【完結】野良猫Subは誰にも懐かない

こうらい ゆあ

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過去編 威圧

「nagiってのはどうだ?」
煙草をふかしながら、先程からオレのことなど一切見ず、スマホを眺めている彼が声を掛けてきた

行為のあと、縛られていた腕の紐を解いて貰ったものの、擦れて赤くなった痕が、ヒリヒリして痛む
痛みを和らげるようにその部分を摩っているときだった


最近はSEXのあとは、先程撮った動画のチェックをするのが楽しみらしい
Playと行為後に微睡んでいるオレを無視して動画のチェックに勤しんでいる

上手に出来たら一応褒めてはくれるけど、何かが足りない…
満たされない

Playをしていても、独り善がりなコマンド命令ばかり
彼は満たされているようだけど、オレはずっと満たされなくて…

当然、アフターケアなんてして貰えないから、不満だけが募っていく

一緒にいるはずなのに、さっきまで沢山愛されていたはずなのに、急激に心が冷めていくのを感じる…


「なにが?」
怪訝そうに彼を見るも、スマホから一切視線を上げない姿に苛立つ


最近入れたばかりの臍下のタトゥー
彼からの要望
腰に入れた蝶のタトゥーが気に入ってくれたらしく、対になるデザインの花を入れて欲しいと言われた

青い薔薇をモチーフに、蔦が骨盤の方に伸びているデザイン
前に入れた蝶は黒一色だっただけに、今回のは発色も綺麗に入っているのが嬉しくて、そっと指でなぞる


彼が望むから、言われるままタトゥーを増やす
彼が望むから、耳のピアスも増やす
彼が望むから、縛られて叩かれる行為も許容する
彼が望めば、出来ることは尽くしたい
彼の為に
彼が好きだから
彼がオレのパートナーだから…



「動画上げるのに、固定の垢作ったほうがいいだろ?
名前は本名の『凪』をローマ字にして『nagi』ってやればいいだろ?動画内でも名前呼んじまってるから、変に変えてもおかしいし
お前のSEX動画、結構人気出てきたからな」


煙草の煙がゆっくり部屋の中で漂っている
オレと彼の隔たりを表しているように、ゆっくり、ゆっくり、流れて消えていく


全く聞いてなかった返答内容に血の気が引くのがわかる

「え?は?動画って…今のも…」
「そ、今までのも編集してたまーに上げてんだけど、お前かなり人気出てるぞ
良かったなぁー、いっぱい凪のエロい姿見て貰えて」

新しい煙草に火を付け、深く吸い込みながら笑う彼に顔が引き攣ってしまう

「オレの顔、出てんじゃん…ってか、SEXの動画、ネットに上げるとか…頭おかしいんじゃねーの…?」
怒りで握りしめた拳が震え、声も震えてしまう

「アンタだって会社にこんなのがバレたらヤバいのわかってるだろ!!ネットって!早く、今すぐ消してっ!」

取り乱したように罵声を上げるも、彼はニヤニヤ笑ってスマホを弄っているだけで、オレの言葉など一切聞いていない

「大丈夫だって。お前にもいい思いさせてやっから。今度ちょっと金も入るしな
後で飯食いに行こうぜ。奢ってやっから」

ブチッと何かがキレる音がした
彼を思い切り殴ろうと腕を振り上げた瞬間

 Kneel跪け

怒気を含んだグレアを放ちながら、冷たくコマンドを言ってくる彼に本能的にペタンと床に座り込んでしまう
今まで浴びたこともない強烈なグレアに本能が警鐘を鳴らしている


早く、早く、早く
謝らなきゃ、許して貰わなきゃ…


 Shut Up黙れ凪、俺の言うことが聞けないのか?」

煙草を灰皿に揉み消し、髪を掴んで頭を床に叩きつけるように押し付けられ、耳元で囁くように言われる
「お前は俺のSubだろ?俺の言う命令は絶対だよな?」

頬に痛みが走り、怒りを孕んだ声に身体が震え、歯の根が合わなくてカタカタと音がしてしまう
ただひたすら頷き、「ごめんなさい」と繰り返し訴えた

「Okay 凪は良い子だよな。俺の為に色々頑張ってくれっし、俺も凪をもっと可愛がってやりたいから。動画はそのエッセンスとちょっとした小遣い稼ぎだよ」
やっと、グレアを納めてくれ、頭をグシャグシャに撫でてからまたゆったり座りながらスマホを眺めている

オレは、やっと動けるようになっても恐怖が払拭されず、顔が引き攣ったまま自分の腕を抱き締めて耐えることしか出来なかった
そんなオレを見兼ねたのか、「はぁぁ…」っとあからさまに面倒だと言う溜息を吐き出し

「凪も俺のコト愛してるだろ?俺のために、ちょっとだけ頑張ってくれよ」
震える身体を優しく抱き締めて口付けをしてくれた
でも、嫌だと拒否することは出来なかった

今の関係を解消されるコトが怖くて、オレには最初から拒むことなんて出来なかった

どうしても、あの時のオレは、彼に捨てられることだけは避けたかった…
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