異世界最弱のニート様 敵は異世界最強の勇者様? 俺 死亡フラグ回避するために棚ぼた勇者めざします!

風まかせ三十郎

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第26話 ピクニックだよ 全員集合!

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 今日は牛乳工場が保守点検につき操業停止。
 ジイサンもたまの骨休み。
 入院中の吉田さんを見舞うかたがた、街の知り合いの所へ顔を出すそうだ。

「牛の世話は任せたから。そうじゃ、みんなを引き連れて、ピクニックに行ってみたらどうじゃ?」

 で、俺も暇だったんで、牝牛ちゃんたちを引き連れてピクニックへ行くことになったんだ。

 俺はおねえさんを誘ってみることにした。
 連絡したら、ちょうど休日だったので喜んで参加するとのこと。
 ラッキ~♪
 思わず、神に感謝の祈りを捧げたよ。

 牧場に行くと、乳の張った牝牛から軽く搾乳して、それを煮沸消毒して空の牛乳ビンに詰める。
 隣では美少女形態のパトラが悪戦苦闘してなにかを作っている。
 あれ、なに?
 う~ん、悪魔への供物くもつかな?
 でもあいつが悪魔教に入信したなんて聞いたことねえし。
 あ~、あれ、食パンでなにかを挟んでる。
 なに、なに、あれ、サンドイッチ?
 いったいなにを挟んでるんだ? それって人間の食べ物?
 いや、まさか。俺を毒殺する気じゃ……。

 牧場で牝牛ちゃん一頭一頭の体調を点検する。
 そこでふと思ったんだ。
 遠出するんだから、二足歩行で歩かせた方が早いんじゃないかって。

 近くに桜子ちゃんがいたので「桜子、おいでぇ~」と手招きして呼んでみる。
 試しに両手を差し出して「お手!」と言ってみたら、なんと両前足を差し出して、俺の掌の上に載せたではないか!

 桜子ちゃん、もしかしてモフモフより頭よくね?

 モフモフの野郎、「お手!」って言ってもガン無視して、俺の言うことを聞こうとしねえから。
 どうやら犬扱いされることに不満を持っているようだ。
 犬っころのくせに!

 そのまま腰を上げて、桜子ちゃんを立たせてみる。
 おっ、立った。
 背筋をピンと張って、人間の女の子のように立ち上がった。
 ちょっと自分の目が信じられない感じ。
 桜子ちゃんはキョトンとした目で、俺を不思議そうに見つめている。

「さあ、歩いてみようか」

 前足を取ったまま前へ進ませようとすると、あっ、残念! 前足を下ろして、元の四つん這いに戻ってしまった。
 そのとき背後でパチパチと拍手が鳴った。

「さすがは天才牛飼いサモナー。牛を二足歩行で歩かせようだなんて。並の人間には思い付かねえことをする」

 おねえさんがバスケットケース片手に現われた。
 その瞬間、俺は魂を奪われたね!
 薄い色のサングラスに、白のワンピース、赤のストールを首にかけて……。
 あの魔法使いっぽい地味な服装を見慣れた目には、私服姿は太陽をじかに見たようなまぶしさに溢れていた。
 
 パトラが露骨に嫌な顔をした。
 こいつ、おねえさんの顔を見ると、とたんに不機嫌になっちまう。
 おねえさんがいるときは、決まって美少女ロリ形態で対抗意識をむき出しにする。
 こいつ、以前は”ぼく”なんて言ってたくせに、今は”わたし”なんて言ったりする。
 かえって気持ち悪りぃから、以前の”ぼく”に直すよう鉄拳指導してるんだけど。

 牝牛を囲いから放つと、俺はおねえさんと肩を並べて、群れの先頭に立って歩き出した。
 行先は二キロほど先にある草原。牝牛の大好きなマメ科の草が生えている。
 
 パトラが俺の傍らにすり寄って来やがった。
 俺は言ってやったね!

「おい、牧牛犬。おまえの定位置はあそこだ」

 俺は群れの最後方を指さした。
 あいつ、ふくれっ面して最後方へ歩いていった。

「おい、いいのか? あんなこと言って。モフモフとはいえ、人の言葉が理解できるんだから、もう少し優しくしてやれよ」
「いえ、仕事はきっちりやらせなければ……。甘やかすと、ロクなことになりませんから」
「ハハッ、まさかおまえの口から、そんな台詞が聞けるとは……。ずいぶん出世したもんだ」
「……」

 おねえさんと話すのは久しぶり。
 ここ二週間くらい顔を見せてくれなかったので、見捨てられたんじゃないかと、ちょっぴり不安だったんだ。
 俺が職場に定着したら、急に冷たくなったような気がして……。でもそれは俺の勘違いだったようだ。

 草原に到着すると、牝牛ちゃんたちは思い思いに草を食み始めた。
 今はちょうどお昼時。
 草の上にシートを広げると、おねえさんと二人、楽しい昼食の時間を満喫した。
 おねえさんのバスケットにはサンドイッチが入ってた。
 ハムサンド、卵サンド、カツサンド、それにマンゴーサンドなんてのもある。

「いや、これっすよ! 俺が食べたかったの。一流の料理に引けを取らないこの出来栄え。まさに黄金のサンドイッチと呼ぶのが相応しい! たとえこれが最後の晩餐になったとしても、我が人生に一片の悔いなしですよ」
「よせやい、恥ずかしいじゃねえか」

 おねえさんも満更でもない様子。
 我が人生最良の日!
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