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第1章
メイク
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次の休み時間中、私はずっと彼女に話しかけていた。
話題は先ほどと同様、化粧についてである。
「はっきり言ってほしいの。もちろん怒らないから」
私はその女子生徒―伯爵令嬢のジゼルに言った。
「前までの私のメイク、どうでした?」
「ダサかったです」
即答される。
「ですよね……」
私は頭を抱えた。
そりゃそうだ。
だってあんなド派手なメイクと髪型なんて、一昔前の少女漫画でさえ出てこない。
完全に黒歴史だ。
「どうしてメイクを変えたんですの?」
前世の記憶が呼び覚まされてとはもちろん言えない。
「冷静になってみて、ダサいなと思って……。恥ずかしいわ本当」
「大丈夫ですよアンリ様。誰だって通る道です」
でも私の場合、頑固かつ人の話を聞かないせいで道を踏み外したまま突き進んでいたというわけだ。
「今からでも遅くないです! 今風のメイクと髪型、私がお教えいたしますので」
「本当ですか?」
「ええ。我が家は女性向けの美容やファッションの事業を行っておりますの。流行には詳しいですわ」
「まあ、それは嬉しい。私、あの酷い化粧のせいで肌もボロボロなの。今までまともなメイクをしたことがないから、方法も良くわからないし」
「お肌が気になるなら、まずはスキンケアからですね!」
ジゼルはそう言って、通学鞄の中からいくつかの美容雑誌を取り出す。
「普段から持ち歩いているんですの?」
「ええ。私、ゆくゆくは家の事業を継ぎたいと思っておりまして」
凄い。
今まで私は、どうやって婚約者に振り向いてもらうかということしか考えて来なかったというのに。
この子は私がそうしている間、自分の夢や目標を定めて努力しているのだ。
「先に肌を休ませてあげる必要がありますわね。化粧は保護目的もありますけど、肌が荒れているならやらない方が吉です」
「なるほど」
「普段は保湿性の高いリップやすっぴんパウダーなんかをお使いください」
ジゼルは、雑誌の中で該当する商品を指差す。
「洗顔は朝と夜で2回ずつ。擦ってはいけませんよ? それから敏感肌用の化粧水と乳液、保湿クリーム。余裕があればパックも使ってみてください」
「ありがとうございます、ジゼル様」
あの、と私は尋ねる。
「どうしてここまで親切に?」
今まで彼女と私との交流は皆無のはずだ。
「私、ずっとアメリ様が気になっていましたの」
ジゼルは少し顔を赤らめた。
「お美しいのに、ダサいというか、空回りしているというか……。自分の手で美しくして差し上げたいな、なんて思っていたんです」
「そ、そうだったの」
「はい! 私と一緒に、ダサさ脱却いたしましょうね!」
彼女は私の両手をしっかりと握った。
「あ、ありがとうございます。ジゼル様」
この子、意外と毒舌……?
話題は先ほどと同様、化粧についてである。
「はっきり言ってほしいの。もちろん怒らないから」
私はその女子生徒―伯爵令嬢のジゼルに言った。
「前までの私のメイク、どうでした?」
「ダサかったです」
即答される。
「ですよね……」
私は頭を抱えた。
そりゃそうだ。
だってあんなド派手なメイクと髪型なんて、一昔前の少女漫画でさえ出てこない。
完全に黒歴史だ。
「どうしてメイクを変えたんですの?」
前世の記憶が呼び覚まされてとはもちろん言えない。
「冷静になってみて、ダサいなと思って……。恥ずかしいわ本当」
「大丈夫ですよアンリ様。誰だって通る道です」
でも私の場合、頑固かつ人の話を聞かないせいで道を踏み外したまま突き進んでいたというわけだ。
「今からでも遅くないです! 今風のメイクと髪型、私がお教えいたしますので」
「本当ですか?」
「ええ。我が家は女性向けの美容やファッションの事業を行っておりますの。流行には詳しいですわ」
「まあ、それは嬉しい。私、あの酷い化粧のせいで肌もボロボロなの。今までまともなメイクをしたことがないから、方法も良くわからないし」
「お肌が気になるなら、まずはスキンケアからですね!」
ジゼルはそう言って、通学鞄の中からいくつかの美容雑誌を取り出す。
「普段から持ち歩いているんですの?」
「ええ。私、ゆくゆくは家の事業を継ぎたいと思っておりまして」
凄い。
今まで私は、どうやって婚約者に振り向いてもらうかということしか考えて来なかったというのに。
この子は私がそうしている間、自分の夢や目標を定めて努力しているのだ。
「先に肌を休ませてあげる必要がありますわね。化粧は保護目的もありますけど、肌が荒れているならやらない方が吉です」
「なるほど」
「普段は保湿性の高いリップやすっぴんパウダーなんかをお使いください」
ジゼルは、雑誌の中で該当する商品を指差す。
「洗顔は朝と夜で2回ずつ。擦ってはいけませんよ? それから敏感肌用の化粧水と乳液、保湿クリーム。余裕があればパックも使ってみてください」
「ありがとうございます、ジゼル様」
あの、と私は尋ねる。
「どうしてここまで親切に?」
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「お美しいのに、ダサいというか、空回りしているというか……。自分の手で美しくして差し上げたいな、なんて思っていたんです」
「そ、そうだったの」
「はい! 私と一緒に、ダサさ脱却いたしましょうね!」
彼女は私の両手をしっかりと握った。
「あ、ありがとうございます。ジゼル様」
この子、意外と毒舌……?
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