天候を司る神様JK

オリゴ糖

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ものがたり

3話 補習と雨のち晴れ

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「...あ」
スマホを取りに教室へ戻ると人田がいた。

「お、まだ残ってたのか神野」
人田は自分の机で荷物の整理をしていた。

「...うん。ちょっとね」
なんだか気まずくて目をそらす。
「.........」
人田はきょとんとした顔をした。でもすぐ笑顔になって、
「いやー補習大変だったよ」
と言った。

「へぇ。どんなのやったの?」
人田が普通に話を続けてくれたので私もそれに乗っかる。

「昼ん時言った通りプリント1枚なんだけどさ、中身めっちゃ詰まってんの。上から下までびっしりよ。裏面もびっしりだし。どこぞのお菓子みたいだったわ」
「うわぁ。大変そうだねえ」

よくぞ聞いてくれましたと言うように人田はペラペラペラペラと大変さを語る。

「しかも内容もムズくてさぁ、化学式と分子式と構造式と電子式のところから既にごっちゃでわかんなかった」
「結構最初だねそこのところ」
「そうだっけ?」
「うん」

その○○式のくだりは4月とか5月とか...結構最初にやったところじゃなかったっけ?
そっから既に頭に入ってなかったんか。

(さすがだな。色んな意味で)

「まぁさ、その後もっとわかんないの出てきてさぁ。アボカドみたいなやつとかなんでか知らんけど2回出てきたの」
「あぁ。あれ2つそれぞれ全く意味違うから気をつけて」
「え゙っそーなん?!」
「知らなかったの...」
「えーやべえ同じ意味だと思ってたぁぁあ」
人田はわたわたと慌てている。

「__...ふふっ」
慌てている人田が可笑しくて笑ってしまった。
クスクスと笑ってしまって、てっきり人田は怒るかと思ったけど、人田は

「...あ、笑った」
と言った。

「へ?」
「いやぁさっきめっちゃ泣きそうな顔してたからさ。挙動不審だったし」
「別に挙動不審になんてなってないし」
(泣きそうな顔...してたかな)
目そらしたのとかがおかしかったかな。人田もよく人を見てるもんだなぁ。

「...なんかあったん?」
「え...?」
「この時間まで残ってるの、不思議だったからさ。なんかしてたんかと思って」
いつになく人田が優しい気がする。

(なんでこのタイミングで...。)

目の奥がジーンとして思わずうつむいた。

「......人田」
「ん?」
「...先輩にはね、彼女がいたの」

「...え。先輩って、お前の好きな_」
「全然気が付かなかった...考えてみれば、絶対いるのにね。あんなに人気なんだから」
「...神野...?」
「彼女がいる人を好きだったなんて、私最悪だよね。本当、バカみたい...。恥ずかしい。」
涙がでそうになるが必死にこらえる。

(泣いちゃダメ。人田の前で泣くもんか。我慢しろ我慢...)


「...別に神野はバカじゃないし、恥ずかしいとも思わないけど俺は」
「__え」
「だっているの知らなかったわけだしさ。なんも悪くねーじゃん?そもそもあの先輩に彼女がいるって俺も今初めて知ったし」
「......」
「えーっと、なんだ、まぁあれだ。気にすんなーってことよ。いや無理か。えーっとだな、うーんと」

なんか人田1人で慌てている

「いやあの、つまり、つまりだな。好きでいるくらい自由だろってことよ。略奪とかはダメだろーけど」

「........」

「あ、ご、ごめん長々と変なこと喋って...」

「...人田、ほんと慰めるの下手だね」
「なっ なんだよ人が苦手なこと必死でやってんのに」
「...ありがとう」
顔を上げて人田の顔を見て、ニカッと笑う。

「...!」

涙は結局こらえられなかった。目じりに溜まった涙は笑って目を細めるとポロポロとこぼれ落ち、熱い涙が頬を伝った。
空もついに泣き出して、大粒の雨が降り出した。

でも。


なんだか心がスッキリして、あんまり悲しくなかった。人田のおかげかな。


___
_____

「なんだお前ら、まだ残ってたのか」
「先生」

後ろから声がして振り向くと見回りに来た先生がドア付近に立っていた。

「もうそろそろ暗くなるし、さっさと帰れよ」

「はい」
「はーい」

そう言って先生は行ってしまった。

「神野もう帰るだろ?」
「うん帰る」


「じゃ、一緒に帰ろーぜ」
リュックを背負った人田が笑顔でそう言う。
「...うんっ」
私も荷物を持って、笑顔でうなずいた。




_____
_______
_________









「......」

(負田先輩に彼女いたんだな。)

人田は自宅でスマホを見ながら考えていた。

(そりゃわざわざ言うことじゃないだろうけど、彼女がいるなら周りの女子が気づきそうだと思うけどなぁ)


(...ん?あれ、そういえば)










(つい先日周りの女子に聞かれた時)








(『彼女はいない』って言ってなかったか?あの先輩)



(......)



(まぁ、嘘くらいつくか。人気だもんな)






「......」



「はぁーーあ...」

人田は深いため息をつく。






(___何かの手違いでもいいから)




(神野が俺のこと好きになってくれたらいいなぁ、なんて)





(贅沢な願いだな)
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