【本編完結】キミの記憶が戻るまで

こうらい ゆあ

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side-朝陽  4.

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「いらっしゃいませ~。三名様ですね。こちらのお席にどうぞ~」
「パスタランチAセットとCセット、珈琲とミルクティーでお間違いないでしょうか?」
「ご注文はお決まりですか?」
 オープン初日ということもあり、次から次へとお客様が来店してくる。
 楽し気な話声や、穏やかなBGM、珈琲の芳しい香りと焼きたてパンの良い匂いが鼻をくすぐる。
 カウンターのガラスケースには、色とりどりのケーキが並び、客席の笑い声が響き合っていた。
 
 オレと司馬は、裏の調理のサポートに回りながら、できるだけスムーズに回転できるよう、色々な場所を駆け回っている。
 厨房の熱気が頬に触れ、フライパンの油がはぜる音。スタッフの慌ただしい足音が、床のタイルに響く。
「竹内、クマケーキあと五個だから予備の準備を頼む」
「OK!あと、チーズケーキとチョコのやつ、あれも多めに出しとくわ。ランチ用のスープも減って来たし準備伝えとく」
 司馬の声が厨房の喧騒を切り裂き、オレは冷蔵庫の扉を開け、ケーキのストックを急いで確認する。
 冷たい空気が手に触れ、ふと琥太郎がオレの働いている店舗に来たときのことを思い出す。
『竹内が作った飯が食いたい。なぁ、俺のまかないも一緒に作ってくれる?』
 バックヤードだからスタッフがいないのを良いことに、こっそり甘えてきた彼。
 オレは誰かに見られるんじゃないかってドキドキが止まらなかったっけ……
 その後、簡単なサンドイッチを作って、一緒に休憩をして……
 ダメだ。今は……思い出さなくていい。
 集中集中。ランチのピークに間に合うようにコレも準備しとかないと……

 オレは今朝準備しておいたスープをトレイに並べる。
 日付を書いたシールをラップの上に貼り、サンドイッチ用の具材も用意する。
「竹内……サンキュ。それ出しといてって言おうと思ったところだった」
 キッチンから小走りでやって来た司馬が、ふわっと笑みを浮かべ、オレが持っていた食材を受け取る。
「そろそろだと思った。他は?なんか優先すんのある?」
 オレもニッと笑みを浮かべ、司馬に確認を取る。
 司馬とは……最初の頃は、同じ店舗で働いてたから、なんとなく一番お互いが欲しいやつとか理解しあってる気がする。
「こっちは大丈夫。ホールがちょっと騒ついてるから、ヘルプ入ってやって」
 オレは司馬の言葉に小さく頷き、その場を後にする。
 
 あの夜、オレは司馬に告白されたものの、酒を飲んで誤魔化してしまった。
 司馬が「無理して飲むなよ」って忠告をくれたのに、聞かずに散々飲み散らかして……
 結局、酔い潰れたオレを部屋まで送ってくれたのも司馬だ。
 酔っぱらって、泣き散らかして、散々愚痴をこぼしていたらしい。
「オレのこと……好きって、言ってたくせに……。オレのこと、忘れんなよ……。オレ……コタのなんだったの?」
 自分でもなんとなく覚えてる。
 オレのことを好きだって言ってくれた司馬に、彼の愚痴をめちゃくちゃ言った。
 泣きながら「思い出してよ」って、言ったのを覚えてる。
 なのに、司馬は何も言わずにオレの介抱をしてくれた。
 やましいこともせず、ただオレを部屋まで送ってくれて、鍵までちゃんと閉めて帰ってくれた。
 居酒屋の薄暗い照明の下、司馬が何度もオレの涙を拭ってくれた。
 フラフラで歩けないオレを、司馬は肩を貸してくれて、マンションまで送ってくれた。
 司馬のスッキリしたミント系の香りが、ぼんやりと頭に残っている。

 翌朝、司馬に会って早々、オレは土下座する勢いで昨晩の失態を謝罪した。
 司馬はオレの謝る姿を見て、腹を抱えながら笑ってくれて、ポンポンって頭を撫でてくれた。
「スッキリした顔してんじゃん。良く寝たならいいよ。ただ、俺の気持ちは昨日伝えたとおりだから……」
 耳元で囁かれる低く甘い声。
「ほら、気持ち切り替えていこうぜ!オープンまで時間もないし、頑張ろうな」
 ニカッと明るい笑顔が、朝の光の中で柔らかく輝く。

 司馬への気持ちは、複雑だった。
 同期であり、良きライバルであり、信頼できる仲間。
 あと、一番仲の良い友だちだと思っていた。
 それに……オレはまだ、琥太郎への気持ちをそう簡単に切り捨てることなんてできない。
 そんなオレの気持ちを汲み取ってか、司馬は今は仕事に集中できるように、今までと同じ態度で接してくれる。
 そんな、司馬のさりげない気遣いが、胸の奥に温かいものを灯してくれる。
 でも、ホントにまだ信じられない。
 だって、司馬みたいな仕事もできて、人当たりも愛想も良くて、ムカつくけど爽やかなイケメンだし……
 スタッフの子が、司馬に恋人はいるのか?って話をしているのも聞いたことある。
 みんなに頼りにされてて、憧れの対象になってる人物が……オレなんかを?
 
 カウンター越しに、司馬がスタッフに指示を出す姿を見ると、彼の笑顔が客席の女性客を引きつける。
 不意に司馬と視線が合った瞬間、ニッと笑みを向けられ、心臓が痛い。
『ひよの笑顔も、泣き顔も、ぜ~んぶ俺だけのモノにしたい』
 カウンター越しに見つめられながら言われた台詞。
 あの時はそんな恥ずかしいこと、よく言えるよなぁ~って思ってた。
 でも、彼の言葉が嬉しくて……でも、恥ずかしくて……「バカ」って言い返すことしかできなかった。
 
 オレは、どこにでもいる平凡顔だって自覚はしている。
 可愛くもなければ、カッコよくもない。
 身長も平均より少し小さいし、だからといって小柄なわけでもない。
 ホントに、どこにでもいる、目立たないヤツ。
 自慢できる特技なんてなにもなくて……得意なのは料理くらい。
 それも、人並みにできるだけの趣味程度。
 仕事柄、調理担当はしているけど、それは店のレシピがあるお陰だし……
 オレが誰かに好かれる魅力なんて……何にもないんだよな……

 厨房の片隅で、包丁を手に野菜を刻む音が響く。
 だが、心の奥では、最後に見た彼の笑顔を思い出していた。
『戻って来たら、毎日ひよの料理を食えるんだな。ホント、早く一緒になりたい』
 嬉しそうに笑いながら、オレの作った料理を食べてくれる彼。
 あんな日々が、ずっと続くと……信じていたのに、な……

◇ ◇ ◇

「みんな、今日はお疲れ様~!」
 二十時を回り、やっと初日のオープンを乗り切ることが出来た。
 小さなトラブルはあったものの、大きなトラブルはなく、概ね順調だったと言えるだろう。
 店内の照明が少し落とされ、客席の喧騒が静まる。
 カウンターに残ったコーヒーカップが、蛍光灯の光を反射してキラキラと輝いていた。
 
「竹内さん!今日は本当にありがとうございました!」
 副店長をしている彼女が、勢いよく頭を下げてきた。
 彼女の満面の笑顔に、疲れていたスタッフにも笑顔が伝染する。
 汗で額に張り付いた髪を、彼女が無造作に払う姿に、初日の達成感が滲んでいた。
「あ、お疲れ様。すっごく頑張ってたね」
 彼女の笑顔につられて、オレも笑みが零れる。
「開店前は不安と緊張でガッチガチになってましたが、ランチタイムのピークで、訳わかんなくなってきて、逆に冷静になれました」
 清々しい笑顔で話す彼女につい苦笑が混じる。
「わかるわ~。ピーク時ってどんだけ働いててもこうなるから、こういう時に冷静になれるのは偉い!」
 オレが彼女を褒めると、キラキラと目を輝かせて見つめてきた。
「冷静になれたのは竹内さんのお陰なんです!この前、最初はみんな失敗するって言ってもらえて、もうやってやる~!って思えたから!」
 胸の前で拳を作り、ピコピコと手を振る姿が可愛くて、無意識に笑みが零れた。

「そっか。お役に立てて幸栄です♪」
 パチンッとカッコよくウィンクをしたつもりだけど、今日も失敗して両目を閉じてしまう。
 そんなオレを見て、彼女も楽しそうに笑ってくれた。
 別のスタッフの子に呼ばれた彼女は、ペコリと頭を下げたあと、元気よく去って行った。
 彼女の背中を見送りながら、オレはひとり、厨房の奥でこっそりと片付けをする。
 ホールやバックヤードから聞こえてくる楽し気な声に、ホッと息を付く。 
「はぁ~、つっかれたなぁ~。でも、まだ明日もこんな感じだろうから、ちょっとだけでも準備しとかなきゃな……」
 グイ―っと腕を天井に伸ばして、ガチガチに凝り固まった身体を解す。
 身体の節々から関節がパキッポキッと子気味の良い音が聴こえ、身体が軋むのがわかる。
 汗で湿ったシャツが肌に張り付いて気持ち悪い。
 こういう時は、さっさとシャワーに入って、速攻ベッドで寝るのが一番だよなぁ~
 
「竹内、お疲れさん」
 不意に背後からオレの頭をポンポンと撫でられ、不満気な顔で振り返る。
「お疲れ、司馬。って、自分は身長高いからって頭ポンポンすんなよ!」
 司馬の手をバシッとワザと叩き落とし、唇を尖らせて文句を言う。
「いやぁ~、丸くて可愛い頭があったから、つい……な♪」
 パチンッとウィンクをする司馬は、オレと違って様になっていた。
「誰が丸くて可愛い頭だ!くそぉ……オレだってあと10cm……いや、5cmでもあればモテたかもしれないのに……」
 ガックリと肩を落とすオレを見て、肩を震わせている司馬の脇腹を小突く。
「いてっ……わりぃわりぃ。んな身長がなくても、竹内は結構人気あるんだぜ?お前が気付いてないだけだって。俺もそのひとりだし?」
 冗談っぽく言ってくる司馬の言葉に顔が熱くなる。
 ……確かに、オレは今、司馬の返事を保留してる状態だもんな……

「司馬、えっと……」
「んなことより、なんか手伝うことある?明日の準備、してたんだろ?」
 オレの言葉を遮り、仕事の話を振ってきた司馬に、オレは応える。
 発注はここのメンバーにしてもらう方がいいから、オレたちができるのはスープのストックを先に出しておいたり、ケーキの数の確認。
 あと、汚れものの後片付けくらいだ。

「久々に司馬と一緒に働いたけど、流石だよな~。お前のお陰で大きなトラブルも回避できたし、みんな落ち着いて働けてたと思う。さっすが、全国で一番忙しい店舗の店長様をしてるだけあるな!」
 うんうん。と勝手に納得しながら頷いていると、プッと噴き出す司馬がいた。
「いやいや、名サポーターの竹内が居てくれたからだよ。竹内のサポートがないと、こんな上手くはいかなかったよ」
 いつも通りのように振る舞ってくれる司馬に、オレは心から感謝する。
 司馬の頬がいつもよりほんの少しだけ赤く染まっている気がするのは、多分、ここの明かりのせいだと思う。
 バカな話をしながらも、やることはやって、あとはもう帰るだけだ。
 明日も朝から忙しいだろうから、今は少しでも早く寝てしまいたい。
「なぁ、俺はあと二日で向こうに戻るけど、竹内は月末まで居るんだろ?櫻井さんの様子は俺が代わりに見て来てやるよ。だから……無理だけはすんなよ?」
 司馬が誰にも聞萌えないようにコッソリ耳元で囁く。
 驚いて目を丸く見開くオレを、司馬は軽くデコピンしてきた。
「安心しろって。目覚めた直後で動揺してただけだろうから、俺が竹内をもらうかもよ?って言ったら、怒って飛んでくるかもな」
 ニッと笑みを浮かべて言ってくれる司馬に、オレは感謝することしかできない。
 
 オレは……自分で確認する勇気がない。
 今、彼に会う勇気も出ない。
 彼に振られるのが、またあの冷たい目で見られるのが、怖くてしかたない。
 胸の奥に黒い塊が広がって、喉が詰まる。
 琥太郎の冷たい視線を思い出すだけで、身体が震えて、意識が遠くなるのを感じる。
 本当は、自分で確認しに行かなきゃいけないのに……
 自分で、終わらせにいかなきゃいけないのに……
 
 俺の、そんな弱い気持ちがバレているのか、司馬の目は真剣だけど優しくて……
 つい、頼りたくなってしまった。
「ごめん、ありがとう」と小さく呟くと、黙ってまたポンポンと優しく頭を撫でてくれた。
 司馬の手がオレの髪を撫でる温かい感触に、胸がいっぱいになって……
 涙がこみ上げるのを必死で堪えるので精一杯だった。
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