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薫が傷を負ってから2週間
薫は未だに目覚めていない
お昼過ぎから夕方まで薫の側に行くのが日課になってきていた
毎日、毎日、薫が冷たくないのを確認して、ずっと話しかける
「昨日、帰りにネコを見たよ。お庭にね、住んでるのかな?
すっごく懐っこくて、僕にも触らせてくれるんだよ。
かおるが起きたら、一緒に抱っこしたいなぁ~」
「今日はお花持って来たよ。お庭にいっぱい咲いてるやつ
前にかおるが教えてくれたお花だけど、名前忘れちゃった…かおる、このお花の名前、また教えてね」
「今日は雨だったから、遅くなっちゃった。ごめんね。
傘に雨が当たって、ポツポツ音がするの楽しかったんだぁ~
ずっと見てるだけだったのに、触れるのが嬉しくって、足、ビチャビチャになっちゃったから怒られるかな?
あ、あのキレイなのなんだろ?色んな色が出てるよ!
かおると一緒に見たい、な…」
「…今日は、先生に怒られちゃった…。
車椅子だと動きにくいから、床をネコみたいに歩いちゃダメだって。手も足もまた痛くなるからなんだって
かおるが一緒じゃないから、色んなところに行けなくて寂しな…」
「明日は、僕も先生に検査して貰うんだって。
僕も病院に来れるようになったから、ちゃんと検査して、また歩ける練習もするんだって
歩けるようになったら、かおるの隣に並んでお散歩したいなぁ~」
「かおる、僕、自分の名前思い出したんだよ?かおるがずっと僕のこと、悠人って呼んでくれてたのに、ね…
全部はまだ思い出せないけど、パパのことも、ママのことも…ちゃんと、思い出したよ
だから、だから…かおる、早く起きてよ…」
笑顔で話しかけていたはずが、途中から泣いてちゃんと喋れない
薫の手をギュッと握り締めると、微かに指が動いた気がした
驚いて顔を上げ、薫の顔を覗き込むように見つめるとゆっくり目を開き
「悠人、クマが出来てる。ちゃんと寝れてないんだね」
掠れた声だけど、僕の耳にはハッキリと薫の声が聞こえた
「ッ…かおるっ、かおるっ!うああああっ」
ずっと我慢していたモノが溢れ出し、薫の胸に顔を埋めて、大声を出して泣きじゃくった
優しく抱きしめてくれる熱が嬉しくて、涙が止まらない
「おはよう、悠人。ずっと、悠人の声は聴こえてたよ。こうやって、抱き締めてあげたかった」
「かおるっ、好き、大好きだから、僕の側にずっと居て」
薫のリハビリも終わり、退院が決まった
僕よりも後にリハビリが始まったのに、すぐにまた歩けるようになるなんてズルい…
僕の車椅子を押しながら歩く薫を心配しながらも一緒に歩けない悔しさに頬を膨らませる
「そんな可愛い顔をしても、まだダメだよ。無理をすると歩けなくなるって言ってただろ?」
僕の視線に合わせるように前にしゃがみ込んで見詰めてくる薫に顔が熱くなる
「悠人、悠人が生まれた時からずっと愛している。これからもずっと、側に居させて欲しい」
真剣な眼差しで、今まで誰にも言って貰えなかった嬉しい言葉
涙が自然と溢れ出し、言葉を紡ごうにも嬉しすぎて声が出ない
コクコクと何度も頷き
「ぼ、くも…薫のこと愛してる。ずっと側に居て!」
ずっと全てを諦めていたのに、今はこの人と一緒に生きたい
広い空の下を一緒に歩いて、たくさんの景色を観て、いっぱい愛してもらうんだ。
薫は未だに目覚めていない
お昼過ぎから夕方まで薫の側に行くのが日課になってきていた
毎日、毎日、薫が冷たくないのを確認して、ずっと話しかける
「昨日、帰りにネコを見たよ。お庭にね、住んでるのかな?
すっごく懐っこくて、僕にも触らせてくれるんだよ。
かおるが起きたら、一緒に抱っこしたいなぁ~」
「今日はお花持って来たよ。お庭にいっぱい咲いてるやつ
前にかおるが教えてくれたお花だけど、名前忘れちゃった…かおる、このお花の名前、また教えてね」
「今日は雨だったから、遅くなっちゃった。ごめんね。
傘に雨が当たって、ポツポツ音がするの楽しかったんだぁ~
ずっと見てるだけだったのに、触れるのが嬉しくって、足、ビチャビチャになっちゃったから怒られるかな?
あ、あのキレイなのなんだろ?色んな色が出てるよ!
かおると一緒に見たい、な…」
「…今日は、先生に怒られちゃった…。
車椅子だと動きにくいから、床をネコみたいに歩いちゃダメだって。手も足もまた痛くなるからなんだって
かおるが一緒じゃないから、色んなところに行けなくて寂しな…」
「明日は、僕も先生に検査して貰うんだって。
僕も病院に来れるようになったから、ちゃんと検査して、また歩ける練習もするんだって
歩けるようになったら、かおるの隣に並んでお散歩したいなぁ~」
「かおる、僕、自分の名前思い出したんだよ?かおるがずっと僕のこと、悠人って呼んでくれてたのに、ね…
全部はまだ思い出せないけど、パパのことも、ママのことも…ちゃんと、思い出したよ
だから、だから…かおる、早く起きてよ…」
笑顔で話しかけていたはずが、途中から泣いてちゃんと喋れない
薫の手をギュッと握り締めると、微かに指が動いた気がした
驚いて顔を上げ、薫の顔を覗き込むように見つめるとゆっくり目を開き
「悠人、クマが出来てる。ちゃんと寝れてないんだね」
掠れた声だけど、僕の耳にはハッキリと薫の声が聞こえた
「ッ…かおるっ、かおるっ!うああああっ」
ずっと我慢していたモノが溢れ出し、薫の胸に顔を埋めて、大声を出して泣きじゃくった
優しく抱きしめてくれる熱が嬉しくて、涙が止まらない
「おはよう、悠人。ずっと、悠人の声は聴こえてたよ。こうやって、抱き締めてあげたかった」
「かおるっ、好き、大好きだから、僕の側にずっと居て」
薫のリハビリも終わり、退院が決まった
僕よりも後にリハビリが始まったのに、すぐにまた歩けるようになるなんてズルい…
僕の車椅子を押しながら歩く薫を心配しながらも一緒に歩けない悔しさに頬を膨らませる
「そんな可愛い顔をしても、まだダメだよ。無理をすると歩けなくなるって言ってただろ?」
僕の視線に合わせるように前にしゃがみ込んで見詰めてくる薫に顔が熱くなる
「悠人、悠人が生まれた時からずっと愛している。これからもずっと、側に居させて欲しい」
真剣な眼差しで、今まで誰にも言って貰えなかった嬉しい言葉
涙が自然と溢れ出し、言葉を紡ごうにも嬉しすぎて声が出ない
コクコクと何度も頷き
「ぼ、くも…薫のこと愛してる。ずっと側に居て!」
ずっと全てを諦めていたのに、今はこの人と一緒に生きたい
広い空の下を一緒に歩いて、たくさんの景色を観て、いっぱい愛してもらうんだ。
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