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第3章

相対

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「ひっ」


 私は悲鳴をあげ、後ろに引き下がる。

 ゼロの身体にぶつかり、私はその場でへたり込んだ。


 だ、駄目だ……。

 立てない。

 どうしよう。


 今すぐこの場を逃げ出したいが、前と後ろに大男が立ち塞がっており、私は身動きが取れない。

 そればかりか、私は完全に腰を抜かしてしまっていた。


 もう詰みだ。


 どうしよう。

 死んじゃう。

 殺される。

 こんなところで、攻略対象の手によってヴァイオレットは命を落とすんだわ。


「「……」」


 ゼロとシルヴェスターは、無言でお互いの顔を見やっている。

 お互い無表情だったが、視線はピクリとも動かさない。


 目を逸らせば負けというくらいの、視線の攻防戦を繰り広げている。


 私はと言えば、ゼロの足元でひたすら怯えていた。


 本当にどうしよう。

 ゼロは強いから、どうにかしてくれるかもしれないけど。


 でも、もしシルヴェスターの方が強かったら。


 シルヴェスターの具体的な戦闘能力はファンブックに記載されていなかったけれど、少なくとも反乱軍のNo.2になれるほどの実力はあるはず。


 反対に、最強種族のヴァンパイア。


 だが彼は、人間である私とパーシーに合わせて行動するため、最近寝不足気味だ。


 ……待って。

 もしかすると、ヤバいかも。


 ゼロが負けちゃったら、私は一体どうなるの?

 この場で殺される?


「「……」」


 2人は、お互いスッと歩み寄る。

 視線は逸らさないまま。

 お互いをじっと見据えたまま。


 私は耐え切れなくなり、軽く顔を両手で覆う。


 ああ、もう駄目だ。

 もう無理だ。


 今にも、路地裏で暴力沙汰が繰り広げられると思った、そのとき――。


「お前、もしかして」


 ゼロが言った。

「シルヴェスターか?」


 ……えっ。

 知り合い?

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