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1章:旅人として
海の近くの街で ☆13☆
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「リーズ? どうした?」
「いえ、ずいぶん広いなと思いまして。海はもう良いのですか?」
後ろから声をかけられて、リーズはゆっくりと振り返り、シュエと視線を合わせるようにしゃがみ込んだ。
「うむ。どれどれ、わらわも部屋の探索じゃ!」
にっと白い歯を見せて笑うシュエは、リーズから離れてそれぞれの場所を確認し始める。風呂場を見ると、「ほほう」と思わず感心したような声が出た。リーズが足を伸ばしても余裕がありそうな浴槽を、この旅を始めてから大浴場以外で初めて見た。
「大浴場はあったかの?」
「ありましたよ。ですが、おそらくこの宿では個室のお風呂にこだわっているのかもしれません」
シュエについてきたリーズが、唇の近くで人差し指を立てる。
彼を見上げて不思議そうな表情を浮かべながらも、少しのあいだ黙っていると、ザーザーザーザー、と穏やかな波の音が聞こえた。
そして、この波音を楽しむには、個室のほうが合っている気がする。
人が多い大浴場では波音を楽しむよりも先に、人の声が聞こえるだろう。
「……贅沢じゃの。波音を楽しめるお風呂とは」
「ええ。波音はリラックス効果がありますし、お風呂で聞くことでさらに疲れが癒されそうですね」
「うむ!」
シュエとリーズがそんな会話をしていたら、軽く扉を叩く音が耳に届いた。
どうやら、お湯を持ってきてくれたらしい。
リーズが部屋の扉まで移動し、扉を開けて従業員からお湯を受け取る。「ごゆっくりお過ごしください」と微笑む従業員は小さく頭を下げてから去っていった。
扉を閉めてテーブルの上に置き、シュエに声をかける。
「姫さま、今日はどのお茶を飲みますか?」
「緑牡丹茶はあるか? 今の気分にぴったりじゃ」
「用意しますね」
リーズは以前シュエがやったように、右手と左手の親指と人差し指を合わせた。
ぽぅ、と淡く白い光が現れ、輪を解いて光の中に手を入れる。
目的のものを取り出すと、「少々お待ちください」と柔らかく口角を上げてから、小さなキッチンへ向かった。
耐熱ガラスの茶器に一つを入れ、先に少量の湯で洗いその湯を捨てる。
そのまま二分ほど待ってから改めてお湯を注ぐ。ガラスの茶器を持ち、シュエの元に戻った。
リーズはガラスの茶器を少し揺らし、ことりとテーブルの上に置いた。ゆっくりと重なっている花びらが咲いていくように開いていく。
シュエは椅子に座り、その様子を眺めていた。
花咲くように綻ぶこのお茶を見るのが、シュエは好きだ。
蒸らす時間を長くしてもあまり濃く出ないので、いくらでも飲めそうだとシュエは思う。
三分ほど待ち、リーズが耐熱ガラスの湯呑みにとくとくと注ぎ、シュエの前に差し出す。
「いえ、ずいぶん広いなと思いまして。海はもう良いのですか?」
後ろから声をかけられて、リーズはゆっくりと振り返り、シュエと視線を合わせるようにしゃがみ込んだ。
「うむ。どれどれ、わらわも部屋の探索じゃ!」
にっと白い歯を見せて笑うシュエは、リーズから離れてそれぞれの場所を確認し始める。風呂場を見ると、「ほほう」と思わず感心したような声が出た。リーズが足を伸ばしても余裕がありそうな浴槽を、この旅を始めてから大浴場以外で初めて見た。
「大浴場はあったかの?」
「ありましたよ。ですが、おそらくこの宿では個室のお風呂にこだわっているのかもしれません」
シュエについてきたリーズが、唇の近くで人差し指を立てる。
彼を見上げて不思議そうな表情を浮かべながらも、少しのあいだ黙っていると、ザーザーザーザー、と穏やかな波の音が聞こえた。
そして、この波音を楽しむには、個室のほうが合っている気がする。
人が多い大浴場では波音を楽しむよりも先に、人の声が聞こえるだろう。
「……贅沢じゃの。波音を楽しめるお風呂とは」
「ええ。波音はリラックス効果がありますし、お風呂で聞くことでさらに疲れが癒されそうですね」
「うむ!」
シュエとリーズがそんな会話をしていたら、軽く扉を叩く音が耳に届いた。
どうやら、お湯を持ってきてくれたらしい。
リーズが部屋の扉まで移動し、扉を開けて従業員からお湯を受け取る。「ごゆっくりお過ごしください」と微笑む従業員は小さく頭を下げてから去っていった。
扉を閉めてテーブルの上に置き、シュエに声をかける。
「姫さま、今日はどのお茶を飲みますか?」
「緑牡丹茶はあるか? 今の気分にぴったりじゃ」
「用意しますね」
リーズは以前シュエがやったように、右手と左手の親指と人差し指を合わせた。
ぽぅ、と淡く白い光が現れ、輪を解いて光の中に手を入れる。
目的のものを取り出すと、「少々お待ちください」と柔らかく口角を上げてから、小さなキッチンへ向かった。
耐熱ガラスの茶器に一つを入れ、先に少量の湯で洗いその湯を捨てる。
そのまま二分ほど待ってから改めてお湯を注ぐ。ガラスの茶器を持ち、シュエの元に戻った。
リーズはガラスの茶器を少し揺らし、ことりとテーブルの上に置いた。ゆっくりと重なっている花びらが咲いていくように開いていく。
シュエは椅子に座り、その様子を眺めていた。
花咲くように綻ぶこのお茶を見るのが、シュエは好きだ。
蒸らす時間を長くしてもあまり濃く出ないので、いくらでも飲めそうだとシュエは思う。
三分ほど待ち、リーズが耐熱ガラスの湯呑みにとくとくと注ぎ、シュエの前に差し出す。
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