前前世、前世で私を殺した婚約者と、今世もまた婚約するそうですが

小倉みち

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第3章

授業

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 私はクロードの無事な姿を確認し、安堵のため息をついた。

「どうされましたか? セレナ王女」

「い、いえ、なんでもありません」


 私は首を振って否定する。

「本日もよろしくお願いします」

「こちらこそ、よろしくお願いします」


 クロードはそう言って、教科書を開いた。


 あれ?

 ちょっと待って?

 図書館の話は?


 もしかして、授業の後に教えてくれるんだろうか。

「では、教科書の127ページをーー」


 クロードは先週のことなど何もなかったかのような顔つきで、授業を進めていく。


 私はその様子に戸惑いつつも、クロードの指示に従って自分の教科書を開いた。




 結局、その90分あまりの授業の間で、クロードは一言も図書館や地下書庫についての話をして来なかった。

 いつも通りの授業。


 むしろ、いつもよりもクロードの口調が冷たいというか。


 あの話、もしかして忘れてるんじゃないだろうか、この人。

 それとも。


 最悪の事態を考える。


 クロード、誰かに命令された?


 この1週間で、国王の手先の者が彼に接近したのだろうか。


 そうであったならば、詰みだ。


 もしクロードが奴らの話を聞いて、奴らに従うことになれば。


 私は地下書庫には行けないし、私の不審な動きを察知したクロードが、国王に密告するかもしれない。


 何度も言うが、国王が何を考えているかわからない今、私の行動がどのように彼に影響を与えるのか私にはわからない。

 下手すれば、命の危険性だってある。


 だから純朴そうなクロードを使うことにしたのに。


 授業は何事もなかった。

 つつがなく終了し、クロードは、

「お疲れ様でした。セレナ様、これが本日の宿題です」

 と、数ページ分の問題を提示した。

「ありがとうございます」

「今日は少し問が多くなっていますが、セレナ様なら問題なく解けるかと」

「はい」

「それでは、失礼します」


 クロードはそう言って、いつものように私の部屋を去った。


 私は、血の気が引いていくのを感じる。


 ヤバい。

 いや、もしかするとまだ地下書庫の場所を聞き出していないのかも。

 しかしもし最悪の事態だったら。


 ふと、机に目を向ける。

「あれ?」


 教科書が2冊。

 私の分と、先生の分だ。


 忘れていったのだろうか。


 私はなんの気なしにページをパラパラめくり、1箇所だけ角が折れているページを発見した。


 今日、宿題に出されたところだ。


 そのページの余白部分に、小さな字でこう書かれていた。


「この部屋は盗聴されている。深夜2時、図書館にて待つ」

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