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話①
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ユーリは黙りこくったまま、ソファに身を埋めている。
今日に限って、両親は家にいない。
それを狙ったのか、と疑いたくなるくらい、私は彼を信用出来なくなっている。
私はいろいろ悩んだ挙句、彼を客間に案内することに決めた。
いつもの習慣で、つい扉を開けてしまったのであろう使用人を私は責められない。
ユーリを客間に移動させ、私は紅茶を彼に差し出す。
「ありがとう」
「どうも」
私はユーリの向かい側に腰掛けた。
しばし、無言。
空気が重い。
「……久しぶりだな、なんか」
張り詰めた空気を破ったのは、ユーリの方からだった。
「数日前に会ったと思うけど」
「そうだけど、ほら、気分的にそうだろ?」
何がそうなのか。
私はそれに返事をせず、尋ねた。
「それでなんの用? 私、あなたと絶縁すると言ったはずだけど」
「悪かった」
「は?」
ユーリは、深々と頭を下げた。
「何が?」
「全部だ。俺は確かに、ウェンディに酷いことをした」
「例えば?」
「例えば、君の気持ちを考えずにヒメナと恋愛をしたり。君を一方的に責め立てたり。全部俺のせいだ。済まなかった」
「……」
少し拍子抜けした。
パトリックのことかと思って、身構えていた。
「仲直りしよう」
「仲直りしよう?」
「ああ。俺たちは元の良い『婚約者』同士に戻るんだ」
「は?」
「俺たちが仲直りして、ウェンディはヒメナとも仲良くなってほしい。君たちは相性が良いはずだ」
「はあ?」
何言ってんの、こいつ。
「私がヒメナと?」
「ああ。俺たちは良い関係になるはずだ。ずっと今までみたいに過ごそう」
私は、思い切りため息をついた。
今まで積もり積もった憤りをすべて吐き出すぐらいに。
「ウェンディ。俺を、いや、俺たちを許してくれないか?」
「あのさ……」
私はユーリを、脳内お花畑馬鹿野郎を睨みつける。
「あんた、頭おかしいわよ。病院行って来たら?」
今日に限って、両親は家にいない。
それを狙ったのか、と疑いたくなるくらい、私は彼を信用出来なくなっている。
私はいろいろ悩んだ挙句、彼を客間に案内することに決めた。
いつもの習慣で、つい扉を開けてしまったのであろう使用人を私は責められない。
ユーリを客間に移動させ、私は紅茶を彼に差し出す。
「ありがとう」
「どうも」
私はユーリの向かい側に腰掛けた。
しばし、無言。
空気が重い。
「……久しぶりだな、なんか」
張り詰めた空気を破ったのは、ユーリの方からだった。
「数日前に会ったと思うけど」
「そうだけど、ほら、気分的にそうだろ?」
何がそうなのか。
私はそれに返事をせず、尋ねた。
「それでなんの用? 私、あなたと絶縁すると言ったはずだけど」
「悪かった」
「は?」
ユーリは、深々と頭を下げた。
「何が?」
「全部だ。俺は確かに、ウェンディに酷いことをした」
「例えば?」
「例えば、君の気持ちを考えずにヒメナと恋愛をしたり。君を一方的に責め立てたり。全部俺のせいだ。済まなかった」
「……」
少し拍子抜けした。
パトリックのことかと思って、身構えていた。
「仲直りしよう」
「仲直りしよう?」
「ああ。俺たちは元の良い『婚約者』同士に戻るんだ」
「は?」
「俺たちが仲直りして、ウェンディはヒメナとも仲良くなってほしい。君たちは相性が良いはずだ」
「はあ?」
何言ってんの、こいつ。
「私がヒメナと?」
「ああ。俺たちは良い関係になるはずだ。ずっと今までみたいに過ごそう」
私は、思い切りため息をついた。
今まで積もり積もった憤りをすべて吐き出すぐらいに。
「ウェンディ。俺を、いや、俺たちを許してくれないか?」
「あのさ……」
私はユーリを、脳内お花畑馬鹿野郎を睨みつける。
「あんた、頭おかしいわよ。病院行って来たら?」
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