オレとアイツの関係に名前なんていらない

こうらい ゆあ

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おまけ ふたりの約束

2.

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 テーブルの上には、なんとも言えないビジュアルの朝食が並んでいた。
 珈琲のカップからは、ほのかに香るけど味はほぼ水みたいな液体が湯気を立てている。
 パンは一枚が真っ黒で、もう一枚がほぼ生のまま。
 どうやったらこんな極端な焼き加減になるんだ?
  キッチンに立つ海斗カイトの背中を見ながら、思わず笑いがこみ上げてくる。
 ただ、海斗カイトが卵焼きを作ろうとしているのを見て、慌てて中止させた。
 海斗カイトがコンロを使うとなんか起こりそうな予感がしたんだ……
 ホント、こんな不器用な奴が、昨晩あんなに情熱的にオレを愛してくれたなんて、なんか信じられない。

 「海斗カイト……本当はオレのこと、嫌いなんじゃないのか?」
 ジト目で海斗カイトを見ながら、心の底から考えてしまった疑念を口にする。
「そんなわけないだろ!俺だって頑張って作ってみたけど……やっぱ、ちぃみたいに上手くできなかっただけで……。ちぃ、動けそうなら朝飯はやっぱどっか食べに行こう」
 怒られたゴールデンレトリーバーのようにしょんぼりとしている海斗カイトを見ると、怒るに怒れなくなる。
「はぁ……別に食べれないことはないから。次から料理はオレが作るから、海斗カイトは美味しい珈琲がちゃんと淹れれるように練習しといて」
 溜息交じりに珈琲を淹れる練習をするように声をかけて、ほぼ焼けていないパンを頬張る。
 パンにはなにも塗ってない。
 朝食を食べるなんていつぶりだろ……
 ひとりでいると、朝は飲み物だけにして、大学に行くことの方が多かったから……
 海斗カイトが一緒に朝食を食べてるってこと自体が、ちょっと新鮮で恥ずかしい。
 パンを噛むたびに、海斗カイトの視線がオレの顔に注がれているのを感じる。
 アイツの目は、まるでオレの些細な表情を見逃したくないって言ってるみたいだ。
 こんな何気ない時間なのに、なんでこんなに心が温かくなるんだろう。
 いつもなら朝なんて適当に済ませて、すぐに大学に向かうのに、こうやって二人でテーブルを囲んでるだけで、なんか……幸せだなって思ってしまう。

「ちぃ、嬉しそうだね。後で俺専用のコップとか食器、見に行こうね」
 オレの顔を眺めながら嬉しそうに言ってくる海斗カイトに、自分が無意識に笑っていたことに気付く。
「……べ、別に……嬉しいのは……しかたないだろ……」
 ついいつもの癖で否定の言葉が口から出そうになるのを、何とか抑えて素直に気持ちを伝える。
 オレの言葉を聞いて、海斗カイトは一瞬驚いた表情を浮かべていたけれど、すぐに嬉しそうな笑みを浮かべて頭を撫でてくれた。
「ちぃ、ちゃんと素直に言えていい子。帰って来たら、いっぱいご褒美あげるね」
 オレの手を取って、慣れた手付きでオレの指先にキスをしてくる。
 ただ指先に海斗カイトの唇が当たっただけなのに……
 ただ、それだけなのに……胸がとぅんくと高鳴るのを感じた。
 海斗カイトの指先がオレの手をそっと包み込む感触が、妙にリアルで心に残る。
 こんな小さな仕草でも、アイツの気持ちが伝わってくるからズルい。
 指先に残る彼の唇の温もりを、つい何度も思い返してしまう。
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