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第3章

友達

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 私はなんとなく、行けるんじゃないかという気になってきた。


 いや、行ける気がする。

 行けるんじゃないか?

 
 私は、私と同じく令嬢の話を真剣な顔で聞いているアンの顔を盗み見た。


 彼女は私の視線に気づかないまま、ずっと男爵令嬢カミラの話を聞いていた。


 行けるか?

 行ってみる?


 ……いや、でも。

 怖いなあ、やっぱり。


 この17年間培ってきた私の性格が、すべてを邪魔している。


 ――だけど。

 いや、やろう。


 私は決意する。


 アンと友達になるんだ。


 せっかく頑張って話しかけたんだから。


 それに、結構良い感じな気がするというか。

 前までは、令嬢に話しかけると、

「は?」

 みたいな顔をされてたけど、アンの対応を察するに、好感度上がってんじゃないの?


「あ、あの」

「何?」


 アンは振り返り、私の顔を凝視する。

「どうしたの?」

「あ、あのさ……」


 私は深呼吸し、頭を全力で下げた。

「私と、友達になってください!」


 よし、これで友達が出来るぞ。


――でも。

「……えっ」


 アンは、すべてを絞り出したあとの残りかすみたいな声を出した。


 ……あれ?

 ミスった?


「……あなたねぇ」

 顔を上げた私に、冷たい視線を向ける彼女。

「今、そのタイミングじゃないでしょ?」

「えっ」

「今は、テレサとかいう頭おかしい令嬢をどうにかするのが先決じゃない」

「……あっ。そっか」


 間違っちゃったのか。

 タイミング。


 しょぼんと落ち込む私。


 プリプリするアンに、それを見てニヤニヤと笑う取り巻きたち。

「良かったですね、アン様」

「どういうこと?」

「だってアン様も、セレーナ様のこと――」

「ちょっと、馬鹿! なんで今言うのよ!?」


 取り巻きたちのいじりに、アンは顔を真っ赤にして怒った。


 彼女、実はツンデレなのかもしれない。
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