異世界最弱のニート様 敵は異世界最強の勇者様? 俺 死亡フラグ回避するために棚ぼた勇者めざします!

風まかせ三十郎

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第10話 スライムと友達になった俺 人間終わってます?

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 これで二度目の空中落下だ!
 こんな不幸、二度も経験したやつなんて、あっちの世界にもこっちの世界にもいやしねえ!
 またあれか? 内臓全部破裂して、全身骨折して、血反吐を吐いて、死ぬに死ねない苦しみを味わなきゃならねえのか?
 前回は治癒師ヒーラーのおねえちゃんがたまたま通りかかったから助かったようなものの、そんな幸運、二度も起こらねえよ!
 落下する風圧のせいで、髪がすべて後ろに流れ、ほっぺがぷるんぷるん状態なんだけど、脱出の道は一向に見つからねえ。
 てっ、いうか、あるわけねえじゃん、そんな方法。
 異世界で空を飛ぶといゃあ、魔女の箒くらいだろう?
 でもこっちの世界で魔女飛んでるの、見たことねえや。
 ジジイ、俺、資格スキルなしなんだから、せめて落下傘パラシュートくらい寄こしやがれ!
 
 ああ、どんどん地面が近づいてくる。
 魔法少女ちゃん、妖精ちゃん、天使ちゃん、その他、羽根を持った眷族ちゃん、どうか俺をその豊満な胸で抱き留めてちょ~~~~~だい!
 
 それは当然のごとく虚しい願いだった。

 俺の脳裏に、最初に地面に激突したときの、あの痛みが蘇る。
 ド~~~~~ン! ときたよと思って、思わず目を閉じたけど、あれ、感触が違うぞ?
 
 なに? そのぷよぷよ感。
 童貞の俺が言うのもなんだけど、豊満な女性の胸に抱かれたみたいだ。
 で、状況確認のため、周りを見渡してみたんだけど。
 俺、なんと、巨大スライムの上に落下してたんだよねえ。
 なんか、直径十メーターはありそうな。
 巨大スライムがクッション代わりになって、結果的に俺を助けてくれたわけなんだけど……。

 捨てる神ありゃ、拾うスライムあり、ってか!
 なんて感動している場合じゃない!
 早く逃げねえと食われちまう!
 と思って、スライムの上から慌てて飛び降りたんだけど。
 振り返ってみると、そのスライム、単眼じゃなかったんだ。
 双眼、つまりふたつ目だったんだ。
 体色も黄色ではなく青色だったし。その線のように細い眼を見つめていると、なんか癒し効果っていうのかな、親しみすら沸いてくるんだよねえ。

 で、そいつら、俺の見ている前で細胞分裂始めたんだ。
 そして大小様々な青色スライムに変容メタモルフォーゼしたんだ。
 で、俺を見て一斉に微笑みかけてくれたんだ。
 
 こ、こいつら、合体して、俺を助けてくれたのか。
 偶然、巨大スライムの上に落ちただけかと思ったが。

 俺は一番おっきなスライムを抱き締めて、思わずこう言っちまったよ。

 ありがとう、って。

 あとで木賃宿で知り合ったオヤジにそのことを話したら、「バカこくでねえ、スライムが人助けするわけね~だろ」って言われちまったが、俺は信じるね。青色スライムの人類に対する深い愛情と友情を。

 おんや、あれは……。
 なにを聞きつけたかは知らないが、またもや地面がモコモコしてきたよ。
 
 ピー、ピー、ピー、

 なに、なに、なにが起こったの? 青色スライムがぞわぞわと騒ぎ出したよ!
 うわ、出やがった! またしても単眼(黄色)スライムの登場だ!
 あいつの巨大な単眼が俺らを見つめたまま動かねえ。
 あの、どっちを見つめているの? 俺? それとも青色スライム?
 なんか、人間様より青色スライムの方が美味しそうに見えるんだけど。
 あっ、また大口開けて笑いやがった。
 涎と粘液の混じったものを引きずりながら、こっちに近づいてくるよ!
 
 ピー! ピー! ピー!

 絹を裂く青色スライムの悲鳴!
 みんな、背を向けて逃げ出そうとするんだけど、いや、遅いのなんのって。
 黄色スライムが人間の歩行と同じ時速四キロくらいなら、青色スライムはゾウガメと同じ時速一キロくらいか。
 勝負ははなから見えている。
 
 ピー!! ピー!! ピー!!

 ああ、うるさい! わかったよ、わかりましたよ。
 俺がデコイになればいいんでしょ。
 しょうがねえ、ここはひとつ、恩返ししてやるか!

「さあ、みんな、ここは俺に任せて、早く逃げるんだ!」

 俺は両手を広げて黄色スライムの前に立ち塞がった。
 人間の言葉が通じたかどうかは定かではないが、黄色スライムのやつ、俺の男気に恐れをなして立ち止まりやがった。
 
 よし、いいぞ!

 俺には秘策があった。
 あっちの世界で熊に出会ったときの対処法マニュアルだ。
 熊に出会ったら死んだふりをするって、あれ、嘘らしいんだ。
 正解は熊とメンチの切り合いして、相手を退散させることらしいんだけど。
 あっちの世界でそれできる人って、こっちの世界では間違いなく勇者だよね?

 俺はバクバクもんの心臓を押さえ込んで、一生懸命、黄色スライムの単眼を睨み続けた。
 そしたら、あいつ、いきなりジャンプして、俺に襲いかかってきやがった。
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