前前世、前世で私を殺した婚約者と、今世もまた婚約するそうですが

小倉みち

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第2章

パーティ会場

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 私は侍女に連れられ、城内の大広間に向かう。


 着飾った大人たちが、私の姿を認めるたびに、

「セレナ様、ごきげんよう」

 と言って頭を垂れた。


 私は出来るだけ疲弊した顔を見せないように、

「こんにちは」

 と笑顔で返事をする。


 会場に近づくにつれ、人の数と比例して騒がしさが増す。

 それと共に、私の憂鬱度も高くなっていった。


 大きな扉の前に立ち止まる。

 そこを開ければ、パーティ会場だ。


 重厚な扉の向こう側から、お上品な笑い声とクラシック音楽が微かに聞こえてくる。


「セレナ様、お心の方のご準備はいかがでしょうか?」


 私は大きく深呼吸し、

「ええ、大丈夫よ」

 と、答えた。


 ギー。


 扉が開かれる。

 重苦しい音が、冷たい空気に染み渡った。


 視界いっぱいに、パーティ会場の光景が広がる。

 煌々と光り輝くシャンデリアがいくつも天井ならぶら下がっている。

 真っ白なクロスがかかった円形のテーブルが均等に設置され、その上には大きなローフトビーフやサラダ、オレンジや薄桃などの色とりどりのドリンクサーバー、巨大なショートケーキが置かれていた。

 そのテーブルを取り囲むようにして、同じく様々な色のドレスやスーツを身にまとった裕福そうな大人たちが、楽しげに談笑している。


 私が会場に一歩足を踏み入れると、人々の声は消え失せ、舞台で演奏するオーケストラの音色だけが穏やかに響いていた。


 私はゆっくりと上座の方に向かう。


 私が前に進む度、人々は捌けて1本の大きな道になった。


 上座には、「セレナ」の兄である国王陛下が、つまらなさそうな表情でワインを飲んでいた。


 私は彼の前までやって来て、最上級の礼を行う。


「加減はどうか?」

 陛下が尋ねた。

「お陰様で、すこぶるよろしゅうございます。この度は大変ご迷惑をお掛けいたしました」

「構わぬ。元々お前は病がちだったからな。無理せぬように」

「望外なお心遣いに感謝申し上げます」


 私はもう一度礼をして、陛下の前から去った。


 私の挨拶を見届けて安心したのか、また人々のざわめきが復活する。


「それではセレナ様」


 傍に控えていた大人の男が口を挟んだ。


 侍女はパーティ会場に足を踏み入れることが出来ない。

 だから代わりに、この男が私の世話をするのだろう。


「こちらへ」


 男が私に手を差し出す。

 私はその手を取り、男についていった。



 
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