BL短編書き散らかし

智紗人

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朝の通学路

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朝の通学路。

歩いてる生徒も居ない、間に合うかギリギリの時間に家を出た。
隣をチャリが通り過ぎると、すぐ目の前で止まった。
振り向いた人は学校の先輩、目立つ人なので一方的に知っている。
絡んだことは今まで一度もないはずだがフレンドリーに笑顔で話しかけてくる。
「おはよ、一示いちじだっけ?学校まで乗せてくよ、乗って?」
「え、いや……」
「乗ってかない?」
「…だいじょうぶです」
小声で断りを入れたが、聞こえなかったのか先輩が続けて誘う。
「乗っていいよ、はい」
「……、」
戸惑っていると、それが伝染したみたいに相手の顔も変化する。
先輩から困惑の色をよみとり、気づくと返事をして身体が動いていた。
いつの間にか後ろにのっている。
しかも何故か横向きで。てんぱっている。先輩も突っ込まないので、もう、そのままだ。

「肩とか腰とか、どこでも良いから掴まって、落ちるなよ」
「はい」と返事はしたものの、動き出してそっこうで変な声が出た。それを気遣って先輩が「背中もつかんでいいよ」というので、反射で背中に手をあてた。少し迷って端をつまむ。安定してくるとすぐに離した。
この瞬間しか接していないが、何かお兄ちゃんって感じだなと勝手に思う。容易に家で弟か妹の面倒見る先輩が想像できた。
風をきってチャリをこいでる先輩の制服から、洗いたての匂いがする。
人の後ろに乗るのも、直にくる段差による尻への衝撃も久々だ。
目の前にいつもの上り坂がみえた。
先輩よりも大きいため、中々しんどいはずだ。

「…おもいですよね」
「ぜんぜん」

「坂あるんで、降りますね」
「ううん、行ける」
先輩は止まることなく、ぐんぐんこぐ。
坂道にさしかかった所で立ち漕ぎをして勢いをつける。
グラグラ揺れるからだを何とか負担にならないよう、バランスをとろうとする。
上下する背中を見ながら、タフ過ぎる…と、ゆるい坂ではないのに、何故か人をのせてのぼろうとする先輩がわからない。
「…降ります」
明らかにスピードが落ちている。
息を弾ませて「いま筋トレ中だから」と言ってペダルを一生懸命こいでいる。
どうこたえたらいいのかわからず困る。友だちの後ろに乗るのと、先輩のとでは緊張感がちがう。
だけど、変な高揚感もある。
坂を登ればもう、学校だ。
この状況にどぎまぎしながら、不安定な居心地のわるい硬い鉄の上にのっていたはずなのに、それも一瞬だった。
いつも徒歩だから余計にそう感じる。
校門に続く生徒たちがぞろぞろと歩いている、いつもの光景。
のぼりきった先の信号で止まる。
そのタイミングで降ろしてもらった。
「ありがとうございました」
そう言って降りると、ちょうど青になった。
「いい筋トレになった、じゃあまた」
眩しい笑顔でそう言い、前を向くと軽快にさっていった。
先輩の気まぐれのおかげでその日は遅刻せずに済んだ。
次の日謎の筋肉痛になった。
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