【完結】寵姫と氷の陛下の秘め事。

秋月一花

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2章:寵姫になるために

寵姫になるために 1-2

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 通された部屋に入り、「座ってください」と促されて、エルヴィスとアナベルはソファに座った。ふわふわと柔らかいソファに、アナベルは目を瞬かせた。

「ずっと座っていられそう」
「はは、気に入った?」

 アナベルがぽつりと呟くと、それを拾った男性が茶目っ気たっぷりに笑いながら尋ねてきた。アナベルが顔を上げると、「ん?」とばかりに首を傾げる。

「さて、麗しのレディにご挨拶をさせてくれるかな?」

 彼はそう言って、アナベルの近くに跪きアナベルの手を取り、手の甲に唇を近付けて「チュッ」と軽い音を立てた。そして、黒に近い灰色の髪を揺らして濃い青の瞳を細めアナベルを見上げてウインクをした。

「俺はダヴィドって言うんだ。ダヴィド・B・デュナン。よろしく。それで、エルヴィス。この綺麗なレディは?」

 挨拶を終えると手を離して立ち上がるダヴィド。エルヴィスへと顔を向ける。エルヴィスは彼の視線を受けて、グイっとアナベルの肩を抱いた。

「私の寵姫だ」

 そうアナベルを紹介したエルヴィスにダヴィドは目を大きく見開いた。そして、観察するようにアナベルを上から下までじっくりと眺める。そんなダヴィドにアナベルはにっこりと笑ってみせた。
 アナベルの反応を、ダヴィドは意外そうに「へぇ」と小さく呟いた。

「ダヴィド、そのようにジロジロ見るのは失礼だろう」
「あたしは構わないよ。慣れているもの」

 アナベルはそう言って目元を細める。踊り子としてステージに立っていた時、客と一緒に居た時、アナベルを値踏みするような視線を受けていた。だからそういう視線には慣れていた。

「……本気で、彼女を寵姫に迎える気か?」

 心配そうにアナベルを見るダヴィドに、アナベルはこの人は寵姫たちが謎の死を遂げていることを知っているのだと感じた。

「そのことで、協力して欲しいことがある」

 エルヴィスはじっとダヴィドに視線を送る。ダヴィドは「ほう?」と首を傾げ、そのまま反対側のソファに座った。

「じっくり聞かせてもらおうか」

 腰を据えて話そうと笑うダヴィドに、エルヴィスは小さくうなずく。アナベルがちらりとエルヴィスに視線を向けると、その視線に気付いたエルヴィスが「大丈夫だ」と小さく答えた。

「――ダヴィドは私の味方だ」

 エルヴィスの言葉に、アナベルは安堵したように息を吐く。そして、ダヴィドに顔を向けると彼はパチンとウインクをした。

「それで、彼女を寵姫に迎えてどうするつもりなんだ?」
「……イレインを廃妃にする」

 ダヴィドは目を瞬かせた。エルヴィスが断言したことに驚いたのだ。

「それはそれは……。壮大な計画だな」
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