オレとアイツの関係に名前なんていらない

こうらい ゆあ

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 海斗カイトとは大学が一緒だっただけ。
 学科も違えば専攻も違う。
 人付き合いが苦手というか、誰かと一緒にいるのが好きじゃないオレにとって、海斗カイトは絶対に相容れない部類の人間だった。
 
 高校でも友だちと呼べる人間は誰ひとりいなかった。
 というか、【友だち】なんて作る気がサラサラなかった。
 でも、厄介なことに高校はひとりで居ると色々と目を付けられる。
 イジメを気にする教師やお節介焼きのクラスメイトに散々付きまとわれる始末。
 オレは、好きでひとりでいるんだからほっといて欲しいのに……

 だから、 友だちなんて作る気がサラサラないオレにとって、大学は色々と都合が良かった。
 ひとり離れた場所で講義を受けていようが、昼食を食べていようが違和感なんてない。
 最低限の会話さえできていれば、日常生活に不便なんて感じない。
 誰にも認識されず、好きにひとりで居ることができる。
 大学なんて、学びたいことが学べればどうでもいいと思える場所だった。
 
 そんな大学の講義で、嫌でも目に付くグループがあった。
 教室の後ろ側で、講義中でも賑やかにしている連中がいた。
 できるだけそいつらと鉢合わせしないように気を付けていたものの、どうしても受けたい講義とそのグループが重なってしまう時がある。
 教室に足を踏み入れた瞬間、アイツ等を目にする度、最悪だと思っていた。
 文句を言ってやりたいけど、多勢に無勢、言ったところで改善なんてされないだろう……
 教授すら注意をしないから、毎回迷惑だと言いたげに溜息を吐くのがオレにできる唯一の抵抗だった。

 そのグループっていうのが、海斗カイトの居るグループだった。
 オレの人生であんな派手なグループの人間と付き合うことも、話すこともないって思っていたのに……
 なんでこんな関係になっちまったんだろうな……

 ◇ ◇ ◇

 旧校舎の裏側に位置する中庭。
 大学の教授にすら忘れられたんじゃいかってくらい、ほぼ人が来ることのない場所。
 研究棟や学科棟からも離れているからか、人があまり近寄らない中庭。
 ラウンジや購買部からも遠いから、ココで休憩している人は滅多にいない。
 そんな人気のない場所の中でも、大きな樟の脇に設置されたベンチがオレのお気に入りの場所だ。
 天気の良い日は、この木がいい感じの日陰を作ってくれるし、座っていても人目に付きにくい。
 木々や花壇も綺麗に整備されており、四季折々の花を愛でることができる場所。
 誰も来ないことをちょっとだけ勿体ないと思いつつ、オレにとっては都合のいい場所だった。
 誰かに声を掛けられることも、見つかることもない場所だからこそ、ゆっくりくつろぐことができる。

 あの日も、このベンチにゆったりと座り、少し早めの昼食をいつも通りで楽しんでいた。
 前日のスーパーで買っておいた半額のサンドイッチを食べようとした瞬間、何やら中庭の真ん中で騒いでいる声が聞こえる。
 ギャーキィーっと、甲高い女性の声で何か喚いている声がする。

「誰だよ、こんな時間に痴話喧嘩してるバカは……」
 お気に入りの穴場で、人がゆったりと昼食を楽しもうとしているのに邪魔すんなよ。
 しかも、今日はずっと食べてみたかったちょっとお高めのカツサンドなんだからな。
 いつもだったら高すぎて手が出ないけど、半額で手に入れることができた品だ。
 午後からの授業も一コマ空いてるから、時間も気にせず、今日はゆっくりサンドイッチを堪能して、その後はまったり昼寝をしようって魂胆だったのに……
「うっせぇなぁ……」
 ついポツリと本音が口から洩れてしまう。
 せっかくの楽しみを前に、気分が悪くなるも気を取り直してサンドイッチに食らいつこうとした瞬間、ガシャンッ!と大きな音を立てて何かがオレの方に倒れて来た。

 「いってぇ~!はぁ~……ホント、なんなんだよ……」
 オレの膝の上に太陽の陽射しを受けてキラキラと光る髪。
 色白の肌に、綺麗な顔立ち。
 光の加減なのか、はちみつ色の目が緑色に見えた気がする。
「あ~、せっかく飯食ってたのに邪魔しちまってごめんなぁ~」
 目が合った瞬間、へらっと薄情そうな笑みを浮かべながら全く悪びれた様子もなく謝罪の言葉を口にする。
「はぁ~……ホント、お前最低だな。もう、お前はいいや。どっか行けよ」
 さっきまでキーキー声で騒いでいた彼女に向かって、冷たく言い放つ白金頭の男。
 よく見ると目鼻立ちのしっかりしたイケメンだった。
 「は?サイテーなのはどっちよ!海斗カイト!ちょっと!ちゃんと説明しなさいよ!」
 真っ赤な顔で怒り狂う彼女を前に、めんどくさそうに小指で耳掃除を始めやがる薄情野郎。
 オレとは絶対相容れない奴のいきなりの登場に、オレはどうすることもできず固まることしかできなかった。

 さっきまで彼女のことを散々なくらい文句を言っていたくせに、オレの顔を見た瞬間、驚いた顔をしていた。
 
 「ホントごめんなぁ~。って、あんたよく見たら可愛い顔してんね」
 いきなりオレの頬を撫で、親指の腹で下唇をゆっくりと撫でられる。
「うん。顔は結構俺好みかも。驚いて固まってるのもちょっと可愛いし、今日からコイツにするわ」
 いきなり顔を触られたことに目を真ん丸く見開いていると、綺麗な顔が近付いてくる。
「あんた、今から俺とイイ事しない?あ、お前はもうどうでもいいから。勝手に好きにすれば?」
オレの意思を完全無視した状態で、2人は勝手に言い争っている。

 あ、良く見たらコイツの眼って、なんか薄っすら緑がかった茶色なんだ。
 こんな目の色のヤツ珍しいよなぁ……
 あ、睫毛なっが!女子かよ。
 ってか、唇柔らかい。
 いや、キスなんてしたことないから、コレが普通なのかもしれないけど……
 あ~、なんかいい匂いする。
 結構オレ好みの香りかも……
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