オレとアイツの関係に名前なんていらない

こうらい ゆあ

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 友人からの誘いをやんわりと断り、念の為に冷えピタや解熱剤、レトルトのお粥、アイスなどを買って、早足に千鶴の家に向かう。
 今までに何度も訪れたことのあるマンションの一室。
 千鶴に秘密で勝手に合鍵を作って、何かあればコッソリ部屋に入るつもりだった。
 まぁ、基本コレを使うことはないんだけど……
 だって、毎回ちゃんと千鶴が俺のことを待っててくれるし。
 
 カチャリと静かに鍵を開け、部屋に入る。
 多分千鶴は眠っているんだと思う。
 ちょっとだけ神経質な千鶴は、こういう物音が聞こえたら飛んでくるから。
 部屋の中は、千鶴の性格を映しているように簡素でシンプルなモノだ。
 ローテーブルとひとり用の背もたれ付きの座椅子。
 シングルサイズのベッドと小さめのチェストが1つだけ。
 大学のノートや教科書などは置いてあるけど、それも課題で持ち帰った最低限のモノだけ。
 多分、大半は大学のロッカーに入れているのだろう。
 趣味らしきものは一切ない。
 本当にこの4年、ここで生活しているのか疑わしくなってくる。
 
 キッチンに置かれている食器も、100均で買ったような白いお皿が数枚とコップが1個だけ。
 どこにでもありそうなモノしかこの部屋には置いていない。
 前に俺用のコップを置いて欲しいって嘆願したけど、瞬殺で拒否されてしまった。
 付き合ってかれこれ3年以上経つのに、普段の千鶴の反応はどこか素っ気ない。
 最初は恥ずかしがってるのかと思ったけど、そういう性格ならしかたないかと、今では諦めてる。
 まぁ、ベッドの上では結構甘えただからいいんだけどな!

 でもせめて灰皿くらいは置いて欲しい……
 何回頼み込んでも、それだけは絶対に許してくれなかった。
 千鶴が煙草嫌いだからしかたないっちゃしかたないんだけど……
 こっそり俺用の食器とかアクセサリーを置いて帰ったら、翌日すごい剣幕で突き返してきた。
 アレはちょっとだけ傷ついた。

 誕生日とかクリスマスの時にプレゼントをあげたけど、気に入らなかったのか、その場で突き返してくるし……
 ちぃの好みを考えるとやっぱりシンプルなのがいいのかな?
 できればお揃いとかしたいなぁ~って、俺は思ってるんだけど……
 
 ここに来たことは何度もあるけど、泊めて貰えたことだけは1度もないな……
 酔い潰れて終電なくした時ですら泊めてもくれなかった。
 千鶴は歩いて帰れる場所だったのに……
 しかたないから、千鶴を連れて朝までホテルで楽しんだけど……
 あの時のちぃも可愛かったなぁ~。めっちゃ可愛く泣くから、ついイジメっちゃったし……
 後でめっちゃ怒られたけど……

 時々、本当に俺たちは付き合っているのか不安になる時はある。
 千鶴から『好き』だって言って貰ったことは1度もないし……
 それでもこうやって身体の関係はあるし、セックスの時は素直に甘えて縋ってきてくれるし……
 自分から乗ってきて腰を振るときだってある。
 うん、めっちゃ可愛い。抱き潰さないように気をつけてる俺を褒めて欲しい。
 
 だから……だから、俺用のコップくらい置いてくれてもいいだろ?って、内心寂しく思っている。

 ただ、この部屋の家具や食器を見ると、千鶴にとってソレは重要なことだってことはわかる。
 どうしても俺の私物というか、特定の人が分かる物は置きたくないらしい。
 誰かにノートを借りた時も、わざわざラウンジで内容を写したり、コピーしてすぐ返している姿を見たことがある。
 それくらい、徹底してこの家には何も置きたがらない。
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