身に覚えのない浮気が原因で婚約破棄されました

浅はか

　私がパパッと適当に作ったこの作戦は、割とうまくいっていた。


　まあ殿下たちと私たちじゃ、どちらが「被害者」か火を見るよりも明らかではある。


　私たちの下手くそな芝居が功を成し、生徒や教師たちはみんな、

「私は殿下に、ユージーンはリリオーネに裏切られた」

　という噂を信じるようになっていた。


　しかも、その噂に拍車をかけたのが、フレデリック殿下とリリオーネの態度である。


　彼らはあの日以来、ずっと一緒にいた。

　腕を組んだり、日中堂々とキスをしたり、もうやりたい放題である。


　一応私はまだ殿下の婚約者だ。

　完全に関係が破綻しているとはいえ、正式な婚約破棄の通知は陛下から届いていない。


　それなのにもう、あの呼び出しの件ですべてが終了した、勝利は自分たちの手にあると言わんばかりに、彼らは公衆の面前でイチャついていた。


　フレデリック殿下は、この世のすべての欠点を寄せ集めたみたいな性格をしているが。


　今回やいつもの事業失敗に限って言えば、彼は思いつきで行動し過ぎている。

　メリットデメリットを考えずに、何もかも適当に考え、適当に財を消耗している。


　非常に、浅はか極まりない。


　さらに致命的なのは、すべての行動が自分本位であることだ。


　自分が王子であるのを笠に着て、彼は市場調査を全くしない。

「王子の自分がするのだから、みんな食いつくだろう」

「王子の言うことは、みんな信じるだろう」

　そんなふうに高をくくり、調子に乗った結果がこれだ。


　彼らのアホっぷりにはドン引きしているけれど、この機に乗じて色々出来るのは、とても有難い。


　彼らの行動が、

「殿下とリリオーネが付き合っている」

　ということの、何よりの証明だった。