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1章:旅人として
困っている人を見かけたら? ☆6☆
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十歳くらいの少女と二十歳くらいの青年のやり取りに、男性は二人をじっと見つめてから「決定事項……?」とつぶやく。
「それにしても、よく山に登ろうと思ったな? 悪鬼は怖くなかったのか?」
「そりゃあ怖いけど……でも、どんどん母がやつれていくような気がして、つい」
「聞いてよいのかわからないのですが、父君はなぜ亡くなったのでしょうか?」
男性が先頭を歩き、シュエとリーズが後ろをついていく。彼の後ろ姿を眺めながら、リーズが問いかけると一度こちらを振り返って、再び前を向いた。
「化け物に、殺されたんだ」
「……ほう?」
シュエは目を細めて、男性を見る。
当時のことを思い出しているのか、彼はブルブルと拳を震わせていた。それは恐怖なのか、別の感情なのかは読み取れない。
「どんな化け物かはわかるのか?」
「いや。ただ、喰われたようで、ぐちゃぐちゃだったと聞いた」
「聞いた? 見たわけではないのですね」
「あ、ああ」
リーズは「ふむ」と小さくつぶやいた。
視線をシュエに落とすと、彼女は興味深そうに男性の話を聞いていて、リーズの視線に気付いて「どうした?」と見上げる。
「いえ、なにも」
にこり、と追及を許さない笑みを浮かべるリーズ。彼女は肩をすくめてスタスタと歩いた。
「そなたが暮らしている場所まで、あとどれくらいじゃ?」
「一時間もすればつくよ」
男性について歩くこと一時間。
彼の言葉通りの時間で村についた。
シュエとリーズも村に入ると、村人たちがこちらをちらちらと見ていることに気付いた。見慣れない人物を連れてきた男性に、厳しい目を向ける村人たちに、シュエはにっこりと微笑んでみせる。
「初めましてじゃ、村人たちよ!」
いきなり大きな声でシュエが村人たちに声をかけたので、村人たちはぎょっとしたように彼女に視線を集中させた。
その視線を受けて、シュエは少しずつ前に出る。
男性の前に立ち、村人たちの顔をぐるりと見渡す。
「なんじゃ? この村の人々は挨拶も返してくれんのか?」
残念そうにしょんぼりと肩を落とすシュエに、村人の一人がハッとしたように顔を上げ、彼女に近付いてきた。
「い、いや、すまない。初めまして、お嬢ちゃん」
白髪の老人がシュエに声をかけてくれた。
声をかけられたことで、シュエはぱぁっと表情を明るくさせる。
それを見ていた村人たちは、彼女に近付いて「初めまして」と挨拶をしてくれた。満足げに微笑むシュエに、リーズが「まったく」と小さく言葉をこぼした。
「……すごいな。この村の人たち、よそ者嫌いなのに」
「シュエが幼く見えるからでしょうね。自分よりも幼いものを悲しませる気はなさそうなので、良かったです」
淡々と言葉を紡ぐリーズに、男性は軽く頬をかく。
――人間は脆い。それをシュエも知っている。
リーズはシュエを見つめてから、彼女の隣に立ち村人たちに挨拶をした。
ジロジロと見られて、リーズは少し眉を下げる。
若い女性がきゃあきゃあとはしゃぐ姿を見て、シュエがプッと噴き出した。
「お主はどこにいってもはしゃがれるのぅ」
「……褒め言葉として受け取っておきますよ」
「それにしても、よく山に登ろうと思ったな? 悪鬼は怖くなかったのか?」
「そりゃあ怖いけど……でも、どんどん母がやつれていくような気がして、つい」
「聞いてよいのかわからないのですが、父君はなぜ亡くなったのでしょうか?」
男性が先頭を歩き、シュエとリーズが後ろをついていく。彼の後ろ姿を眺めながら、リーズが問いかけると一度こちらを振り返って、再び前を向いた。
「化け物に、殺されたんだ」
「……ほう?」
シュエは目を細めて、男性を見る。
当時のことを思い出しているのか、彼はブルブルと拳を震わせていた。それは恐怖なのか、別の感情なのかは読み取れない。
「どんな化け物かはわかるのか?」
「いや。ただ、喰われたようで、ぐちゃぐちゃだったと聞いた」
「聞いた? 見たわけではないのですね」
「あ、ああ」
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視線をシュエに落とすと、彼女は興味深そうに男性の話を聞いていて、リーズの視線に気付いて「どうした?」と見上げる。
「いえ、なにも」
にこり、と追及を許さない笑みを浮かべるリーズ。彼女は肩をすくめてスタスタと歩いた。
「そなたが暮らしている場所まで、あとどれくらいじゃ?」
「一時間もすればつくよ」
男性について歩くこと一時間。
彼の言葉通りの時間で村についた。
シュエとリーズも村に入ると、村人たちがこちらをちらちらと見ていることに気付いた。見慣れない人物を連れてきた男性に、厳しい目を向ける村人たちに、シュエはにっこりと微笑んでみせる。
「初めましてじゃ、村人たちよ!」
いきなり大きな声でシュエが村人たちに声をかけたので、村人たちはぎょっとしたように彼女に視線を集中させた。
その視線を受けて、シュエは少しずつ前に出る。
男性の前に立ち、村人たちの顔をぐるりと見渡す。
「なんじゃ? この村の人々は挨拶も返してくれんのか?」
残念そうにしょんぼりと肩を落とすシュエに、村人の一人がハッとしたように顔を上げ、彼女に近付いてきた。
「い、いや、すまない。初めまして、お嬢ちゃん」
白髪の老人がシュエに声をかけてくれた。
声をかけられたことで、シュエはぱぁっと表情を明るくさせる。
それを見ていた村人たちは、彼女に近付いて「初めまして」と挨拶をしてくれた。満足げに微笑むシュエに、リーズが「まったく」と小さく言葉をこぼした。
「……すごいな。この村の人たち、よそ者嫌いなのに」
「シュエが幼く見えるからでしょうね。自分よりも幼いものを悲しませる気はなさそうなので、良かったです」
淡々と言葉を紡ぐリーズに、男性は軽く頬をかく。
――人間は脆い。それをシュエも知っている。
リーズはシュエを見つめてから、彼女の隣に立ち村人たちに挨拶をした。
ジロジロと見られて、リーズは少し眉を下げる。
若い女性がきゃあきゃあとはしゃぐ姿を見て、シュエがプッと噴き出した。
「お主はどこにいってもはしゃがれるのぅ」
「……褒め言葉として受け取っておきますよ」
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