前前世、前世で私を殺した婚約者と、今世もまた婚約するそうですが

小倉みち

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第2章

2日目

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 私は初日、病室でゆっくりと過ごした。


 あの人たちは私の気絶の理由を話してくれなかったが、私はそこまで馬鹿じゃない。


 少し前に「セレナ」の記憶を消した罪で追放された男が、私に言ったことを思い出す。


 「セレナ」は魔力量が多い。

 異常に。

 だから、自身の魔力に汚染され、早死にする身体だ。


 彼の言ったことが本当なら、考えられる1つの説は、その魔力が大量に漏れてしまったということなのだろう。

 私の身体に走ったバチバチという雷のような何かは、私の魔力が暴発したものだったと考えられる。


 私が目を閉じている間、あの3人はこうも言っていた。


「隣国の王子で良かった」

「ルーカス王子がセレナの心を不安定にさせた」


 なぜ隣国の王子だから良かったという結論に至るのはちっともわからないが、後者の言葉から察するに、私は精神が不安定になると、魔力が漏れ出す仕組みなのかもしれない。


 それがわかったからと言って、だから頑張って精神を安定させようなんていう器用なことを急に出来るわけではない。


 しかし、一応原因がわかったということは、私を安心させた。


 だが、問題はそこではない。


 あの男のことだ。


 かつて、1回目に私を手酷く裏切って殺し、2回目は私に裏切られて私を殺したあの男。


 何という偶然、それとも神の暇つぶし?


 3回目は幸せに生きようと思った矢先に、生まれ変わろうと思った矢先に、転生したあの男にまた出会ってしまったのだ。


 奇しくも、また「王子」として。


 さらに酷いことに、あの男は何も変わっていなかった。

 相変わらず自分中心で、血の繋がっている弟を突き飛ばしていた。


 ふつふつとまた怒りが湧いてきて、私は慌てて深呼吸をする。


 落ち着こう。

 昨日の二の舞になっては駄目だ。


 ともかく、何も変わらないあの男は、公共の場であるにも関わらず、過去のことを蒸し返してきた。


 私は今日、あの2人の接待をしなければならない。


 だが、耐えられるだろうか。


 あの男は、隙を見つけては過去の話をしてきそうな雰囲気であった。

 そんな人間と1日中一緒なら、またあの爆発が起こってしまいそうでとても怖かった。


「セレナ様」


 気が付くと、私が横になっているベッドの隣に、侍女が立っていた。


「お時間です。お加減はいかがでしょうか」

「ええ、大丈夫よ」


 だが、きっと私に拒否権などないのだろう。


 私は波打つ心臓を宥めるため、もう一度深呼吸した。


「行きましょうか」

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