男ですが聖女として召喚されたら、年下第3王子と年上の聖騎士様に迫られてます。

こうらい ゆあ

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第四章

69.魔力切れ

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癒しの光りよ、この者を癒せセラフィム・ルーメン!」

 回復魔法(小)とは違い、お兄さんの周りを淡いピンク色の光りが包み込んだ。
 ピンクと白の光りの粒子が空中に舞い、顔の右側の酷い火傷痕にゆっくり光が浸透していく。
「温かいな」
 目を閉じたままポツリと赤髪のお兄さんが言葉を漏らした。

 ゆっくりとだけど、傷が治っていくのが見ていてわかる。
 光の粒子が全て火傷痕に吸収されていくのと同時に、光が収まっていく。
 辺りが通常通りに戻ると、赤髪のお兄さんはゆっくりと目を開け、驚いた顔をしていた。
「あの不愉快な痛みが消えた……」
 お兄さんの顔の右側には火傷のあった赤い痕は残ってしまったものの、さっきまでの様な痛々しい爛れは綺麗に治っていた。

「はぁ……傷は残っちゃったけど、よかったぁ~」
 安堵と同時にドッと身体の中から何かが抜けだしたような感覚にふらついてしまう。
 立ち眩みかと思ったけど、何かが違う。
「――っ」
 なに、これ……身体、熱い……

 お腹の奥がキュンキュンと疼き、触れてもいない股間が勃ってしまう。
 顔が熱くて、耳や首まで真っ赤になっているのが自分でもわかる。
「……なに、これ……」

 吐き出す息すら熱く、誰でもいいからこの身体を満たして欲しいと、欲望がグルグルと頭を廻る。

 犯して欲しい。ナカにいっぱい精を注いで欲しい。奥まで満たして欲しい。

 快楽を求めるようにお尻が勝手に濡れるのがわかり、ゾワゾワとした衝動を抑えられない。
「おい」
 赤髪のお兄さんに声を掛けられ、自分が1人じゃないことを思い出す。
「はぁっ……はぁっ……な、んで……」

「魔力切れか……。魔力切れも知らないのか?」
 呆れたような声でポツリと呟くのが聞こえたけど、言葉のとおり、俺は魔力切れなんて知らない。
 それがどんな症状を起こすのかも理解していなかった。
「……み、んな……」
 唇を噛み締め、残っている理性でなんとかキッと相手を睨み付ける。

「ふっ、威勢のいい目をしているな。気に入った」
 不敵な笑みを浮かべると同時に、俺の顎を掴み、いきなりキスをしてきた。
 驚いて固まっている俺を余所に、舌が口内に潜り込んでくる。
「ンッ!?ンンッ!」
 お兄さんの胸を押して逃れようとするも、後頭部を押さえられてしまい、逃げることも出来ない。
 むしろ、さっきよりも深いキスになっていき、頭がぽわぽわしてくる。
「んぁっ……んん」

 通常より細長い舌が口内を蹂躙し、舌に絡みついてきたと思った瞬間、喉奥を犯すように潜り込んできた。
「――ッ!?」
 驚いて目を見開くも、お兄さんの愉悦のこもった目で見つめられるだけで、刺激は強くなる一方だった。
 爬虫類のような長く細い舌で喉奥を擦られる度に、嫌悪感だけじゃない何かが沸き上がってくる。
「ぁっ、ッ……」
 飲み込み切れなった唾液が口の端を伝い落ち、目の前がチカチカと瞬く。
 喉奥を擦られるだけでイキそうになるのを必死で堪えていると、不意に、何かが口に入って来た。
 ビー玉のようなツヤツヤとした丸い物。
 それをゆっくりと舌で奥に送るように押し込まれる。
 必死に舌で押し返そうとするのに、細長い舌で器用に喉の奥に押し込まれ、苦しさから嚥下せざるを得なかった。

 沢山の唾液と共に、ビー玉を飲み込むのを確認した後、やっと唇を離して貰えた。
「ッ、ゲホッゴホッ、はぁはぁっ……なに、すんだよ……」
 彼の肩を押して何とか距離を作るも、腰が抜けてしまい、ペタンと座り込んでしまう。
「いきなり何すんだよ!変態!」
 涙目でキッと睨み付け、手の甲でゴシゴシと唇を擦って、今のキスをなかったことにしようとする。

「我の魔力を分け与えてやっただけだ。少しは楽になったであろう?」
 蛇のような長い瞳孔を更に細くし、勝ち誇ったような笑みを浮かべる彼に言われ、自分の身体を確認する。
 確かに、さっきまで異様な渇きに似た性欲は収まっていた。

「……お、大きなお世話だ!いきなりあんな、ディープキスをしてくるなんて……」
 俺が文句を言うも、全く気にした様子はなく、むしろ機嫌良さげに蛇のような先の分かれた細長い舌をちょろちょろと出し入れしている。

其方そなた、名は?」
 人の話を全く聞いていないような、上からな態度が余計にイラっとする。
「マコト。ただのマコト。もう2度と会うこともないから、覚えなくていいけどな!」
 吐き捨てるように言うと、赤髪のお兄さんはニヤァっと口の端を上げて笑みを作り、俺の手を取って手の甲に口付ける。

「マコト、我が花嫁に相応しき者。其方そなたに託した宝珠が満たされた時、必ず其方そなたを我が妻に」
 金色に光る眼で見つめられるとなぜか目を逸らすことが出来なかった。
 さっきまで、ヘビとかトカゲみたい爬虫類だと思ってたのに、今は寒気がしてしかたない。
 そこら辺にいる爬虫類系の獣人とは全然違う、もっと大きくと怖い生き物……
 本能が危険だと警鐘を鳴らしている。
 背筋を冷たい汗が流れ落ちるような恐怖でブルっと震えそうになるのを、唇の裏を噛み締めて堪える。

「必ず迎えに来る。マコト、我が愛しの花嫁」
 まだ赤みの残る右側の顔を隠すように前髪を垂れ流し、報酬として小さな革袋を置いて去って行った。
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