異世界最弱のニート様 敵は異世界最強の勇者様? 俺 死亡フラグ回避するために棚ぼた勇者めざします!

風まかせ三十郎

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第08話 槍兵となった俺 嵐の中で吠える!

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 俺は木賃宿へ帰ると、スーパーで買ったポテチとコーラをポリポリグビグビやりながら必死になって考えた。
 こんなに頭使ったの、生まれて初めて、って感じなんだけど、ああ、そうだ。その前に残金確認しておこっと。

 宿代     合計2000円
 ポテチ       180円
 コーラ       150円
 石鹸        100円
 剃刀        300円
 タオル       200円
 歯ブラシ      100円
 歯磨き粉      150円 
 ティッシュペーパー 100円
 スマホ一郎①   1300円

 俺、レシートお持ち帰りしたの初めて。
 残金 5420円
 
 まあ、ポケットの中調べれば、残金、すぐにわかるけど。
 なんか無駄なもんがひとつ、混じっているような気がするけど。
 あれ、おかしいな? 百円足りねえぞ、おい、俺の百円どこいった!?
 あっ、よかった! スマホ一郎①の下敷きになってたよ。
 あっ、スマホ一郎①の上にコーラこぼしちゃった。
 まっ、いいや。ティッシュがもったいないからそのままで。
 
 転生手当が振り込まれるまでの十日間、さすがにこれで暮らすのは不可能だろ?
 で、期待すべきは親からの仕送りなんだけど。
 スマホがなけりゃ、あっちの世界と連絡とれねえし。
 で、思い出したのがスマホ太郎なんだよね。

 いや、驚いたよ!
 こっちの本屋にも、ついでに足を伸ばしてみたんだけど。
 あるわ、あるわ、カラフルな表紙のラノベの山が……。
 それもあっちの世界で目にしたものばかり、”あのすば”とか”天スラ”とか”有職転生”とか"デスマ太郎”とか”スマホ太郎”とか、なろうをご卒業なさって、見事作家として社会へ羽ばたいていってた先生方の作品の数々。
 いや、眩しいねえ!
 そんな作品群が大型書店の一番目立つ所に平積みされている、あっちの世界ではお馴染みの光景なんだけど。
 
 俺は思わず心の中で叫んだよ!
 
 普通、異世界行って異世界ラノベ読む?
 いや、絶対に読まねえよ!
 これには何か裏があると読んだね。
 で、書店員さんにそれとなく探りを入れてみたんだけど……。

「あの、ラノベって、異世界でも売れるんですか?」
「ええ、うちでは一番の売れ筋ですよ」
「現世の本屋さんと、品揃え、変わりませんよね?」
「ええ、当然ですよ。異世界の本屋には、現世の出版社の在庫が流れてくるんですから」

 まさか、出版社にそんな闇ルートがあったとは。
 実は現世の書店から出版社へ返本されたブツは、そのまま闇ルートを通じて、異世界の本屋へ降ろされるのだそうだ。因みに返本は諸々の事情によりできず、ずべて買い切りだそうだ。
 つまり発行部数=実売部数というわけだ。
 おまけに古紙回収に回される本もなくなるわけだし。
 いや、出版業界の未来は明るい!
 
 書店員さんが小声で囁いた。

「異世界で引き取らなきゃ、現世で多くの出版社が潰れてますよ」
「……」

 つらつらつら~と書架を眺めていると、あった、あった!
 懐かしいタイトルの数々が。
”ハルヒ”やら”イリヤ”やら”ドクロちゃん”やらが、埃を被って書架の片隅に置かれていた。
 
 懐かしさの余り、俺はイリヤを手に取ってページをめくってみた。
 あ~、まるで昔の恋人と再会しているようだ。
 読み進めていくうちに、あのピュアな時代を思い出して、思わず熱い涙が頬を伝ったよ。
 あ~、昔のラノベはよかったなんて、オヤジのようなこと言ってる俺って、いったい何歳?
 
 まあ、買った本は”スマホ一郎➀”なんだけど。
 
 もはや、スマホを手に入れる手段はただひとつ。
 雷に打たれて、神様の下へ召されることだ。
 そして資格スキル選択のとき、スマホを選択するのだ。
 まあ、一度死んでいる身だから、もう一度死んだって、どうってことねえや!

 ■■■

 その日の夕方、おあつらえ向きに風雨が強くなってきた。
 俺は木賃宿を後にすると、その足でビル解体工事現場へ急いだ。
 誰もいないことを確認して、そうっと現場に忍び込む。
 
 あった。

 瓦礫の上に横たわる放置された避雷針。
 長さは二メートルくらいか。
 なんか槍兵ランサーの槍みたいだ。
 そいつを握り締めて、槍兵っぽいポーズを決めてみる。
 俺、ちょっと格好いい?

 そのまま荒野へ繰り出して、荒れ狂う風雨の中、落雷するのを待っていたんだけど。
 
 雷神様あ~! 早く、早く、このニートに、ほんとは王だけど、今だけは屑ニート(仮)に天罰を! 早よ、怒りの鉄槌を打ち下ろすのだぁ~~~~~!

 くそっ、反応がねえ! よし、こうなったら! 

 やい、くそジジイ! 早く雷落としやがれ!
 
 俺は嵐吹きすさぶ天空に向かって吠えたね!

 ピカ、ゴロゴロ、ド~~~~~ン!

 よっしゃ~~~~~! なんて叫ぶ間もなかった。
 見事に全身びりびり!
 雷光の中に俺の骨格図が浮かび上がったよ!
 俺は当初の目的を達成した充実感に酔い痴れながら、粛々と意識を失った。
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