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掲示板
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「最低ですわ」
「……違う」
ピートは蚊のようなか細い声を上げた。
「お、俺じゃない。俺じゃ」
「へえ」
先ほどの女子生徒が冷え切った声色で返した。
「こんなに証拠があるのに、ですか?」
「違う。これは……。お、俺の」
「俺の、なんですか?」
「俺の、俺の従兄弟なんだ」
「は?」
女子生徒たちは、互いを見やる。
「俺の従兄弟、俺に激似なんだ。だけど、本当に奔放っていうかなんて言うか。だからよく勘違いされることがあって」
「あら」
私は言う。
「ピートって、従兄弟いたっけ?」
「い、いる。いるんだ」
「いないわよ」
凛とした綺麗な声が、廊下に響き渡る。
私たちは振り返った。
カトリーヌ王女だ。
「私は一応王族だから、貴族のことは全部把握しているわ」
王女の登場に、生徒たちはざわつく。
普段生徒たちは、王族を見る機会がない。
同じ学園に通っていると言っても、彼女と通常の貴族の子息子女は同じ教室になることはなく、またカトリーヌ王女は基本的に護衛に囲まれて、なるべく人の往来していない時間帯を利用して登校する。
それは彼女の身を守るためという理由なのだが、それゆえに普段彼女を見かけることのない生徒たちは驚いているのだ。
「カ、カトリーヌ王女……」
「あなたには兄弟姉妹もいないし、従兄弟もいない。だから、私の親友であるミアの婚約者になったのよ」
兄弟がいなければ、後継ぎ問題で揉めることはない。
彼が私の婚約者に選ばれたのは、ちょうど良い家柄であると同時に、聖女である私が将来揉め事に巻き込まれないようにしようという教会や王族からの優しさだった。
「実は、俺の叔父上に隠し子が」
「隠し子がいたとして、仮にあなたと同い年だとして、この学園の制服を着た写真があるのはどうしてかしら?」
カトリーヌ王女は掲示板に近づき、バンバンとそれを手のひらで叩いた。
薄いガラスがビリビリと音を立てる。
「俺の従兄弟が、俺の制服を勝手に」
「勝手に着た挙句、この学園に忍び込んで女子生徒とイチャついてたと言いたいのかしら」
「そ、そうです」
私は呆れかえった。
どうしてそんな馬鹿みたいな言い訳が通じると思ったのだろうか。
カトリーヌ王女も私と同じく呆れたような表情を浮かべている。
「証拠はどこにあるの?」
「すぐにお持ちいたします」
投げやりになっているのか、ピートは大口を叩いた。
「わかったわ」
カトリーヌ王女は言う。
「明日の朝までに、あなたの従兄弟と、彼が学園に忍び込んでわざわざあなたのふりをして女子生徒たちに手を出したという証拠を持ってきなさい。もし持ってこなければ、このすべての写真に写ったすべての男子生徒があなただということになるわね――それで良い? ミア」
私は下を向きながら頷く。
「それでは、みんな各々の教室に行きなさい。授業が始まるわよ」
王女の一声により、野次馬たちは次々と掲示板から離れていった。
「……違う」
ピートは蚊のようなか細い声を上げた。
「お、俺じゃない。俺じゃ」
「へえ」
先ほどの女子生徒が冷え切った声色で返した。
「こんなに証拠があるのに、ですか?」
「違う。これは……。お、俺の」
「俺の、なんですか?」
「俺の、俺の従兄弟なんだ」
「は?」
女子生徒たちは、互いを見やる。
「俺の従兄弟、俺に激似なんだ。だけど、本当に奔放っていうかなんて言うか。だからよく勘違いされることがあって」
「あら」
私は言う。
「ピートって、従兄弟いたっけ?」
「い、いる。いるんだ」
「いないわよ」
凛とした綺麗な声が、廊下に響き渡る。
私たちは振り返った。
カトリーヌ王女だ。
「私は一応王族だから、貴族のことは全部把握しているわ」
王女の登場に、生徒たちはざわつく。
普段生徒たちは、王族を見る機会がない。
同じ学園に通っていると言っても、彼女と通常の貴族の子息子女は同じ教室になることはなく、またカトリーヌ王女は基本的に護衛に囲まれて、なるべく人の往来していない時間帯を利用して登校する。
それは彼女の身を守るためという理由なのだが、それゆえに普段彼女を見かけることのない生徒たちは驚いているのだ。
「カ、カトリーヌ王女……」
「あなたには兄弟姉妹もいないし、従兄弟もいない。だから、私の親友であるミアの婚約者になったのよ」
兄弟がいなければ、後継ぎ問題で揉めることはない。
彼が私の婚約者に選ばれたのは、ちょうど良い家柄であると同時に、聖女である私が将来揉め事に巻き込まれないようにしようという教会や王族からの優しさだった。
「実は、俺の叔父上に隠し子が」
「隠し子がいたとして、仮にあなたと同い年だとして、この学園の制服を着た写真があるのはどうしてかしら?」
カトリーヌ王女は掲示板に近づき、バンバンとそれを手のひらで叩いた。
薄いガラスがビリビリと音を立てる。
「俺の従兄弟が、俺の制服を勝手に」
「勝手に着た挙句、この学園に忍び込んで女子生徒とイチャついてたと言いたいのかしら」
「そ、そうです」
私は呆れかえった。
どうしてそんな馬鹿みたいな言い訳が通じると思ったのだろうか。
カトリーヌ王女も私と同じく呆れたような表情を浮かべている。
「証拠はどこにあるの?」
「すぐにお持ちいたします」
投げやりになっているのか、ピートは大口を叩いた。
「わかったわ」
カトリーヌ王女は言う。
「明日の朝までに、あなたの従兄弟と、彼が学園に忍び込んでわざわざあなたのふりをして女子生徒たちに手を出したという証拠を持ってきなさい。もし持ってこなければ、このすべての写真に写ったすべての男子生徒があなただということになるわね――それで良い? ミア」
私は下を向きながら頷く。
「それでは、みんな各々の教室に行きなさい。授業が始まるわよ」
王女の一声により、野次馬たちは次々と掲示板から離れていった。
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