竜人族の末っ子皇女の珍☆道☆中

秋月一花

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1章:旅人として

海の近くの街で ☆16☆

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「……それと、もう一つ。もしもこの国を離れるのでしたら、海を渡ることになるでしょう。現在海に生息している魔物が大暴れしているようですので、お気をつけください」
「ふむ、海に生息している魔物とな? 畢方ひっぽう窫窳あつゆとは別物なのか?」
「西洋の魔物ですか?」

 シュエとリーズから質問されて、宇航ユーハンは「はい」と答えてから別の紙を取り出して広げてみせる。

「……ああ、クラーケンですか」
「なんじゃそれ?」

 シュエが知っているほとんどの悪鬼あっきとは違うらしい。

「大きなタコやイカですよ」
「……その説明で大丈夫なのか?」

 思わずというように、リーズに声をかける宇航。

「タコ! イカ! 食えるのか!?」
「そっちですか!?」

 なにを当然のことをとばかりに宇航に視線を注ぐシュエに、彼は自身が仕える第一皇子のことを思い出した。

欣怡シン・イーは食に興味があるからな、美味しいものを与えれば上機嫌になるんだ』

 ――と、話していたことを。

 まさか魔物を食べるつもりなのか……と目を丸くしていると、リーズが「無理でしょう」と頭を左右に振った。

「ええ、食えんのか……」
「悪鬼を倒したら、黒いもやになって消えるでしょう。おそらく、この世界の悪鬼や魔物はそういう仕様になっているのだと思います」
「むぅ、確かにの。ちぃと興味があったんじゃがなぁ、残念じゃ」

 宇航はシュエの言葉に目を丸くしていた。その様子を見て、リーズが肩をすくめる。

 第一皇子に仕えているといっても、こうしてシュエと話すことは滅多になかったであろう彼に、リーズは言葉を掛けた。

「クラーケンを倒してしまっても?」
「倒す気か? 巨大だぞ?」
「姫さまに危険が及ばないのが一番ですから」

 そして宇航は思う。

 王宮内では第一皇女を大切にしていると耳にしたことはあったが、これほどまでとは、と。

「倒すんじゃったら、わらわも戦うぞ。翠竜剣で斬れるじゃろう」

 シュエが剣を振る仕草をすると、宇航はさらに驚いたように目を見開いた。

 王宮の一角から滅多に出てこない、家族に溺愛されている末っ子皇女が自ら戦うつもりなのか、と。

「この世界の魔物くらいなら、朝飯前でしょうね」
「思っていた以上に弱いからのぅ……」

 シュエとリーズの会話に戸惑いを隠せない宇航に対し、彼女たちはこれからの旅のことを話し合う。

 国を越えるかどうかはまだ保留のままだ。

「浩然はともかく、姫さまも戦うのですか?」
「うむ、剣術の使い方は学んだからの。実戦はこの世界にきてからじゃが、なかなかに戦えておるぞ?」

 のぅ、リーズ? とシュエはリーズを見上げて問う。

 彼は小さくうなずいた。宇航はますます頭が混乱してきたのか、後頭部に手を置いて数回目を瞬かせていた。

「それはまた……意外、ですね」
「そうか?」
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