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怒り

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 むかつく。

 死ぬほどむかつく。


 ……あー、もう。

 本当に。

 なんなのよ、あいつ!


 私は怒り狂いながら、生徒会室のすぐ外の廊下を歩く。


 確かに、思う。

 確かにあの男の意見は正しい。


 遺憾だけど、心底遺憾だけど、向こうの意見の方が正しい気がするっていうのも100歩譲って納得しよう。


 でも、なんなのよあの言い方。


 1から100まで全部丁寧に説明してくる、あの感じ。

 自分よりはるかに格下の相手に対し、物事を教え込んでいるような、あの感じ。


 めちゃくちゃ腹立つ。


 
 まるで私が間抜けみたいじゃないの。


 あのいけ好かない男――ユージーン公爵子息は、この学園の生徒会長である。

 生徒会長とはその名の通り、この学園の生徒たちのトップに君臨し、生徒を生徒の目線から導き諭す存在。


 つまり、この学園を国で例えるならば、彼は国王なわけだ。


 当然独裁的な権限を持っているわけではないものの、実質的に彼は生徒会長として、与えられた自治権を否応なく発揮している。


 そして、私は生徒副会長――。


 奴の部下だ。


 なぜ、こんなにも完璧で美しい私が生徒会長に就任しなかったのか。

 なぜ、この腹立たしい男に私が引けを取ったのか。


 まず大前提として、私は生徒会総選挙にて、ユージーンに僅差で勝った。

 僅差ではあったが、ともかく私の勝ちだ。

 ユージーンよりも私は票をたくさん手に入れた。


 しかし、前生徒会長、つまり私たちの先輩の鶴の一声で、私ではなくユージーンが生徒会長に、私が生徒副会長という結果に。


 尊敬している前生徒会長のご意向だから仕方がないという気持ちもありつつ、なんで私がそうじゃないのかという具体的な説明をしてくれなかった先輩に腹立たしさを覚えつつ、副会長という立場に甘んじている。


 正直そののことでイライラするのは私のポリシーに反するが、それでもやはりあの上から目線野郎の下で働いているというこの状況に、かなりの屈辱を感じている。
 
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