竜人族の末っ子皇女の珍☆道☆中

秋月一花

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1章:旅人として

海の近くの街で ☆4☆

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「おいおい、うちは網焼きの店だぞ?」

 と肩をすくめながらも、求められたらにんじんを差し出す店主。

「おお、本当に美味しいな、このにんじん」
「切り方で食感ってこんなに変わるのね」
「あ、ついでに帆立もください」
「こっちも!」

 ……いつの間にか賑わってきた。

 店主はシュエとリーズのハマグリの様子を見てから紙皿に乗せ、二人分の箸を乗せる。

 リーズが代金を支払い、行列のできた場所から抜け出して人気のない場所を探し、そちらへ移動することにした。

「お嬢ちゃんっ、ありがとうなー!」
「どういたしましてじゃー!」

 店主が叫んで伝えてきた言葉に、シュエも大きな声を返す。

 人波に推されるように歩き、なんとか人気のない場所に辿りついた。

「シュエが食べる姿は、他の人にどう見えているんでしょうね?」
「うん? リーズ、早く早く。熱々のうちに食せねばっ」

 当の本人はまったく気にしていないようである。

 以前の牛串のことを思い出し、リーズは行列のできた貝の網焼き屋に視線を向けてから、シュエに合わせるように屈み込み、箸を渡す。

「熱いので気をつけてくださいね」
「うむ!」

 割り箸を横に持ち、ぱきんと音を鳴らして割り、熱々の蛤の身を掴んだ。

 ふーふーと何度か息を吹きかけてから、一口かじる。

 まず感じるのはバター醤油の香ばしい風味。噛んでいくうちに蛤の味が口内に広がり、シュエは蛤を噛み締めた。

 ごくり、と飲み込んでからぐっと拳を握る。

「なんと絶妙な火の通し! 焼きすぎることなくちょうどいい。この弾力がなんともいえんのぅ! 絶品じゃ!」
「空腹も相まって、味覚が鋭くなっているのかもしれませんね」

 リーズも蛤を一口食べ、先程の店主の腕前を認めたようだった。

 空腹で味覚が研ぎ澄まされたシュエの言葉にうなずきながら、蛤を食べ進める。

「蛤にはベータ・カロチンやビタミンCが含まれておらんからの、まさかの緑黄色野菜であるにんじんの登場にびっくりしたのぅ」
「店主は知っていて出したのか、気になりますねぇ」

 翠竜すいりゅう国では当たり前に使われている言葉を口にしながらも、周りに意識を巡らせているシュエ。

 熱々のうちに大きな蛤を食べて上機嫌な彼女の様子を確かめてから、ルーランの姿を探すリーズ。

 ふと、こちらに向けて大きく手を振っている女性が視え、目を細めて注視する。

「どうやら、ルーランが私たちに気付いたようです」

 屈んでいた姿勢から立ち上がり、ルーランの姿をしっかりと視界に入れてから、リーズはシュエに声をかける。

「ルーラン! こっちじゃ!」
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