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1章:旅人として
困っている人を見かけたら? ☆16☆
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話しながら歩いていたので、案外すぐに目的地にたどりついた。
リーズが玄関の扉を軽く叩くと、すぐに扉が開く。
昨日の男性と彼の母親が出迎え、口を揃えて「おはようございます」と挨拶をしてくれたので、シュエとリーズも挨拶を返した。
「昨夜は悪夢を見なかったか?」
「ええ、おかげさまで。昨日教えてもらったお粥を作ったの」
「食欲不振が治るまで、でいいからの?」
「ふふ、ええ。上がってちょうだい、一緒に食べましょう」
昨日よりは顔色がいいことに気付き、シュエはホッとしたように表情を綻ばせた。
「やった! お邪魔するぞ!」
「すみません、お邪魔します」
家の中に招かれて、嬉々として中に入ると、リーズが扉を閉める。
ふんわりと漂ってくる食欲を刺激するいい匂いに、シュエの腹の虫がぐぅと鳴いた。
どうやら男性たちはお粥と付け合わせを食べようとしていたところだったらしい。男性が立ち上がって台所まで向かう。
「同じものでいいかな?」
「うむ、お願いしよう!」
男性がシュエとリーズにお粥をよそい、昨日と同じ席に座った二人の目の前に置く。
ほかほかと湯気が立っているのを見て、シュエは嬉しそうに目元を細めた。
朝から温かいものが食べられるのは、ありがたいことなのだと旅を始めてから知ったのだ。
王宮で暮らしていると当たり前だったことが、旅を始めると当たり前ではなくなる。
朝起きて、身支度を整えてもらうとすぐに温かな朝食が部屋に運ばれ、食べることができる。だから、旅を始めてすぐに干し肉をかじったとき、なんともいえない気持ちになったのだ。
一緒に食事をしながら、今後のことについて話し合う。
「まず、鍵をつけたほうがよいじゃろうなぁ」
「とはいえ、どうやって?」
「鍵職人なんておらんのか?」
「鍵職人?」
どうやらいないようである。うーん、とシュエが首を捻る。できれば、内側から鍵かかるようにしたい。
「内側からも外側からも鍵がかかるのが一番なんじゃが……」
「そうですね。大切なことです」
ちなみに王宮のシュエの部屋に鍵はない。いや、正確にはあった、が正しい。
兄三人の馬鹿力で鍵を壊されることが多く、シュエが諦めという経緯がある。
さらにいえば『淑女の部屋なのよ!』と母がカンカンに怒っていたことを思い出し、肩をすくめた。
「呼べばきてくれるかの?」
こそっとリーズに話しかけるシュエ。リーズは「おそらく」と答えた。彼女は悩むように目を閉じ、ゆっくりと息を吐く。
「ところで、どうしてこの村では家に鍵をかけんのじゃ?」
「田舎だから……意外の理由が必要?」
「入り放題ではないかっ! この村のプライバシーはどうなっておるんじゃっ!」
「ぷ、らいばしー?」
不思議そうに目を丸くする姿を見て、シュエも目を丸くした。
「……おっと、この国にこの言葉はないのじゃな……」
口を滑らせたとばかりに手で覆い、視線をそらすシュエに、男性とその母親は顔を見合わせて不思議そうな表情を浮かべた。
「……ところで、どうして昨日、俺に声をかけてきたんだい?」
「ああ、ちぃとの、気になって。困っておるみたいじゃったから」
男性に問われてシュエは昨日のことを思い浮かべて、肩をすくめる。
「シュエは困っている人を見かけると、つい声をかけてしまうのですよ」
「あら、人助けはいいことよ。こんなに小さいうちから、えらいのね」
「ふふん」
褒められて上機嫌になったシュエに、リーズが呆れたような視線を送る。それに気付きアンガラも、彼女は話を続けた。
リーズが玄関の扉を軽く叩くと、すぐに扉が開く。
昨日の男性と彼の母親が出迎え、口を揃えて「おはようございます」と挨拶をしてくれたので、シュエとリーズも挨拶を返した。
「昨夜は悪夢を見なかったか?」
「ええ、おかげさまで。昨日教えてもらったお粥を作ったの」
「食欲不振が治るまで、でいいからの?」
「ふふ、ええ。上がってちょうだい、一緒に食べましょう」
昨日よりは顔色がいいことに気付き、シュエはホッとしたように表情を綻ばせた。
「やった! お邪魔するぞ!」
「すみません、お邪魔します」
家の中に招かれて、嬉々として中に入ると、リーズが扉を閉める。
ふんわりと漂ってくる食欲を刺激するいい匂いに、シュエの腹の虫がぐぅと鳴いた。
どうやら男性たちはお粥と付け合わせを食べようとしていたところだったらしい。男性が立ち上がって台所まで向かう。
「同じものでいいかな?」
「うむ、お願いしよう!」
男性がシュエとリーズにお粥をよそい、昨日と同じ席に座った二人の目の前に置く。
ほかほかと湯気が立っているのを見て、シュエは嬉しそうに目元を細めた。
朝から温かいものが食べられるのは、ありがたいことなのだと旅を始めてから知ったのだ。
王宮で暮らしていると当たり前だったことが、旅を始めると当たり前ではなくなる。
朝起きて、身支度を整えてもらうとすぐに温かな朝食が部屋に運ばれ、食べることができる。だから、旅を始めてすぐに干し肉をかじったとき、なんともいえない気持ちになったのだ。
一緒に食事をしながら、今後のことについて話し合う。
「まず、鍵をつけたほうがよいじゃろうなぁ」
「とはいえ、どうやって?」
「鍵職人なんておらんのか?」
「鍵職人?」
どうやらいないようである。うーん、とシュエが首を捻る。できれば、内側から鍵かかるようにしたい。
「内側からも外側からも鍵がかかるのが一番なんじゃが……」
「そうですね。大切なことです」
ちなみに王宮のシュエの部屋に鍵はない。いや、正確にはあった、が正しい。
兄三人の馬鹿力で鍵を壊されることが多く、シュエが諦めという経緯がある。
さらにいえば『淑女の部屋なのよ!』と母がカンカンに怒っていたことを思い出し、肩をすくめた。
「呼べばきてくれるかの?」
こそっとリーズに話しかけるシュエ。リーズは「おそらく」と答えた。彼女は悩むように目を閉じ、ゆっくりと息を吐く。
「ところで、どうしてこの村では家に鍵をかけんのじゃ?」
「田舎だから……意外の理由が必要?」
「入り放題ではないかっ! この村のプライバシーはどうなっておるんじゃっ!」
「ぷ、らいばしー?」
不思議そうに目を丸くする姿を見て、シュエも目を丸くした。
「……おっと、この国にこの言葉はないのじゃな……」
口を滑らせたとばかりに手で覆い、視線をそらすシュエに、男性とその母親は顔を見合わせて不思議そうな表情を浮かべた。
「……ところで、どうして昨日、俺に声をかけてきたんだい?」
「ああ、ちぃとの、気になって。困っておるみたいじゃったから」
男性に問われてシュエは昨日のことを思い浮かべて、肩をすくめる。
「シュエは困っている人を見かけると、つい声をかけてしまうのですよ」
「あら、人助けはいいことよ。こんなに小さいうちから、えらいのね」
「ふふん」
褒められて上機嫌になったシュエに、リーズが呆れたような視線を送る。それに気付きアンガラも、彼女は話を続けた。
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