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工藤と近藤(閑話)
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[よくわからない時間]
猫が座っている。その隣に工藤もしゃがんでいる。
猫は不思議そうに、地面を、動くアリをみている。
そしてなぜか工藤もその横でアリをみている。
それを俺はみている。
「何してんだ」
声をかけても、猫は動じず耳だけを器用にこちらにむけた。そして、工藤もこっちを一切みないで「アリがいる」と、じっと、アリが自分よりも大きなエサを抱えて運ぶ様子を眺めてる。
それに近藤も加わって、不思議な時間を共有している。二匹と二人で。
■ ■ □
小ネタ【なんか今なら陸地でも背泳ぎ出来そうな気がする】それはどんな時
プールの授業でめちゃくちゃ泳ぎたかったのに、ゴーグル以外を忘れたため見学中の工藤が、意気消沈で手に取ったたべっ子どうぶつのDEERが何かを一か八かで言い当てたときに叫んだひとこと。
そしてやってみせた。
近藤は欠席していた為あとからこの動画がまわってきて吹いた。
■□
小ネタ【静電気】
「近藤…たすけてくれ…」
「………」
はじめは朝、紙パックのジュースを飲もうと、ストローの包装フィルムの端切れが指にくっついた事が始まりだ。
近藤が気付いて、
「何か付いてるぞ、右手」
と言っても
「一心同体なんだよ」
とかほざいてたのに
時々気になったらしく、前の席で手を振って落とそうとするが、とれず、小指の真横、手の甲あたりに引っ付いてる。付いてる右手の方の指を伸ばし、はがそうとしていた。
「左手使えよ」すぐだろと、後ろで見ていた近藤も気になって口を出した。
「使わねー、まけた気がするだろ」
「あっそ」
近藤は勝手にしろ、とそこからは口出しすることをやめた。
それから、放課後までずっと取れないでいた。
そして、とうとう近藤に助けを求めた訳だ。
そこまでして、どうしても左手を使いたくない理由はなんなんだよ…一体お前の中の何がまけた事になるんだ…
ジュースのストローの包装が肌にくっ付いて静電気でとれなくなった工藤。
* * * * * * *
友情
「やべえ、…はらいたい」
帰り道。
聞こえた言葉に隣を見ると、チャリをおして歩いてる工藤の顔がヤバい。
腹をおさえて「出そう…」と言うので「……学校もどるか」と引き返す。
なんだかつらそうなので早足で向かうことにする。
「我慢できそうか」
と喋りかけるが返事がない。
横を見ても居ないので後ろに首をまわす。
居た、「学校戻るか」と言ったところとほぼ同位置に。
最初からピークが来ていたらしい。
腹をおさえ下向いた工藤は動かない。
きっと、他人には見えない便意と戦っているんだろう。
そのうち「いってえ」と言いながらも追いついてきた。
波は去ったらしい。
そこからは、時々「大丈夫か」「もうちょっとだから頑張れ」と声をかけて歩いた。
それに「うん」とか「ごめん」とか「待って、来た」とか言って立ち止まる。
校門が見えてきた。こいつにとっては希望の光くらいに見えてるんじゃないかと思いながら向かう。
そしてやっと目の前まで来たとき、冷や汗をかいてついてきた工藤に「おい、もう着くぞ」と、なぜかこいつを励ましている内に一緒になって必死になる自分に気づいた。
目の前の校舎を見て「よかったな、行って来い」待ってるからと工藤をみる。
そう言えば、途中から、なんかずっと…無言だった。
…黙りこくってる工藤をみた。
「…は…おまえ…?」
………まさか、うそ、だよな…?
笑顔でこちらを見てきた。
ニッと笑って八重歯をのぞかせるその満面の笑みをみながら、「うそだろ…?」と言うも、ニッカリ笑ったまま、チャリをまたぐと立ち漕ぎで、家に帰っていった。
今でもその光景が、…その後ろ姿が、ペダルを立ってこぐ工藤が、目に焼きついている。
思い出すと可笑しすぎて
猫が座っている。その隣に工藤もしゃがんでいる。
猫は不思議そうに、地面を、動くアリをみている。
そしてなぜか工藤もその横でアリをみている。
それを俺はみている。
「何してんだ」
声をかけても、猫は動じず耳だけを器用にこちらにむけた。そして、工藤もこっちを一切みないで「アリがいる」と、じっと、アリが自分よりも大きなエサを抱えて運ぶ様子を眺めてる。
それに近藤も加わって、不思議な時間を共有している。二匹と二人で。
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小ネタ【なんか今なら陸地でも背泳ぎ出来そうな気がする】それはどんな時
プールの授業でめちゃくちゃ泳ぎたかったのに、ゴーグル以外を忘れたため見学中の工藤が、意気消沈で手に取ったたべっ子どうぶつのDEERが何かを一か八かで言い当てたときに叫んだひとこと。
そしてやってみせた。
近藤は欠席していた為あとからこの動画がまわってきて吹いた。
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「近藤…たすけてくれ…」
「………」
はじめは朝、紙パックのジュースを飲もうと、ストローの包装フィルムの端切れが指にくっついた事が始まりだ。
近藤が気付いて、
「何か付いてるぞ、右手」
と言っても
「一心同体なんだよ」
とかほざいてたのに
時々気になったらしく、前の席で手を振って落とそうとするが、とれず、小指の真横、手の甲あたりに引っ付いてる。付いてる右手の方の指を伸ばし、はがそうとしていた。
「左手使えよ」すぐだろと、後ろで見ていた近藤も気になって口を出した。
「使わねー、まけた気がするだろ」
「あっそ」
近藤は勝手にしろ、とそこからは口出しすることをやめた。
それから、放課後までずっと取れないでいた。
そして、とうとう近藤に助けを求めた訳だ。
そこまでして、どうしても左手を使いたくない理由はなんなんだよ…一体お前の中の何がまけた事になるんだ…
ジュースのストローの包装が肌にくっ付いて静電気でとれなくなった工藤。
* * * * * * *
友情
「やべえ、…はらいたい」
帰り道。
聞こえた言葉に隣を見ると、チャリをおして歩いてる工藤の顔がヤバい。
腹をおさえて「出そう…」と言うので「……学校もどるか」と引き返す。
なんだかつらそうなので早足で向かうことにする。
「我慢できそうか」
と喋りかけるが返事がない。
横を見ても居ないので後ろに首をまわす。
居た、「学校戻るか」と言ったところとほぼ同位置に。
最初からピークが来ていたらしい。
腹をおさえ下向いた工藤は動かない。
きっと、他人には見えない便意と戦っているんだろう。
そのうち「いってえ」と言いながらも追いついてきた。
波は去ったらしい。
そこからは、時々「大丈夫か」「もうちょっとだから頑張れ」と声をかけて歩いた。
それに「うん」とか「ごめん」とか「待って、来た」とか言って立ち止まる。
校門が見えてきた。こいつにとっては希望の光くらいに見えてるんじゃないかと思いながら向かう。
そしてやっと目の前まで来たとき、冷や汗をかいてついてきた工藤に「おい、もう着くぞ」と、なぜかこいつを励ましている内に一緒になって必死になる自分に気づいた。
目の前の校舎を見て「よかったな、行って来い」待ってるからと工藤をみる。
そう言えば、途中から、なんかずっと…無言だった。
…黙りこくってる工藤をみた。
「…は…おまえ…?」
………まさか、うそ、だよな…?
笑顔でこちらを見てきた。
ニッと笑って八重歯をのぞかせるその満面の笑みをみながら、「うそだろ…?」と言うも、ニッカリ笑ったまま、チャリをまたぐと立ち漕ぎで、家に帰っていった。
今でもその光景が、…その後ろ姿が、ペダルを立ってこぐ工藤が、目に焼きついている。
思い出すと可笑しすぎて
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