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第24話 校舎大崩壊 蘇れ 美少女戦士愛輝!

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 校庭で校舎が崩壊してゆく様を、茫然と眺める桜が丘高校の生徒たち。
 既に全生徒の非難は完了し、死傷者が一人も出なかったのは幸いだが、その中に二人の姿が欠けていた。
 言うまでもなく源外と愛輝である。

「おい、まだかよ、愛輝さんは!」
 
 羽山が苛立って叫んだ。
 傍らには地面に横たえられた八戒ダーの姿があった。

「愛輝さん、まさか逃げ遅れたんじゃ……」
 
 鮎原みずえが不安げな面持ちで、崩壊してゆく校舎を見つめている。
 傍らでは早川きいろが、「みずえ、大丈夫、きっと大丈夫だから……」と鮎原の肩を抱いて慰めていた。

「くそっ、こうなったら俺たちが愛輝さんを!」
 
 先を行こうとする和也の肩を、何気に押さえた達也、

「おまえはここに残れ。救出には俺が行く」
「でも兄貴。万が一の事が起こったら、南が……」
「もう別れは告げてある。もしものことがあったら、後はおまえが……」
「いや、兄貴。やはり、ここは俺が!」
「待てぇ、どんな危険を冒そうとも、愛輝さんは必ず俺がぁ!」
「今の言葉ぁ、南が聞いたら黙っちゃいないぜ!」
 
 植杉兄弟が下心丸出しで、先を争うように愛輝救出に赴こうとする。
 その二人を呼び止めたお蝶夫人。

「……残念だけど、もう手遅れよ」
 
 驚愕の瞳で振り返る植杉兄弟。

「な、なぜ、和也が死ななきゃならないんだ」
「いや、兄貴。俺、生きてるから……」
「愛輝さんの代わりに、おまえが死ねばよかったのにぃいいいい~~~~!」
 
 肩を落として、拳を震わせる植杉兄弟。

「わぁ~、愛輝さんが、愛輝さんがぁ~!」
 
 感情がせきを切ったように溢れ出し、屈んで号泣する丘ひろみ。
 悲痛な面持ちのお蝶夫人、

「ひろみ、彼女のことはもう諦めなさい」
 
 金髪の縦ロールと肩にかけたカーディガンが風になびいて、目尻に浮かんだ一滴の涙を運び去る。
 既に校舎は全壊し、舞い上がる粉塵の中にその全容を埋没させた。
 誰もが愛輝の生還を諦めかけた、そのとき……。

 おんや、あれは?
 
 桜の枝に腰かけて、手をかざして彼方を遠望する諸星あたり。
 濛々と立ち上る粉塵の中に人影を見い出して、「あ~、あれは!」と歓喜の悲鳴を上げた。

「あなたぁ、ど~うしたの~?」
 
 虎縞のエプロンドレスの美少女が桜の枝の上に立って、同じように目を凝らした。

「あ~、あれは愛輝さんだあ!」
 
 ラムネちゃんの叫びに、お蝶夫人が、丘ひろみが、植杉達也が、植杉和也が、鮎原みずえが、早川きいろが、羽山大樹が、そして校庭に佇む多くの生徒たちが、粉塵の中から、気絶した源外を背負って、確かな足取りで歩む織美江愛輝を目撃した。

 うおおおおおおおおおお~~~~~~~~~~!
 
 校庭が、いや、町内が、歓喜の叫びで激震した。
 事情を知らぬ者は先ほどの余震がぶり返したのかと、慌ててテーブルの下に身を潜める始末。
 愛輝の周囲に幾重にも感動の輪が作られた。
 お蝶夫人が人垣の前へ進み出た。

「無事だったのね、愛輝」
「源外君のお陰です。源外君が残ってくれたから、わたくしは……」
 
 感極まって俯き加減に涙ぐむ愛輝。
 その背中でぐぅ~と腹の虫の鳴く音がした。
 意識を取り戻した源外、開口一番、

「わし~、おなかが空いて死にそうなのじゃあ~」
「なら、丁度いいときに来たな。はら、出前だ!」
 
 頭にねじり鉢巻き、白いシャツを着た、妙に顎の長い寿司職人が岡持ちを下げて立っていた。
 宝寿司の佐川松三郎だ。
 源外、愛輝の背中から飛び降りると、喜々として彼から三人前の寿司桶を受け取った。

「おそいよぉ、松さん。もう昼休みは終わりなのじゃ」
 
 周囲の視線もどこ吹く風。
 源外、ぶつぶつ愚痴をこぼしながら、四次元バックパックの中からナプキンと小皿と箸と紫と上がりと卓袱台ちゃぶだいを取り出して、食事の支度を整えた。

「よう、昼休みはまだ続いてるんじゃねえのか」
 
 羽山が腰を屈めて、源外の肩に手を回した。

「約束だぜ。俺にも食わせろよ」
 
 源外、大好物の大トロを大口に放り込もうとして、ようやく羽山の、そして周囲に蝟集いしゅうした桜が丘高校の生徒たちの、物欲しげな視線に気が付いた。
 源外、松さんを顧みて、

「追加注文じゃ。並寿司四百人前じゃ」
「四百人? ひぇ~、こいつは忙しくなりそうだ」
 
 それを聞いた愛輝、すかさず四次元バックパックの中からハリセンを取り出して、源外の頭にボカッと一撃を喰らわせた。

「痛えなぁ、なにするんじゃあ!」
「源外君。皆さんにご迷惑をおかけしたのだから、そこは並ではなく特上でしょ」
 
 源外、仕方なく注文を並から特上へ変更するはめに。
 これで今月の小遣いはスッカラカンなのじゃああああ~~~~! と涙目で叫んだ。
 自業自得とは正にこのこと。
 ひと月後、山のような請求書を前に途方に暮れた源外。パパ上に後始末をお願いしたところ、始末書を書かされた挙句、三か月間の小遣い停止を言い渡された。それは人類の進歩と災厄が三か月間停止したことを意味するが、本人も、周囲の者も、誰一人その事実に気付く者はいなかった。
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