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期限つきの恋
エピローグ
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1年後、聖桜病院のロビーで小さな個展が開かれた。
個展のタイトルは『期限付きの恋』
展示されているのは、葵が命の限り描き続けたスケッチブックの絵だ。
屋上の花、星空、病室の窓から見える朝焼け、そして俺の笑顔。
どの絵にも、葵の愛と命が息づいていた。
その1枚1枚が、葵の純粋な心と彼が愛した瞬間を閉じ込めた宝石のようで、俺の心を温かく照らしてくれる。
絵の裏には、彼の小さな文字でその日の出来事や想いが簡潔に記されていた。
『今日、先生が初めて笑ってくれた』
『先生がトゲのないサボテンをくれた。せっかくだから名前を付けたのに笑われちゃった。命名【ラビヲ】』
『星空を見ながら、ずっと一緒にいたいって思った』
『悠真さんの手、好きだ。大きくて、優しくて、全部包んでくれる』
『美咲さん。オレにお姉ちゃんがいたら、こんな感じだったのかな?』
『悠真さんと初めてキスしちゃった。ヤバい、心臓爆発しそう』
1枚1枚、葵の純粋な心が滲んだ言葉の数々が、葵と過ごした日々の喜びや愛を鮮やかに蘇らせ、同時に彼を失った痛みをそっと呼び起こした。
この個展は、葵のことをずっと弟のように優しく接していた美咲君が提案してくれた。
彼女は葵が入院中、彼のそばにいてくれ、笑顔で励ましてくれていた。
看護師として支える以上に、葵のことを見ていてくれた。
葵が逝った後、彼女は泣きながら葵の残したスケッチブックの束を俺に渡してくれた。
「葵くんの夢、一緒に叶えてあげましょう。佐藤先生なら、きっとできるよ」
彼女の瞳には、優しさと、どこか深い悲しみが宿っていた。
その眼差しに、葵を愛した者としての深い共感と、彼女自身の喪失を乗り越えようとする強さを感じた。
後で知った話だが、彼女が葵を大切にしたのは、彼女自身がフェロモン崩壊症で弟を失っていたからだ。
彼女の弟も、葵と同じように、Ωとして生まれ、病に蝕まれながらも笑顔でその生涯を閉じた。
彼女は、葵の姿に、亡くなった弟の姿を重ねていたのだ。
「葵くんの絵には、生きる力が詰まってる。みんなに葵くんの絵を届けてあげたい」
彼女の言葉に、俺はようやく一歩を踏み出す決心がついた。
俺ひとりでは、葵の夢を叶えるどころか、前に進むことすらできなかったかもしれない。
俺自身も、彼女の優しさにどれだけ救われたかわからない。
その優しさが、葵の遺した光を未来へと繋ぐ架け橋となり、俺に生きる意味を再び見出させてくれた。
病院のロビーに設けられた小さな一角。
簡素な展示スペースだが、訪れる人々が足を止め、葵の絵をじっと眺めている。
子どもが屋上の花の絵に笑顔を向け、老夫婦が星空の絵に懐かしそうな眼差しを向ける。
葵の絵は、こんなにも人の心を惹き付ける。
彼の描いた世界は、病室の閉ざされた空間を超えて、こんなにも多くの人に届いている。
その光景を前に、葵の魂が今も生き続け、訪れる人々の心に温かな希望を灯していると確信した。
「葵、お前抜きでこんなことをして……怒ってないか?」
1枚の絵を前に、ポツリと問いかける。
俺が渡した青ばかりが入った色鉛筆で描かれた、俺の横顔。
柔らかな線で描かれたその絵は、まるで俺を愛おしむ葵の視線そのものだった。
「悠真さんの横顔、すっごく好き。笑った顔も、怒った顔も、ちょっと拗ねてる顔も……全部好き」
あの夜、葵はそう言って、俺の胸に顔を埋めた。
月下美人のフェロモンが病室を満たし、俺のαの本能が彼を強く求めた。
抱き合い、唇を重ね、「愛してる」と何度も囁き合った。
その瞬間、葵の温もりと愛が俺の心を満たし、世界が彼と俺だけで完結するかのような幸福感に包まれた。
「悠真さんと『番』になりたい。こんなオレでも……いい?」
葵の若草色の瞳が、涙で揺れながら俺を見つめた。
うなじに牙を立て、彼を番にした瞬間、痛みと喜びで震えながら涙をこぼしたあの横顔。
「ありがとう……悠真……」
一瞬だけだったが、葵が見せてくれた幸せそうなその笑顔を、俺は永遠に忘れないように心に刻み込む。
葵の笑顔は、今も俺の胸の中で輝き、どんな闇も照らす光となって生き続けている。
葵が最後に描いた1枚の絵は、線の歪んだ夕陽の絵。
多分、俺の横顔を描こうとしていたのか、『目』だけが空白の部分に描かれていた。
絵の裏には、葵の小さな文字でこう書かれていた。
『夕陽と一緒に悠真さんを描きたい。オレの大好きな人。好きになってほしい人。オレの初恋。番に、なってほしい人』
その一言に、俺の胸は熱くなる。
「葵、お前抜きでこんな個展を開いて、怒ってないか?」
絵にそっと触れ、誰にも聞こえない声で呟く。
答えはない。
だが、葵ならきっと、優しく笑って「悠真さん、ありがとう」って言う気がした。
その笑顔を思い浮かべるたび、葵の愛が俺の心に温かな灯りを灯し、涙が静かに滲んだ。
病院のロビーを抜ける風が、まるで葵の笑い声のように優しく響いた。
俺はもう一度、葵の絵に触れる。
「ありがとう、葵。俺はまだ前に進めている。お前が教えてくれた、普通の幸せを胸に……」
その言葉は、会場に流れていた静かな音楽に溶け、葵のいる空へと届く気がした。
俺の葵への愛は、確かに生き続けていた。
そして、葵の絵が、これからも多くの人々の心に愛と希望を届け、永遠に輝き続けるだろうと信じている。
≪ fin ≫
個展のタイトルは『期限付きの恋』
展示されているのは、葵が命の限り描き続けたスケッチブックの絵だ。
屋上の花、星空、病室の窓から見える朝焼け、そして俺の笑顔。
どの絵にも、葵の愛と命が息づいていた。
その1枚1枚が、葵の純粋な心と彼が愛した瞬間を閉じ込めた宝石のようで、俺の心を温かく照らしてくれる。
絵の裏には、彼の小さな文字でその日の出来事や想いが簡潔に記されていた。
『今日、先生が初めて笑ってくれた』
『先生がトゲのないサボテンをくれた。せっかくだから名前を付けたのに笑われちゃった。命名【ラビヲ】』
『星空を見ながら、ずっと一緒にいたいって思った』
『悠真さんの手、好きだ。大きくて、優しくて、全部包んでくれる』
『美咲さん。オレにお姉ちゃんがいたら、こんな感じだったのかな?』
『悠真さんと初めてキスしちゃった。ヤバい、心臓爆発しそう』
1枚1枚、葵の純粋な心が滲んだ言葉の数々が、葵と過ごした日々の喜びや愛を鮮やかに蘇らせ、同時に彼を失った痛みをそっと呼び起こした。
この個展は、葵のことをずっと弟のように優しく接していた美咲君が提案してくれた。
彼女は葵が入院中、彼のそばにいてくれ、笑顔で励ましてくれていた。
看護師として支える以上に、葵のことを見ていてくれた。
葵が逝った後、彼女は泣きながら葵の残したスケッチブックの束を俺に渡してくれた。
「葵くんの夢、一緒に叶えてあげましょう。佐藤先生なら、きっとできるよ」
彼女の瞳には、優しさと、どこか深い悲しみが宿っていた。
その眼差しに、葵を愛した者としての深い共感と、彼女自身の喪失を乗り越えようとする強さを感じた。
後で知った話だが、彼女が葵を大切にしたのは、彼女自身がフェロモン崩壊症で弟を失っていたからだ。
彼女の弟も、葵と同じように、Ωとして生まれ、病に蝕まれながらも笑顔でその生涯を閉じた。
彼女は、葵の姿に、亡くなった弟の姿を重ねていたのだ。
「葵くんの絵には、生きる力が詰まってる。みんなに葵くんの絵を届けてあげたい」
彼女の言葉に、俺はようやく一歩を踏み出す決心がついた。
俺ひとりでは、葵の夢を叶えるどころか、前に進むことすらできなかったかもしれない。
俺自身も、彼女の優しさにどれだけ救われたかわからない。
その優しさが、葵の遺した光を未来へと繋ぐ架け橋となり、俺に生きる意味を再び見出させてくれた。
病院のロビーに設けられた小さな一角。
簡素な展示スペースだが、訪れる人々が足を止め、葵の絵をじっと眺めている。
子どもが屋上の花の絵に笑顔を向け、老夫婦が星空の絵に懐かしそうな眼差しを向ける。
葵の絵は、こんなにも人の心を惹き付ける。
彼の描いた世界は、病室の閉ざされた空間を超えて、こんなにも多くの人に届いている。
その光景を前に、葵の魂が今も生き続け、訪れる人々の心に温かな希望を灯していると確信した。
「葵、お前抜きでこんなことをして……怒ってないか?」
1枚の絵を前に、ポツリと問いかける。
俺が渡した青ばかりが入った色鉛筆で描かれた、俺の横顔。
柔らかな線で描かれたその絵は、まるで俺を愛おしむ葵の視線そのものだった。
「悠真さんの横顔、すっごく好き。笑った顔も、怒った顔も、ちょっと拗ねてる顔も……全部好き」
あの夜、葵はそう言って、俺の胸に顔を埋めた。
月下美人のフェロモンが病室を満たし、俺のαの本能が彼を強く求めた。
抱き合い、唇を重ね、「愛してる」と何度も囁き合った。
その瞬間、葵の温もりと愛が俺の心を満たし、世界が彼と俺だけで完結するかのような幸福感に包まれた。
「悠真さんと『番』になりたい。こんなオレでも……いい?」
葵の若草色の瞳が、涙で揺れながら俺を見つめた。
うなじに牙を立て、彼を番にした瞬間、痛みと喜びで震えながら涙をこぼしたあの横顔。
「ありがとう……悠真……」
一瞬だけだったが、葵が見せてくれた幸せそうなその笑顔を、俺は永遠に忘れないように心に刻み込む。
葵の笑顔は、今も俺の胸の中で輝き、どんな闇も照らす光となって生き続けている。
葵が最後に描いた1枚の絵は、線の歪んだ夕陽の絵。
多分、俺の横顔を描こうとしていたのか、『目』だけが空白の部分に描かれていた。
絵の裏には、葵の小さな文字でこう書かれていた。
『夕陽と一緒に悠真さんを描きたい。オレの大好きな人。好きになってほしい人。オレの初恋。番に、なってほしい人』
その一言に、俺の胸は熱くなる。
「葵、お前抜きでこんな個展を開いて、怒ってないか?」
絵にそっと触れ、誰にも聞こえない声で呟く。
答えはない。
だが、葵ならきっと、優しく笑って「悠真さん、ありがとう」って言う気がした。
その笑顔を思い浮かべるたび、葵の愛が俺の心に温かな灯りを灯し、涙が静かに滲んだ。
病院のロビーを抜ける風が、まるで葵の笑い声のように優しく響いた。
俺はもう一度、葵の絵に触れる。
「ありがとう、葵。俺はまだ前に進めている。お前が教えてくれた、普通の幸せを胸に……」
その言葉は、会場に流れていた静かな音楽に溶け、葵のいる空へと届く気がした。
俺の葵への愛は、確かに生き続けていた。
そして、葵の絵が、これからも多くの人々の心に愛と希望を届け、永遠に輝き続けるだろうと信じている。
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