36 / 36
朝の通学路
しおりを挟む
朝の通学路。
歩いてる生徒も居ない、間に合うかギリギリの時間に家を出た。
隣をチャリが通り過ぎると、すぐ目の前で止まった。
振り向いた人は学校の先輩、目立つ人なので一方的に知っている。
絡んだことは今まで一度もないはずだがフレンドリーに笑顔で話しかけてくる。
「おはよ、一示だっけ?学校まで乗せてくよ、乗って?」
「え、いや……」
「乗ってかない?」
「…だいじょうぶです」
小声で断りを入れたが、聞こえなかったのか先輩が続けて誘う。
「乗っていいよ、はい」
「……、」
戸惑っていると、それが伝染したみたいに相手の顔も変化する。
先輩から困惑の色をよみとり、気づくと返事をして身体が動いていた。
いつの間にか後ろにのっている。
しかも何故か横向きで。てんぱっている。先輩も突っ込まないので、もう、そのままだ。
「肩とか腰とか、どこでも良いから掴まって、落ちるなよ」
「はい」と返事はしたものの、動き出してそっこうで変な声が出た。それを気遣って先輩が「背中もつかんでいいよ」というので、反射で背中に手をあてた。少し迷って端をつまむ。安定してくるとすぐに離した。
この瞬間しか接していないが、何かお兄ちゃんって感じだなと勝手に思う。容易に家で弟か妹の面倒見る先輩が想像できた。
風をきってチャリをこいでる先輩の制服から、洗いたての匂いがする。
人の後ろに乗るのも、直にくる段差による尻への衝撃も久々だ。
目の前にいつもの上り坂がみえた。
先輩よりも大きいため、中々しんどいはずだ。
「…おもいですよね」
「ぜんぜん」
「坂あるんで、降りますね」
「ううん、行ける」
先輩は止まることなく、ぐんぐんこぐ。
坂道にさしかかった所で立ち漕ぎをして勢いをつける。
グラグラ揺れるからだを何とか負担にならないよう、バランスをとろうとする。
上下する背中を見ながら、タフ過ぎる…と、ゆるい坂ではないのに、何故か人をのせてのぼろうとする先輩がわからない。
「…降ります」
明らかにスピードが落ちている。
息を弾ませて「いま筋トレ中だから」と言ってペダルを一生懸命こいでいる。
どうこたえたらいいのかわからず困る。友だちの後ろに乗るのと、先輩のとでは緊張感がちがう。
だけど、変な高揚感もある。
坂を登ればもう、学校だ。
この状況にどぎまぎしながら、不安定な居心地のわるい硬い鉄の上にのっていたはずなのに、それも一瞬だった。
いつも徒歩だから余計にそう感じる。
校門に続く生徒たちがぞろぞろと歩いている、いつもの光景。
のぼりきった先の信号で止まる。
そのタイミングで降ろしてもらった。
「ありがとうございました」
そう言って降りると、ちょうど青になった。
「いい筋トレになった、じゃあまた」
眩しい笑顔でそう言い、前を向くと軽快にさっていった。
先輩の気まぐれのおかげでその日は遅刻せずに済んだ。
次の日謎の筋肉痛になった。
歩いてる生徒も居ない、間に合うかギリギリの時間に家を出た。
隣をチャリが通り過ぎると、すぐ目の前で止まった。
振り向いた人は学校の先輩、目立つ人なので一方的に知っている。
絡んだことは今まで一度もないはずだがフレンドリーに笑顔で話しかけてくる。
「おはよ、一示だっけ?学校まで乗せてくよ、乗って?」
「え、いや……」
「乗ってかない?」
「…だいじょうぶです」
小声で断りを入れたが、聞こえなかったのか先輩が続けて誘う。
「乗っていいよ、はい」
「……、」
戸惑っていると、それが伝染したみたいに相手の顔も変化する。
先輩から困惑の色をよみとり、気づくと返事をして身体が動いていた。
いつの間にか後ろにのっている。
しかも何故か横向きで。てんぱっている。先輩も突っ込まないので、もう、そのままだ。
「肩とか腰とか、どこでも良いから掴まって、落ちるなよ」
「はい」と返事はしたものの、動き出してそっこうで変な声が出た。それを気遣って先輩が「背中もつかんでいいよ」というので、反射で背中に手をあてた。少し迷って端をつまむ。安定してくるとすぐに離した。
この瞬間しか接していないが、何かお兄ちゃんって感じだなと勝手に思う。容易に家で弟か妹の面倒見る先輩が想像できた。
風をきってチャリをこいでる先輩の制服から、洗いたての匂いがする。
人の後ろに乗るのも、直にくる段差による尻への衝撃も久々だ。
目の前にいつもの上り坂がみえた。
先輩よりも大きいため、中々しんどいはずだ。
「…おもいですよね」
「ぜんぜん」
「坂あるんで、降りますね」
「ううん、行ける」
先輩は止まることなく、ぐんぐんこぐ。
坂道にさしかかった所で立ち漕ぎをして勢いをつける。
グラグラ揺れるからだを何とか負担にならないよう、バランスをとろうとする。
上下する背中を見ながら、タフ過ぎる…と、ゆるい坂ではないのに、何故か人をのせてのぼろうとする先輩がわからない。
「…降ります」
明らかにスピードが落ちている。
息を弾ませて「いま筋トレ中だから」と言ってペダルを一生懸命こいでいる。
どうこたえたらいいのかわからず困る。友だちの後ろに乗るのと、先輩のとでは緊張感がちがう。
だけど、変な高揚感もある。
坂を登ればもう、学校だ。
この状況にどぎまぎしながら、不安定な居心地のわるい硬い鉄の上にのっていたはずなのに、それも一瞬だった。
いつも徒歩だから余計にそう感じる。
校門に続く生徒たちがぞろぞろと歩いている、いつもの光景。
のぼりきった先の信号で止まる。
そのタイミングで降ろしてもらった。
「ありがとうございました」
そう言って降りると、ちょうど青になった。
「いい筋トレになった、じゃあまた」
眩しい笑顔でそう言い、前を向くと軽快にさっていった。
先輩の気まぐれのおかげでその日は遅刻せずに済んだ。
次の日謎の筋肉痛になった。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
【完結】 男達の性宴
蔵屋
BL
僕が通う高校の学校医望月先生に
今夜8時に来るよう、青山のホテルに
誘われた。
ホテルに来れば会場に案内すると
言われ、会場案内図を渡された。
高三最後の夏休み。家業を継ぐ僕を
早くも社会人扱いする両親。
僕は嬉しくて夕食後、バイクに乗り、
東京へ飛ばして行った。
政略結婚したかった
わさび
BL
御曹司 朝峰楓× 練習生 村元緋夏
有名な事務所でアイドルを目指して練習生をしている緋夏だが、実は婚約者がいた。
二十歳までにデビューしたら婚約破棄
デビューできなかったらそのまま結婚
楓と緋夏は隣同士に住む幼馴染で親はどちらも経営者。
会社のために勝手に親達が決めた政略結婚と自分の気持ちで板挟みになっている緋夏だったが____
【完結】 同棲
蔵屋
BL
どのくらい時間が経ったんだろう
明るい日差しの眩しさで目覚めた。大輝は
翔の部屋でかなり眠っていたようだ。
翔は大輝に言った。
「ねぇ、考えて欲しいことがあるんだ。」
「なんだい?」
「一緒に生活しない!」
二人は一緒に生活することが出来る
のか?
『同棲』、そんな二人の物語を
お楽しみ下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる