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第1章
都市部へ
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私は記憶を掘り起こしながら、とりあえず中央部へ向かった。
ヴァイオレットの住んでいた屋敷や学園は、宮廷がある中央都市にある。
中央都市は、上位貴族や王族たちが過ごしやすいように特化した場所であるため、全国から様々な品がやって来る非常に栄えているが、光あるところに闇あり、栄えているところには夢を求めて色々な人々がやって来る。
夢破れた人は地元に帰るか都市に残って身を寄せ合って生きるかの二択になり、要は全国屈指の巨大なスラム街が出来ることとなった。
貧しい人がいれば犯罪も増える。
中央都市の騎士団じゃ間に合わない。
だからこそ、「冒険者」という職業も活躍する場であった。
冒険者はギルドと呼ばれる組合に加入し、ギルド証をもらうだけで名乗ることが出来る。
冒険者になればギルドに斡旋してもらった依頼をこなすことで報酬金が入り、また真面目に取り組めば取り組むほど、絶対的に信頼されて地位が上がる。
貴族じゃない一般市民が成り上がるのには、手っ取り早い職業だった。
確か。
私は乙女ゲームのストーリーを思い出す。
この辺で、彼に会ったのよね――。
彼とは、攻略対象の1人である。
ほかの攻略対象が王侯貴族であるのに対し、彼だけ一般出身の冒険者だった。
ヒロインであるデイジーは今回私の元婚約者を選んだようだが(そのせいで私は悪役令嬢として処されることになってしまった)、私は彼のストーリーもクリアしている。
ゲーム内で初めての彼のイベントは、デイジーがまだ学園に入る前のこと、この大通りでギルド登録しにやって来た彼とぶつかってしまう事件だ。
――ということは。
私は推測する。
きっとこの辺に、ギルド協会があるに違いない。
ギルドに入った後は、地図や装備を買おう。
幸い両親から手切れとして渡されたお金がある。
彼らからすればはした金だが、この町で使うには、そこそこの価値があるはずだった。
私はそれっぽい建物を探し、ようやく看板に「ギルド協会」と書かれたものを見つける。
早速中に入ろうと歩みを進めたが、ギルド協会の入り口に人が集まっていた。
どうやら事件が起こっているらしい。
私は人ごみの中に向かい、背伸びして何がどうなっているのか確認しようとした。
「てめぇ! 調子乗ってんじゃねぇよ!」
「しばくぞゴルァ!」
複数人の屈強な男たちが、大声を出して1人の若い男に殴りかかっていく。
「やれ!」
「いいぞ!」
周囲の野次馬たちは、負けじと大声で彼らの争いを煽っていた。
「何があったんですか?」
私は近くにいた女の人に声をかける。
彼女は快く答えてくれた。
「どうも、あの若い男があいつらに喧嘩売ったみたいだよ。全員冒険者みたいだね」
「へぇ」
「困るよねぇ。冒険者なんて柄の悪い人たちばっかりだわ。お嬢ちゃんも、彼らには気を付けるんだね」
「……ありがとうございます」
だんだん雲行きが怪しくなってきた。
ヴァイオレットの住んでいた屋敷や学園は、宮廷がある中央都市にある。
中央都市は、上位貴族や王族たちが過ごしやすいように特化した場所であるため、全国から様々な品がやって来る非常に栄えているが、光あるところに闇あり、栄えているところには夢を求めて色々な人々がやって来る。
夢破れた人は地元に帰るか都市に残って身を寄せ合って生きるかの二択になり、要は全国屈指の巨大なスラム街が出来ることとなった。
貧しい人がいれば犯罪も増える。
中央都市の騎士団じゃ間に合わない。
だからこそ、「冒険者」という職業も活躍する場であった。
冒険者はギルドと呼ばれる組合に加入し、ギルド証をもらうだけで名乗ることが出来る。
冒険者になればギルドに斡旋してもらった依頼をこなすことで報酬金が入り、また真面目に取り組めば取り組むほど、絶対的に信頼されて地位が上がる。
貴族じゃない一般市民が成り上がるのには、手っ取り早い職業だった。
確か。
私は乙女ゲームのストーリーを思い出す。
この辺で、彼に会ったのよね――。
彼とは、攻略対象の1人である。
ほかの攻略対象が王侯貴族であるのに対し、彼だけ一般出身の冒険者だった。
ヒロインであるデイジーは今回私の元婚約者を選んだようだが(そのせいで私は悪役令嬢として処されることになってしまった)、私は彼のストーリーもクリアしている。
ゲーム内で初めての彼のイベントは、デイジーがまだ学園に入る前のこと、この大通りでギルド登録しにやって来た彼とぶつかってしまう事件だ。
――ということは。
私は推測する。
きっとこの辺に、ギルド協会があるに違いない。
ギルドに入った後は、地図や装備を買おう。
幸い両親から手切れとして渡されたお金がある。
彼らからすればはした金だが、この町で使うには、そこそこの価値があるはずだった。
私はそれっぽい建物を探し、ようやく看板に「ギルド協会」と書かれたものを見つける。
早速中に入ろうと歩みを進めたが、ギルド協会の入り口に人が集まっていた。
どうやら事件が起こっているらしい。
私は人ごみの中に向かい、背伸びして何がどうなっているのか確認しようとした。
「てめぇ! 調子乗ってんじゃねぇよ!」
「しばくぞゴルァ!」
複数人の屈強な男たちが、大声を出して1人の若い男に殴りかかっていく。
「やれ!」
「いいぞ!」
周囲の野次馬たちは、負けじと大声で彼らの争いを煽っていた。
「何があったんですか?」
私は近くにいた女の人に声をかける。
彼女は快く答えてくれた。
「どうも、あの若い男があいつらに喧嘩売ったみたいだよ。全員冒険者みたいだね」
「へぇ」
「困るよねぇ。冒険者なんて柄の悪い人たちばっかりだわ。お嬢ちゃんも、彼らには気を付けるんだね」
「……ありがとうございます」
だんだん雲行きが怪しくなってきた。
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