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1章:旅人として
困っている人を見かけたら? ☆19☆
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「悪意以外に、なにがあるというんじゃ?」
「……恋慕、ではないでしょうか」
口をはさんだのは、若い女性だった。
彼女に視線を移すと、持っていた茶菓子をテーブルに置いてから、ハッとしたように口元を手で隠す。
リーズは置かれた茶菓子を一つ手に取り、小さくちぎって一口食べてからシュエに渡す。彼女はそれを受け取り、ぱくりと一口齧りついた。
干し柿の甘さを堪能し、お茶のを飲んで口の中をさっぱりさせると、女性を横目で見る。
「恋慕も過ぎればおそろしいものへと変わるからのぅ」
「そうですね」
とはいえ、さほど恋情のもつれを見たことはないのだが。恋情よりも食い気に走っているあいだに、王宮でもいろいろなことがあったと記憶しているシュエは、村長と若い女性を見てにっこりと微笑む。
「とりあえず、鍵をかける習慣が必要じゃ。その恋慕とやらで、人が亡くなっているのだから」
「確定ですか?」
リーズに問われ、シュエは顎を引いた。
「うむ。そう視える。村を守るのが、長の努めじゃろう?」
「……しかし、鍵をかけるといっても、どうやって?」
「わらわの知人に頼もうかと思うておる。この村の家なら、さくさくと終わらせてくれるじゃろうからのぅ」
「……わかりました、そうしましょう」
村長の言葉に、シュエはとびきりの笑顔を浮かべる。
意識を変えることは難しいだろう。こんな田舎の村では。
しかし、それではダメだと村長が態度を改めるのなら、少しずつ改善されていくだろう。
「では、わらわは知人を呼ばせてもらおう」
「お茶とお茶菓子、ごちそうさまでした」
リーズとともに村長の家から出て、人気のない場所へ歩き出す。人々はまだ畑仕事をしているようで、せっせと働いていた。
辺りに人の気配がないことを確認してから、シュエは両手の親指と人差し指で丸を作る。
ぽわりと淡い光が輪の中心から拡がり、手鏡が飛び出た。それを上手に掴み、こほん、と咳払いをしてから手鏡に声をかけた。
「ルーラン、聞こえるか?」
手鏡の表面がゆらりと揺れ、ぽわっと淡く光ったと思えば、手鏡の中にシュエではなく、大人の女性が映った。
深紅の長い髪を一つにまとめ、鳶色の瞳でこちらを見ると、ぱぁっと明るい笑顔を浮かべる。
『まぁまぁ、姫さまっ! 旅立ったとお聞きしておりましたが、お元気そうでなによりですわっ! あら、隣にいるのは浩然ではなくて? お二人はいつも一緒なのですね、微笑ましいですわぁ』
「う、うむ。ルーランも元気そうじゃな……」
『ええ、とっても元気ですわ。身体は。心は姫さまに会えなくて寂しく思っておりましたのよ? 旅立つのなら、挨拶くらいしてくれてもよろしかったのに! あ、わたくしをその名で呼ぶということは、なにか困りごとがありまして?』
「相変わらずの早口……いや、そなたに頼みたいことがあってのぅ。とある小さな村の家に、鍵をつけてほしいのじゃ」
ルーランはぱちくりと鳶色の瞳を瞬かせ、小首を傾げる。
さらりと彼女の長い髪が、傾けたほうに流れた。
「……恋慕、ではないでしょうか」
口をはさんだのは、若い女性だった。
彼女に視線を移すと、持っていた茶菓子をテーブルに置いてから、ハッとしたように口元を手で隠す。
リーズは置かれた茶菓子を一つ手に取り、小さくちぎって一口食べてからシュエに渡す。彼女はそれを受け取り、ぱくりと一口齧りついた。
干し柿の甘さを堪能し、お茶のを飲んで口の中をさっぱりさせると、女性を横目で見る。
「恋慕も過ぎればおそろしいものへと変わるからのぅ」
「そうですね」
とはいえ、さほど恋情のもつれを見たことはないのだが。恋情よりも食い気に走っているあいだに、王宮でもいろいろなことがあったと記憶しているシュエは、村長と若い女性を見てにっこりと微笑む。
「とりあえず、鍵をかける習慣が必要じゃ。その恋慕とやらで、人が亡くなっているのだから」
「確定ですか?」
リーズに問われ、シュエは顎を引いた。
「うむ。そう視える。村を守るのが、長の努めじゃろう?」
「……しかし、鍵をかけるといっても、どうやって?」
「わらわの知人に頼もうかと思うておる。この村の家なら、さくさくと終わらせてくれるじゃろうからのぅ」
「……わかりました、そうしましょう」
村長の言葉に、シュエはとびきりの笑顔を浮かべる。
意識を変えることは難しいだろう。こんな田舎の村では。
しかし、それではダメだと村長が態度を改めるのなら、少しずつ改善されていくだろう。
「では、わらわは知人を呼ばせてもらおう」
「お茶とお茶菓子、ごちそうさまでした」
リーズとともに村長の家から出て、人気のない場所へ歩き出す。人々はまだ畑仕事をしているようで、せっせと働いていた。
辺りに人の気配がないことを確認してから、シュエは両手の親指と人差し指で丸を作る。
ぽわりと淡い光が輪の中心から拡がり、手鏡が飛び出た。それを上手に掴み、こほん、と咳払いをしてから手鏡に声をかけた。
「ルーラン、聞こえるか?」
手鏡の表面がゆらりと揺れ、ぽわっと淡く光ったと思えば、手鏡の中にシュエではなく、大人の女性が映った。
深紅の長い髪を一つにまとめ、鳶色の瞳でこちらを見ると、ぱぁっと明るい笑顔を浮かべる。
『まぁまぁ、姫さまっ! 旅立ったとお聞きしておりましたが、お元気そうでなによりですわっ! あら、隣にいるのは浩然ではなくて? お二人はいつも一緒なのですね、微笑ましいですわぁ』
「う、うむ。ルーランも元気そうじゃな……」
『ええ、とっても元気ですわ。身体は。心は姫さまに会えなくて寂しく思っておりましたのよ? 旅立つのなら、挨拶くらいしてくれてもよろしかったのに! あ、わたくしをその名で呼ぶということは、なにか困りごとがありまして?』
「相変わらずの早口……いや、そなたに頼みたいことがあってのぅ。とある小さな村の家に、鍵をつけてほしいのじゃ」
ルーランはぱちくりと鳶色の瞳を瞬かせ、小首を傾げる。
さらりと彼女の長い髪が、傾けたほうに流れた。
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