竜人族の末っ子皇女の珍☆道☆中

秋月一花

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1章:旅人として

困っている人を見かけたら? ☆18☆

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 座るようにうながされたので、シュエは村長と向かい合う席に座り、その隣にリーズが座る。

 お茶の入った湯呑みを、若い女性が配る。先に村長がずっと音を立てて飲み、それからリーズが「いただきます」とつぶやいてから湯呑みを持ち上げてくちをつけ、シュエの分も一口飲んだ。

 飲んだところを丁寧にぬぐってから、彼女へ渡す。

 若い女性はきょとりとした表情を浮かべたが、シュエはそれを気にすることなく、リーズから渡された湯呑みに口をつけ、くいっとお茶を飲んだ。

「さて、村長。ちぃとわらわの話を聞いてくれんかのぅ?」
「なんでしょうか、お嬢ちゃん」
「この村の家は鍵をかけることがない、と聞いたのじゃが、本当か?」

 まずは、鍵をかける習慣がないことを確認するシュエ。

 じっと村長を見つめる彼女の瞳は真剣そのもので、村長はそんな彼女の様子を不思議に思いながらも、首を縦に動かす。

「この村の人々は家族同然の付き合い。鍵をかけるなんてこと、せんよ」
「防犯意識が低いのぅ」
「こんな誰もが顔見知りの村で、防犯してもねぇ」

 シュエの眉がぴくりと跳ねる。ちらりとリーズを横目で見ると、彼はあの芻狗すうくを取り出した。

 それを、村長に見せる。

「それは?」
「この村の祭りで使った芻狗です。これが、あるお宅のベッドの下で見つかりました」

 リーズが見つけたときのことを話すと、村長はじっくりと芻狗を眺めた。しかし、触れようとはしない。

「……なぜ、そんなものが……?」
「簡単じゃろう。芻狗をベッドの下に置けば悪夢を見る。そのことを知った誰かが、勝手に家に入りベッドの下に置いたのじゃ」
「この村には鍵をかける習慣がないので、家の中に入ることは誰にでもできますよね」

 淡々とした口調でシュエとリーズが村長に話す。

 村長は芻狗とシュエたちを交互に見て、ゆっくりと息を吐いた。

「村の誰かが、悪夢を見せたいほどその人を憎んでいる、と?」
「憎んでいるかは知らぬ。しかし、放っておくわけにもいかんじゃろ?」
「ううむ……」

 村長はシュエの話を聞いて、悩むように唸る。

「村はずれの親子の家。夫がぐちゃぐちゃになって発見されたようじゃな?」

 びくり、と村長の肩が大きく跳ねた。

 なぜそのことを、と顔に書いてある。

 シュエはすっと目元を細め、扇子を取り出すとパッと開き口元を隠した。

「人の悪意をそのままにしておくと、取り返しのつかないことが起こるぞ。……いや、もう起こったじゃろう?」
「悪意、だったのでしょうか」

 村長がぐっと拳を握って、弱々しく言葉をこぼす。

 リーズがお茶を一口飲み、シュエに視線を向けると彼女は呆れたような表情を浮かべていた。
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