職も家も失った元神童は、かつてのライバルに拾われる

 26歳男、羽柴 浩輔(はしば こうすけ)は現在、崖っぷちに立たされていた。


 3流大学を卒業後、なんとか入った職場は超絶ブラック。

 実家から追い出され、安いボロアパートに住んでいる。


 毎日毎日仕事し、たまの休みは安酒をかっくらってごろ寝する。

 結婚もしておらず、まず恋人すらいない。

 友人とも遊べず、ただただクソみたいな人生を消費するだけだった。


 そんなある日、いつものように会社へ向かった彼は愕然する。


 会社には、

「倒産しました」

 という張り紙のみ。


 計画倒産だった。


 失業した彼を待ち受けていたのは、住んでいたボロアパートの火事。


 1日にして、彼は職も家も、何もかも失ってしまう。


 路頭に迷った彼は、

「もうどうでも良くなった」

 と居酒屋で泥酔し、道端で嘔吐する。


 滲む視界。

 回らない頭。


 その中で甦ったのは、小学校・中学校時代のかつての栄光。


 当時、彼は「神童」だと周囲からもてはやされていたのだ。

 ライバルとともに、勉強も運動も頑張っていたあのころ。


 それに比べて、今は――。


 ゴミだ。


 もう、死んでしまおうか。

 ゴミ処理場で、燃やしてもらおう。


 異臭の放つゴミ捨て場に蹲った彼に近づく者が1人。


「……もしかして」

 顔を上げる羽柴。

「お、お前……。竹中か?」


 目の前に立っていたのは、かつてのライバル、竹中 美月(たけなか みつき)だった。


「羽柴君、家は? 仕事は?」

「……ない。全部なくなっちまったよ」


 乾いた笑いを漏らす羽柴に、美月は言った。

「それなら、私の家に住まない?」

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