70 / 122
3章:紹介の儀
紹介の儀 その後 3-1
しおりを挟むその日はとても、とても丁寧にメイドたちが接してきて、アナベルはエルヴィスの寝室からなかなか出てこなかった。
……起き上がれなかった、ということもある。
「……ねえ、少し質問しても良いかしら」
せっせと自分に対して世話をするメイドのひとりを呼び止めた。
「なんでしょうか、アナベル様」
宮殿に住まう寵姫は現在アナベルだけ。
だからこそ、アナベルはこう口にした――……。
「前の寵姫たちは、どんなことをしていたの?」
驚いたように目を丸くしたメイドは、他のメイドたちに目配せをした。
そして、ベッドにうつ伏しているアナベルの傍に向かい、ベッドの近くに座り込む。
「……どんなことを知りたいですか?」
アナベルは少し考え込んだ。それから、じっとメイドを見つめてこう尋ねた。
「彼女たちが力を入れていたことは、何かしら?」
「力を入れていた、こと……ですか。そうですね……」
メイドたちはそれぞれ考えを巡らせて、アナベルに答えた。
「着飾ること……?」
「宝石を集めていた方もいらっしゃいました」
「音楽に力を注いでいる方も……」
「……みんな、それぞれしっかりと趣味はあったのね……」
実家から冷遇されていた女性たちの楽園。アナベルは宮殿に暮らしていた寵姫のことを思う。
(――貴族の世界って、よくわからないわ……。でも、あたしはあたしらしく、やるしかないわよね)
平民であった自分だけが見つけられることもあるだろう。
そう思い、アナベルは優しく微笑む。
「ありがとう。あたし、いろんなことをがんばるね」
「……アナベル様。どうか、無理はされないでくださいませ。エルヴィス陛下の寿命が短くなってしまいますわ」
メイドの言葉に、アナベルはくすっと笑った。すると、メイドは少し怒ったように目をつり上げた。
「本当ですよ。アナベル様は、エルヴィス陛下が唯一愛した女性なのですから!」
きっぱりと言い切るメイドに、アナベルは首を傾げる。
「唯一……?」
「はい。王妃殿下との結婚は、当時の大臣たちが決めたことですから、彼らの間に『愛』はありませんでした。……それは、今も、でしょうけれど……」
困ったように眉を下げるメイドたち。アナベルはゆっくりと体を起こす。
「……前に、陛下に聞いたわ。王と王妃の関係はビジネスパートナーだって」
こくり、と年長のメイドがうなずいた。そして、アナベルの肩にケープを羽織らせると、言葉を紡ぐ。
「エルヴィス陛下のご両親が亡くなってから、城は様々な混乱に陥りました……」
悲しそうに目を伏せるメイドに、そっと彼女の手に自分の手を重ねるアナベル。
6
あなたにおすすめの小説
本当によろしいのでしょうか。(本編完結済み)*冒険者シエンの日常公開中(ファンタジー)
レイ
恋愛
ある日突然、幼なじみに、パーティ追放を命じられた。15年近く一緒に過ごしてきて、性別間違えるとか何なんっ!?いや、ほんと文句言いたいです!
とりあえず、やっと解放されました!
これで自由に…え?なれない?
ん?本当にいいのか?って?いいに決まってるじゃないですか!
え、困るって?
いや、そっちの都合とか知らんし。
パーティ追放を命じられた主人公。その主人公は実は…とんでもなくチートな高スペックだった。そんな主人公が、周りを盛大に巻き込みながら過ごしたり、幼なじみもとい、元パーティメンバーにざまぁしたり…。
最終的に、主人公が幸せになる話。
***
不定期更新です。
1ヶ月毎を目安に。
***
始めはファンタジー要素強め、後、恋愛要素強め(R入るかもしれない)。また、書き方が変わっています。ご了承を。
義妹がやらかして申し訳ありません!
荒瀬ヤヒロ
恋愛
公爵令息エリオットはある日、男爵家の義姉妹の会話を耳にする。
何かを企んでいるらしい義妹。義妹をたしなめる義姉。
何をやらかすつもりか知らないが、泳がせてみて楽しもうと考えるが、男爵家の義妹は誰も予想できなかった行動に出て―――
義妹の脅迫!義姉の土下座!そして冴え渡るタックル!
果たしてエリオットは王太子とその婚約者、そして義妹を諫めようとする男爵令嬢を守ることができるのか?
婚約者の命令により魔法で醜くなっていた私は、婚約破棄を言い渡されたので魔法を解きました
天宮有
恋愛
「貴様のような醜い者とは婚約を破棄する!」
婚約者バハムスにそんなことを言われて、侯爵令嬢の私ルーミエは唖然としていた。
婚約が決まった際に、バハムスは「お前の見た目は弱々しい。なんとかしろ」と私に言っていた。
私は独自に作成した魔法により太ることで解決したのに、その後バハムスは婚約破棄を言い渡してくる。
もう太る魔法を使い続ける必要はないと考えた私は――魔法を解くことにしていた。
【完結】回復魔法だけでも幸せになれますか?
笹乃笹世
恋愛
おケツに強い衝撃を受けて蘇った前世の記憶。
日本人だったことを思い出したワタクシは、侯爵令嬢のイルメラ・ベラルディと申します。
一応、侯爵令嬢ではあるのですが……婚約破棄され、傷物腫れ物の扱いで、静養という名目で田舎へとドナドナされて来た、ギリギリかろうじての侯爵家のご令嬢でございます……
しかし、そこで出会ったイケメン領主、エドアルド様に「例え力が弱くても構わない! 月50G支払おう!!」とまで言われたので、たった一つ使える回復魔法で、エドアルド様の疲労や騎士様方の怪我ーーそして頭皮も守ってみせましょう!
頑張りますのでお給金、よろしくお願いいたします!!
ーーこれは、回復魔法しか使えない地味顔根暗の傷物侯爵令嬢がささやかな幸せを掴むまでのお話である。
私を家から追い出した妹達は、これから後悔するようです
天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私サフィラよりも、妹エイダの方が優秀だった。
それは全て私の力によるものだけど、そのことを知っているのにエイダは姉に迷惑していると言い広めていく。
婚約者のヴァン王子はエイダの発言を信じて、私は婚約破棄を言い渡されてしまう。
その後、エイダは私の力が必要ないと思い込んでいるようで、私を家から追い出す。
これから元家族やヴァンは後悔するけど、私には関係ありません。
帰国した王子の受難
ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。
取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。
【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される
風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。
しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。
そんな時、隣国から王太子がやって来た。
王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。
すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。
アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。
そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。
アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。
そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。
【完結】愛してるなんて言うから
空原海
恋愛
「メアリー、俺はこの婚約を破棄したい」
婚約が決まって、三年が経とうかという頃に切り出された婚約破棄。
婚約の理由は、アラン様のお父様とわたしのお母様が、昔恋人同士だったから。
――なんだそれ。ふざけてんのか。
わたし達は婚約解消を前提とした婚約を、互いに了承し合った。
第1部が恋物語。
第2部は裏事情の暴露大会。親世代の愛憎確執バトル、スタートッ!
※ 一話のみ挿絵があります。サブタイトルに(※挿絵あり)と表記しております。
苦手な方、ごめんなさい。挿絵の箇所は、するーっと流してくださると幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる