自動ドアには、コピー用紙が1枚張りつけられていた。
飛ばないように、ガムテープでしっかり固定されている。
その紙には、こう記載されていた。
「本日をもって、○○株式会社は倒産いたしました」
○○というのは。
ほかでもない。
俺が卒業して以来、骨身を削って働き続けていた会社の正式名称だった。
乾いた声が漏れる。
思わず独り言を呟いた俺を、
「なんだ、こいつ」
という顔で通り過ぎる通行人たち。
彼らはスーツにオフィスカジュアルを身にまとい、月曜日の憂鬱に苛まれながら道を歩いていた。
しかし、俺は彼らに頓着する暇などなかった。
ただ茫然と、本日出社するはずの会社を眺めている。
俺の仕事場は、小さなビルの中だ。
建築基準法をちゃんと守ってんのかよと疑いたくなるくらいのズタボロ加減で、変な臭いのする建物。
雨漏りゴキブリなんでもござれ。
満員御礼の小汚いコンクリートの箱。
我らのワンマン社長は、
「俺の父が自腹で建てた」
「ここは、ビル1棟丸々使えるくらいの大きい会社だ」
と、胸を張って自慢していたが。
どう考えても、大企業に憧れるブラック会社の戯言だった。
第一、会社の建物を自腹で建設するって、それ問題にならないのか?
ーーまあ、俺にとってはどうでも良いことだけれども。
話を戻して。
そのボロビルの自動ドアは締め切られ、どうやっても動かないのだ。
さっきから何度も押したり爪を突き立てて開けようとするが、まったくもって歯が立たない。
電気も消えているから、恐らく、いや確実に会社が空いていない。
うちの上司はクソで、
「就業前の1時間前に来るのが当たり前だろ」
なんて常日頃ほざいていやがる。
しかし時計を見ると、あと10分で始業時刻だ。
ヤバい。
一体どうして?
何があった?
この会社に。
……という茶番すら、起こす気力がなかった。
そう、今までの行動は全部無駄だったのだ。
というか、わかっていてわざわざ不毛なことをしていた。
何してんだろ、俺。
マジで。
疲れているせいか、信じたくないせいか。
小1時間、俺はずっとわけのわからない行為に勤しんでいた。
扉がもう二度と空くことがないのも、電気が消えている理由も。
俺は今日、この場で初めて知る。
そこだけ違和感のある真新しい自動ドアには、コピー用紙が1枚張りつけられていた。
飛ばないように、ガムテープでしっかり固定されている。
その紙には、こう記載されていた。
「本日をもって、○○株式会社は倒産いたしました」
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俺が卒業して以来、骨身を削って働き続けていた会社の正式名称だった。
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