竜人族の末っ子皇女の珍☆道☆中

秋月一花

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1章:旅人として

困っている人を見かけたら? ☆20☆

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『鍵をつけてほしい? 家に鍵がついていないのですか? 防犯意識大丈夫ですか、その村。それとも、とても閉鎖的な村なのでしょうか? それならまぁ、わかるのですけれど』
「来てもらったらわかる。頼めるかの?」
『姫さまの頼み事でしたら、すぐに伺いますわ! そこで待っていてくださいませ!』

 目をキラキラと輝かせるルーランに、シュエは「う、うむ」と少々たじろぎながらこくりと首を動かす。

 ふっと手鏡からルーランの姿が消えた。

「相変わらずの人ですね」
「まぁ、元気そうでなによりじゃ」

 旅立ってからまだ二週間も経っていない。

 それなのに、あんなふうに自分のことを考えてくれていたのか、となんだか心がほわほわと温かくなる。

 それからルーランがくるまで、十分もかからなかった。

「お待たせいたしました、姫さま。王宮の万屋ルーラン、ただいま参上いたしました」

 シュエに対して頭を下げるルーランに、シュエはふっと笑みを浮かべて手を伸ばす。

 彼女の服をきゅっと握り、声をかけた。

「すまんな、いきなり呼び出して」
「いいえ。姫さまの頼みでしたら、いつでも時間を作りますわ」

 自身の胸元に手を当てるルーランに、シュエはふふっと笑い声を上げてから、口を開く。

「この世界でのわらわの名は『シュエ』じゃ。村ではそのように頼む」
「私はリーズと名乗っています」
「シュエとリーズ、ですわね。……ふふっ、リーズとはなかなか可愛い名にしたのですね」

 リーズはルーランから視線をそらす。

 ちなみに今回の旅の偽名をつけたのは、シュエだ。

 彼女は「そうじゃろ?」と胸を張った。

「それで、どこの家に鍵をつければいいのですか?」
「まずは村長の家じゃ。村の長がつけたら村人の意識も変わるじゃろう……たぶん」

 少し不安そうに眉を下げるシュエに、リーズとルーランは視線をわして彼女の肩にぽんと手を置いた。

「とりあえず、やってみましょう」
「そうですわよ。結果はあとからわかるものですから」
「……そうじゃの」

 ルーランを連れて村長の家に戻る。

 シュエを挟んで歩いているからか、ルーランが美女だからか、村人たちから視線を集めていた。

 三十代前半くらいに見えるルーランだが、竜人族の年齢ではとうに四百歳を超えている。

 このことを話題にすると、ルーランの機嫌が一気に下がるので、翠竜すいりゅう国ではその話題は禁忌タブーだ。

 彼女は王宮の万屋として雇われ、いろいろなことに関わっている。王族とも仲が良く、リーズも彼女のことをよく知っていた。

「そういえば、シュエが旅立ったと聞いて、母が心配しておりましたわ」
「叔母様が? まぁ、急に決まったことじゃからのぅ」

 ――そう、シュエの父の妹が、ルーランの母なのだ。

 彼女は竜人族のしきたりで旅立ってから、いろいろなところにいき、さまざまな見聞を広め、よそに嫁ぐのではなく王宮では働きたいと話したらしい。

 ルーランが持ち込んだ外の世界のものは、翠竜国にとってとても衝撃をもたらし、今では平民たちも愛用しているものも多い。

 もっとも、持ち込んだものは改良され、竜人族の力でも壊れない程度の強度にされている。
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